どんちゃん騒ぎはもう古い? コロナ禍の花見スポットを巡って気づいた「自分だけの桜」とは

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どんちゃん騒ぎはもう古い? コロナ禍の花見スポットを巡って気づいた「自分だけの桜」とは

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山本肇

フリーライター

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東京で3月22日(月)、桜の満開の観測がされました。コロナ禍の桜だけあって、いつもとは受け止め方が一味も二味も違います。フリーライターの山本肇さんが都内の桜スポットを歩きました。

実質「宴会禁止令」でも名所は

 首都圏1都3県に発令された緊急事態宣言は2021年3月21日(日)、解除されました。感染拡大の懸念はいまだ拭い切れていないものの、春の風物詩である桜は満開を迎えています。

 都内の桜の名所は飲食を禁止するなど、事実上の「宴会禁止令」が発動。小池百合子都知事が3月5日の記者会見で、花見・宴会は「無しで」と呼びかけたことも追い風となっているようです。

東京都内で咲いている桜(画像:山本肇)



 バーベキュー広場のある都内の公園をのぞいてみると、黄色い立ち入り禁止のテープで広場の一角が閉鎖されていました。少し過剰な措置だと感じましたが、ここまで強硬に行わないと防げないのでしょう。

 しかし目黒川沿いなどの超有名スポットは、大勢の人で混雑している様子がテレビで放送されています。宴会は「無しで」にもかかわらず、缶ビールを片手に路上に立ち止まったり、壁にもたれかかったりして、ほろ酔いになっている人も。

 桜の開花は残念ながらそのような迷惑行為を加速させており、一方、飲食店の時短営業は変わらず続いています。

 迷惑行為は当然良くないですし、「密」は避けたいものですが、自宅にこもりっぱなしだったこの1年間から抜け出したいという気持ちは分からなくもありません。桜がきれいなので、そんな気持ちもなおさらでしょう。

 筆者もここ数日間、都内各所の桜を目にしてきましたが、満開の桜はやはり素晴らしいものです。もちろん毎年のように桜を愛(め)でるというわけにはいかないので、取材の移動途中など、わずかな時間に偶然に出会った桜を楽しんでいます。

暗いコロナ禍を盛り上げる神田川沿いの桜

 2021年春、筆者が最初の花見をしたのは都電面影橋駅(新宿区西早稲田)付近の神田川沿いです。

都電面影橋駅の位置(画像:(C)Google)



 最初から「このあたりで桜を見ようか」と思ったわけではありません。別の取材でシェアサイクルを借りて、東新宿方面から移動してきたのですが、自転車を返却するポートが早稲田近辺では面影橋駅あたりにしかなかったのです。

 自転車を返却して新目白通りまで出ると、目に飛び込んできたのは思いもかけない、桜が満開の風景でした。すっかり忘れていましたが、このあたりは神田川の川沿いに植えられた桜と水面が映える名所なのです。

 そんな名所なのに、決して混雑していません。確かに10人ぐらいの人が訪れていて、思い思いに写真を撮っています。周辺は遊歩道が少ないため、路上を歩きながら時々桜を見ることくらいしかできないからでしょうか、密になる気配は全くありませんでした。

「2021年も桜を見られてよかったねぇ」といったような声が、あちこちから聞こえてきます。花見・宴会はできませんが、コロナ禍の緊張感も、満開の桜を見れば少しはほぐれるのではないでしょうか。

 しばらく川沿いを歩いていると、結婚式の前撮り(記念写真を当日ではなく前もって撮影すること)をしているカップルがいました。

 この時期に「人生の門出」ということで大変でしょう。それでも運よく満開の桜の下で前撮りできるふたりに幸あれと願わずにはいられませんし、こちらもなんだか得をした気分になりました。

築地にある知られざる名所

 続いてやってきたのは築地(中央区)かいわいです。ここも近くで取材を終えた後に「あのあたりにも桜の木があったはず」と思い出して立ち寄りました。

 まずは晴海通り沿いに歩いて、勝どき橋のたもとへ。

 勝どき橋を前に、左手にはニチレイ東銀座ビルとモニュメントがあります。そのモニュメントと隅田川の間の土手を両国方面に歩いて行くと、まず目に入るのが土手の道においかぶさるようにできている「桜のトンネル」です。

ニチレイ東銀座ビルの位置(画像:(C)Google)

 桜の木は1本だけで、決して長くはありません。でも、ビルと川の間にささやかなトンネルができている風景は見事です。

 実はここ、数年前に気付いた「個人的な名所」なのです。おそらく地域の人には見なれた光景だと思いますが、筆者は2021年も満開の季節にやってこれたことを幸運に思いました。もちろん歩いている人も多くないので、密を避けて楽しめます。

