10月に全店閉店 かつての大手ファミレス「CASA」はなぜ消えたのか?

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10月に全店閉店 かつての大手ファミレス「CASA」はなぜ消えたのか?

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若杉優貴

都市商業研究所

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大手ファミリーレストランとしてかつて一世を風靡した「CASA」が10月、その歴史に幕を下ろしました。いったいなぜでしょうか。都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。

2021年10月に消滅

 首都圏中心の大手ファミリーレストラン(以下、ファミレス)として親しまれた「CASA(カーサ)」が2021年10月、その歴史に幕を下ろしました。

大手ファミレスとして知られた「CASA」(画像:淡川雄太)



 かつては西武百貨店、パルコ、無印良品などとともに西武セゾングループの中核を担う業態として、店舗網を北海道から九州にまで築いていたCASAでしたが、ここ数年は店舗数を大きく減らしていました。そのため「むしろまだあったの?」「一度も店舗を見たことがない」という人も少なくないかもしれません。

 今回は一世を風靡(ふうび)したファミレス「CASA」の歴史をたどりつつ、なぜ

・急速に減ったのか
・突然消えたのか

を探ります。

「西武セゾングループ」の勢いに乗って成長

 CASAが誕生したのは1978(昭和53)年8月のこと。当時経営状態が芳しくなかった西武セゾングループの飲食店運営企業「レストラン西武」が、流行しつつあったファミレスを運営するために開発した新業態でした。

 CASAは1号店を出店した1978年のうちに「3年以内100店舗」という高い出店目標を掲げて出店攻勢を開始。レストラン西武はこのCASA業態が軌道に乗ったことで、経営の立て直しに成功します。ちなみにCASAはスペイン語で「家」を意味します。

 当時のメニューは競合他社と比較しても特徴がある訳ではありませんでした。

 しかし、西武セゾングループの文化戦略に乗っ取って店内で料理教室を開催するなど、他社との差別化に挑戦。当時絶大な人気を集めていた西武百貨店、パルコなどの西武セゾングループの商業施設に出店したり、多くの路面店でランドマークとなる「シンボルツリー」を植えたりするなどして、知名度を高めていきました。

セゾングループ当時から営業していたCASA。右端には「シンボルツリー」の姿も見える(画像:淡川雄太)

「今は閉店してしまった西武百貨店に行っとき、家族で食事をしたのがCASAだった」という思い出がある人もいるのではないでしょうか。

一時期は全国200店舗以上に

 1989(平成元)年に運営企業の社名が「西洋フードシステムズ」と変わったころには、CASAは「首都圏の大手ファミレス」として認知される存在に。

 その後も1991年に九州最大手の総合流通企業だった「寿屋」(2002年廃業)のファミレス部門「グルッペ」を買収するなどして、展開地域を拡大。90年代には北海道から九州まで200店舗以上を数えるほどにまで成長を遂げました。

西武百貨店大津店(2020年閉店)に出店していたCASA。かつてはセゾングループのさまざまな店舗でも見られた(画像:淡川雄太)



 西洋フードシステムではCASAの成功をバネにして「京らーめん糸ぐるま」など別業態の開発・出店も進めたため、西武グループの商業施設内に入る店舗の多くがCASAをはじめとしたグループ店舗という店も生まれるようになりました。

「店舗数激減」のキッカケとは

 順調に経営規模を拡大しているように見えたCASAでしたが、ファミレス業界の競争が激化するなか、バブル崩壊後には西武セゾングループの経営不振の影響も大きく受けることとなります。

 グループのうち西武百貨店傘下の不動産業で多くのリゾート開発を手掛けていた西洋環境開発は特に負債が大きく、同社は2001(平成13)年に特別清算。その結果、西武セゾングループは解体されるに至ります。

西武百貨店はセゾングループ解体後「セブン&アイ・ホールディングス」傘下に。百貨店自体も店舗網を大きく縮小することとなった(画像:淡川雄太)

