ビデオテープの人気再燃? 渋谷ツタヤ話題の「VHSコーナー」は復活の狼煙となるか

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ビデオテープの人気再燃? 渋谷ツタヤ話題の「VHSコーナー」は復活の狼煙となるか

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本間めい子

フリーライター

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SHIBUYA TSUTAYAの1コーナーを機に再び注目が集まっているVHS。その歴史について、フリーライターの本間めい子さんが解説します。

昨年9月、TSUTAYAにできたVHSコーナー

 VHSの人気が2021年に再燃し、話題となっています。その中心地がレンタルビデオ業界最大手のTSUTAYAの旗艦店となるSHIBUYA TSUTAYA(渋谷区宇田川町)です。

渋谷区宇田川町にあるSHIBUYA TSUTAYA(画像:(C)Google)



 VHSとは「Video Home System」の略で、ビデオテープレコーダーの映像記録方式のひとつ。日本ビクター(現JVCケンウッド)が1975(昭和50)年に開発し、家庭用として普及しました。

 SHIBUYA TSUTAYAは、以前から同店のなかでも屈指の規模でしたが、2020年9月に「日本最大級のミュージアム」として、20万本あまりの作品をそろえる店舗にリニューアル。このリニューアルに際して「渋谷フィルムコレクション」として、VHSビデオの映画コーナーが新設されました。

1970年代にぼっ発した「ビデオ戦争」

 VHSが普及するまでの過程は「ビデオ戦争」として、現代史の大きな出来事となっています。

 1970年代、家庭用ビデオデッキが普及するとにらんだ家電メーカー各社は、おのおの独自規格で開発を開始。やがてソニー・東芝・三洋電機などから成るベータと、日本ビクター・松下電器産業(現パナソニック)・シャープなどからなるVHSの争いは熾烈(しれつ)を極め、最終的にVHSが主流の地位を獲得しました。そんなビデオデッキも2000年代に入り、DVDが普及すると過去のものになっていきました。

 規格争いに敗れたものの、好事家の支持を集めていたベータですが、その後2002(平成14)年にビデオデッキの生産を終了。カセットテープも2016年をもって生産が打ち切られました。

 またパナソニックは、2011年にVHSの国内向けレコーダーの生産を終了。続いて2016年に船井電機が生産を終了したことで、国内では製造メーカーが消滅しました。こうしてVHSは、誕生から40年あまりでその歴史を終えました。

 普及が著しかった製品だけに今でも中古品を入手できますが、新品の生産は行われていません。膨大なVHS商品を扱っている中国の通販サイト「アリエクスプレス」でも探してみましたが、カセットテープ再生機はあるにもかかわらず、VHSはありませんでした。

VHSは再評価されるか

 かつてCDが出現した頃、レコードやカセットテープは過去のものになると考えられていました。しかしレコードはいまだに愛好者が多く、プレーヤーは生産されています。

 それに対してVHSは、小規模メーカーが復活させる話も聞きません。この背景には技術問題があり、生産を従来行っていたメーカーのような高い技術がなければ、復活は困難で、また需要も限られているのです。

VHSビデオテープ(画像:写真AC)



 CDが普及し始めたころは、レコードは「雑音が混じる」、カセットテープは「音質が悪い」と遅れた存在のように見なされていました。ところが、今では雑音や音質が独特の持ち味として評価されています。

 レコード音源がCD化されるときも、雑音をどの程度入れると「味が出るか」は音調整の大きなポイントになっています。また、BS12で毎週放送されている歌謡曲を語る番組『ザ カセットテープ ミュージック』も現在人気です。

 このように、本来なら不要な部分が持ち味として評価されているレコードやカセットテープに対して、VHSは現在、「単に画質の悪いメディア」と見なされています。もしも、VHSの「味」が評価されるようになったら、復活するかもしれません。

 もしかしたら、どこかの企業がVHSデッキの生産を復活させるかもしれません。そのためには、VHSの再評価が広がっていくことが必要です。SHIBUYA TSUTAYAの試みは、その第1歩といえるでしょう。

VHSのみの流通作品に光が当たるか

 SHIBUYA TSUTAYAの懐古趣味のようなVHSコーナーが人気を集めているのは、DVD化されたり、配信されたりしていない作品が膨大にあるからです。

 VHSが普及した理由のひとつに、レンタルビデオとしての利用が促進され、多くのタイトルがリリースされたことにあります。レンタルビデオもまた、今では配信サービスに押されている存在ですが、1980年代後半には家庭のマストアイテムでした。

懐かしのテレビデオ(画像:写真AC)



『朝日新聞』1989年3月24日付朝刊の記事では「昭和天皇の大喪の際も、テレビ離れの若者が借りにつめかけ、注目を浴びたレンタルビデオ」として紹介しています。

 この記事によれば、映画を劇場で見るときに比べて圧倒的に安いこと、テレビの映画番組ではCMが入ったり、カットされたりすることなどを挙げて、利点の多い「家庭の必需品」であるとしています。

 ここ数年、配信サービスの競争激化で各社のラインアップはどんどん充実しています。それでも「過去にVHS化されたが入手困難」という幻の作品は少なくありません。SHIBUYA TSUTAYAのようなアーカイブサービスに今後も目が離せません。

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