1988年オープンの「東京ドーム」 最初にコンサートを行ったのは誰? 巷の諸説を覆す

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1988年オープンの「東京ドーム」 最初にコンサートを行ったのは誰? 巷の諸説を覆す

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橘真一

ライター、ノスタルジー探求者

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1988年3月にオープンした東京ドーム。そこで最初にコンサートを行ったアーティストが誰なのか、皆さんはご存じでしょうか。ライターの橘真一さんが解説します。

国内コンサート事情を変えた東京ドーム

 日本にドーム球場がなかった時代、野球場でのコンサートは盛んではありませんでした。そこには、

・天候面のリスク
・騒音問題
・冬季は観客が低温にさらされる可能性

など、さまざまな理由がありました。

東京ドーム(画像:写真AC)



 東京ドーム(文京区後楽)の前身ともいえる後楽園球場は、交通の面から集客しやすい環境にありましたが、約50年の稼働期間中(1937~1987年)に単独コンサートを行ったアーティストは下記のわずか17組にとどまり、真冬の開催は1例もありません。

1.ザ・タイガース(1968年8月)
2.グランド・ファンク・レイルロード(1971年7月)
3.エマーソン・レイク・アンド・パーマー(1972年7月)
4.キャンディーズ(1978年4月)
5.西城秀樹(1978年、1979年、1980年、1981年)
6.ピンクレディー(1978年7月、1981年3月)
7.矢沢永吉(1978年8月)
8.たのきんトリオ(1981年8月)
9.アリス(1981年8月、11月)
10.サイモン&ガーファンクル (1982年5月)
11.リチャード・クレイダーマン(1983年5月)
12.スティービー・ワンダー(1985年11月)
13.デュラン・デュラン(1987年3月)
14.ライオネル・リッチー(1987年5月)
15.マドンナ(1987年6月)
16.ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(1987年7月)
17.マイケル・ジャクソン(1987年9月)

「17」というのは、1988(昭和63)年3月17日に東京ドームがオープンしてから、同会場で1年間にコンサートを行ったアーティストの数より少ない数字です。

 このことから、日本初のドーム球場である東京ドームの誕生は

「国内のコンサート事情を大きく変える出来事」

だったといえます。

 では、そこで最初に単独コンサートを行ったアーティストは、誰、もしくは、どのグループだったのでしょうか?

美空ひばりの前週は、伝説バンドの「LAST GIGS」

 まれに、

「東京ドームで初めてコンサートを行ったのは美空ひばりである」

という情報がみられますが、これは正しくはありません。

 確かに美空ひばりは、オープンから約1か月後の1988年4月11日に東京ドーム公演を行っており、そこには「東京ドームこけら落とし公演」と称されました。しかし実際は、ドームで開催された初のコンサートではなかったのです。

 美空ひばりの前週、4月4日~5日にはBOOWYの解散ライブ「LAST GIGS」が開催されています。

2021年9月発売のBOOWY「”LAST GIGS” COMPLETE」のBlu-Ray(画像:ユニバーサルミュージック)



 さらにその前週の3月28日には、前年に日本武道館(千代田区北の丸公園)で10日間連続公演を行うなど、当時圧倒的な観客動員力を誇っていたHOUND DOGが「日本のアーティスト初」となる単独コンサートを開いています。

 日本のアーティスト初としたのは、それ以前(3月22~23日)に、海外の超大物アーティストがドームの舞台に立っていたからです。

初の単独はロック界超大物の初来日公演

 HOUND DOGの前に──つまり「東京ドームで最初に単独コンサートを行ったアーティスト」とは? それは、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーでした。

 ローリング・ストーンズのメンバーは、長らく来日が不可能だと思われていました。なぜなら、1973(昭和48)年に初来日公演が発表されたものの、メンバーの過去の大麻所持を問題視した外務省が日本入国を許さず、中止になった経緯があったからです。

 しかし、時の流れとともにさまざまな状況が変わり、まずミック・ジャガーの単独来日が決定します。そして、ロック界のスーパースターを迎える舞台として、生まれたばかりの東京ドームほどふさわしい場所はありませんでした。

 東京ドームで最初に単独コンサートを行ったアーティストはミック・ジャガーで間違いありません。

東京ドーム公式サイトの「東京ドーム公演アーティスト一覧」。「マーチングバンド&THE ALFEE」のクレジットがある(画像:東京ドーム)

 しかし、東京ドームの公式サイトにある、「東京ドーム公演アーティスト一覧」では、ミック・ジャガーの上に別の名前があります。「マーチングバンド&THE ALFEE」……これは一体どういうことでしょうか?

「マーチングバンド&THE ALFEE」とは?

 東京ドームでの実際のこけら落とし興行は、プロ野球の試合であり、3月18日の巨人vs阪神のオープン戦でした。

 続いて、ミック・ジャガー初来日公演に先駆けた3月19日~20日に「マーチングバンド世界選手権」なるイベントが行われています。

 これは、世界各国のマーチングバンドが集い、広いフィールドを行進しながら演奏を競い合うというもので、ドームのオープニングイベントのような意味合いもありました。

 そこにゲストとしてTHE ALFEEが登場し、特設ステージでミニコンサートを行ったのです。そのため、公式サイトでは「マーチングバンド&THE ALFEE」という表記がなされている次第です。

2018年12月発売『Go!Go! GUITAR 2月号』の表紙を飾ったTHE ALFEE(画像:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)



 なお、いずれのマーチングバンドにもボーカルがいないので、少なくともTHE ALFEEは

「東京ドームに最初に歌ったアーティスト」

だといえます。なお、記念すべき一曲目は『星空のディスタンス』でした。

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