 当時CASAを運営していた西洋フードシステムズは、2000年のそごう・西武百貨店経営統合により、旧そごうグループのそごう商事からとんかつ専門店「双葉亭」、和食店「四季」などを取得することで経営規模を拡大。

 並行してライバル・すかいらーくグループのガストやバーミヤンに似た格安業態を開発するなど、業態の多角化も進めていたものの、西武セゾングループ解体によるリストラは避けられませんでした。

 そして、2001年にCASAの半分以上の店舗を同業の大手ファミレス・ココスに売却。また、西洋フードシステムズ自体も2002年1月に西武系列を離れて英国の飲食大手・コンパスグループの傘下に入ることとなり、西洋フード・コンパスグループと改名されました。

運営主体が分裂 そして……

 西武セゾングループ解体によって店舗数が大幅に減ったCASAですが、さらにCASA運営企業の分裂が起こります。

 西洋フード・コンパスグループは2007(平成19)年に店舗網を百貨店内のインストア型店舗・オフィス・工場などの食堂運営受託・宿泊施設内・高速道路SAPA内などのみに縮小することを決定。

 CASAをはじめ京らーめん糸ぐるまなどレストラン事業の大部分(約120店舗)を西洋レストランシステムズに分社化した上で、モルガン・スタンレー証券とオフィス井上に売却。これらの店舗は2010年代初頭には居酒屋「柚柚-yuyu-」「いろどり庵」「北六」等を展開する個室居酒屋チェーン大手・川中商事(現・アンドモワ)へ再売却されたため、多くのCASAは同社傘下の運営に変わりました。

 一方、西洋フード・コンパスグループも一部を除く百貨店内のインストア型CASAを「CASA Grande」として運営し続けたため、CASAは

・アンドモワ傘下の路面店と一部のショッピングセンターインストア型店舗(CASA)
・西洋フード・コンパスグループ傘下の百貨店をはじめとした多くのインストア型店舗(CASA Grande)

に分裂することになりました。

 しかし、西洋フード・コンパスグループ運営のインストア型店舗・CASA Grandeはその多くが百貨店・総合スーパー内にあったため、それらの業態不振の影響もあって不採算になっていたといい、さらなる事業再編によって2019年までに全て閉店してしまいます。

アンドモワ運営となったCASA。旧・寿屋グルッペ(画像:淡川雄太)



 同社傘下となって以降、創業年の1978年をロゴに記載するなど老舗であることをアピールする店づくりが見られるようになりました。

 これにより、残るCASAはアンドモワ傘下の路面店と一部のショッピングセンターインストア型店舗のみとなりました。

幕切れは突然に……

 百貨店内などにあった店舗の閉店後、辛くもアンドモワが運営する店舗のみ残ることとなったCASA。残る店は1ケタにまで減ったものの、大手企業傘下で安泰……と思いきや、そうはいきませんでした。

 居酒屋をメイン業態としていたアンドモワは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2021年10月に経営破綻。近く自己破産を申請する予定だとしており、同社の運営する居酒屋・ファミレス・軽食店など約350店舗は全て閉店することとなりました。

 こうして、CASAは同系列だった京らーめん糸ぐるまなどとともに前触れもなく突然の全店閉店に至ってしまったのです。

旧セゾングループのショッピングセンターに出店していた「CASA」と「糸ぐるま」の店舗跡。11月現在も空き店舗のままとなっている(画像:ゆーりんちー)



 西武セゾングループの成長とともに店舗網を増やしたものの、

・バブル崩壊
・流通業再編

の荒波にもまれるかたちで常に時代に翻弄(ほんろう)され続けたCASA。閉店した店舗の行く末は11月時点でまだ決まっていないといいます。

 大手ファミレスとして高い知名度を誇ったCASAだけに、再び別の企業にブランドが引き継がれ復活することもあるかも知れません。あまりにあっけない幕切れによってこのまま40年以上の歴史に幕を下ろしてしまうのでしょうか。

●参考文献
日経流通新聞、日経MJ

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