移動しながらでも桜は楽しめる

 実は今回歩いて改めて思ったのですが、築地かいわいは密を避けて桜を見られるスポットがめじろ押しです。隅田川からいったん離れて、聖路加国際病院(中央区明石町)の方に行きましょう。

 まず、聖路加国際病院の前の道路は両岸に桜並木が続きます。病院の前というだけあって人が滞留できないため、常に密を避けて桜を楽しむことができました。少し難なのは聖路加国際病院も、向かいの複合施設・聖路加ガーデンも高層ビルのため、日陰の時間が多いことでしょうか。でもこれがまた、「大都会のビルの谷間に咲く桜」という特別な雰囲気を醸し出していて、思わず心が躍りました。

 続いて銀座方面へ。

 中央区保健所の裏手のあかつき公園(同区築地)も隠れた桜の名所です。午後のこの公園はいつも近所の子どもたちでいっぱいなのですが、今回は午前中だったこともあってか、人を気にせずに桜を楽しむことができました。なお、聖路加国際病院の旧病院棟前の公園も桜並木が美しいスポットです。

 この近隣で、桜が美しいもうひとつの公園が築地川公園(中央区明石町)です。公園のバーベキュー広場は閉鎖されていて、コロナ禍という現実を突きつけられますが、元は川だったところを埋め立てた公園ということもあり、長く開けた空の下に桜が満開の光景を楽しめます。

築地川公園の位置(画像:(C)Google)



 この後、次の予定の都合で佃大橋を渡って月島駅へ向かったのですが、そこでもまたおもいがけない桜との出会いがありました。

 佃大橋の真ん中あたりから下流を見ると、勝どき橋と桜がひとつの視界に収まる風景があったのです。一方、上流を見れば近未来的な超高層マンション群・大川端リバーシティ21(中央区佃)の光景の下に佃公園(同区佃)の桜を望むことができました。

 いずれの散策も時間は30分程度。半ば時間つぶしのような感じでしたが、それでも「2021年もたくさん桜を楽しめた」という気分になりました。

花見は結局、宴会なのか

 ちょっとした散歩でこれだけの多くの桜に出会えるのは、東京が大都会だからでしょう。そんな東京に住む人は花見の「意義」をもう一度考える時期に来ていると、筆者は思うのです。

 花見はこれまで毎年、ある種の慣例として行われてきました。しかし花見で「風流」を味わいながら楽しんだという人は少ないでしょう。たいていは、花見を理由に集まって宴会を開いたり、会員制交流サイト(SNS)のネタに写真を撮ったり、というものだったはずです。

酔っぱらった人のイメージ(画像:写真AC)

 お酒と雰囲気に飲まれて1~2時間は楽しく騒げるものの、日が次第に暮れると、気温もテンションも下がる――というのが、ある意味一般的な花見でした。しかし1年たつと、そのようなネガティブな終わり方は忘れられ、また単に騒ぐだけの花見が繰り返されてきたのです。

 そのような過去の経験から、今回「宴会禁止令」となった花見の名所周辺では、住民から歓迎の声も聞かれたほどです。

コロナ禍の桜はVRで楽しむ?

 コロナ禍の花見では、少人数、できれば単独で桜を純粋に愛でるべきではないでしょうか。次第に暖かくなり、都内のあちこちで咲く桜を愛でるにはなにも名所に行く必要はありません。町の中の小さな公園や、民家や施設にも数本だけ桜が植えられていることもあります。

 そうした、大都会の片隅であまり人に知られることなく咲いている桜をテーマに街歩きをしてみてはいかがでしょうか。事前に情報を検索したり、スマホで地図を確認したりする必要はありません。筆者のように、適当に降りた駅でトボトボと歩くだけでよいのです。特に名所でもなんでもない、街の片隅で咲き誇っている、自分だけが知っている桜を見つけるのは、とても気持ちがいいものです。

 現在、密を避けて桜を楽しもうと、都内はもとより全国でさまざまな試みが行われています。桜の名所の川を船で楽しむクルーズや、観光タクシー、それにドローンで映像を撮影して配信するなどバリエーションが豊かです。

 中でも筆者が注目しているのは、長野県伊那市で観光協会が始めたゴーグルキットです。

伊那市観光協会が始めたゴーグルキット(画像:伊那市)



 これは、同市の桜の名所で・高遠城址公園の桜をスマホで楽しめるVR(仮想現実)ゴーグルです。まさか、東京からは電車とバスを乗り継いで4時間はかかる高遠城の桜を東京で楽しむことができるようになるとは……やはり、コロナ禍は花見のスタイルを変えるチャンスかもしれません。

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