五輪まで5か月 都心にできた「晴海選手村」という奇跡の無人地帯を歩く

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五輪まで5か月 都心にできた「晴海選手村」という奇跡の無人地帯を歩く

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山本肇(フリーライター)

来る東京五輪に向けて作られた晴海の選手村マンション。その現状をウオッチするために、フリーライターの山本肇さんが歩きました。

期間限定の無人地帯

 東京五輪をめぐる話題が毎日のように報じられています。そんななかで気になるのは、晴海(中央区)に建設された選手村の動向です。

 選手村として使った建物を分譲マンションとして転用する計画「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」は、立ち上げ当初から大きな話題となりました。その背景には、2012年のロンドン五輪で選手村を改装した新しい街「イーストビレッジ」が人気を呼んでいたことがあります。

 晴海フラッグの構想はイーストビレッジを超えるもので、インフラに水素を利用します。エリア内には水素ステーションを整備するとともに、地下のパイプラインを使って各建物に純水素型燃料電池を供給。

 さらに各戸にはパナソニックの家庭用燃料電池「エネファーム」を設置し、各家庭の電気が発電されます。また人と車の導線も区分するなど、広大な土地を使ったこれからの街づくりを探るための実験的な新都市として構想されています。

 しかし東京五輪が延期されたことで、選手村としての利用、住戸としての入居はともに延期に。最近では不動産関係者による見解も複雑化しています。

 今後どうなるかわかりませんが、晴海フラッグは街歩きの視点から見れば興味深いエリアです。なにしろ、都心で「人口1万2000人規模の建物が並ぶ無人の街」が存在しているのです。

 今でなければ、こんな奇跡を見ることはできません。というわけで、人ごみを避けつつ足を運んでみました。

メタボリズム建築から警察署まで多様な空間

 街歩きのスタート地点は大江戸線「勝どき駅」、もしくは都営バス「晴海三丁目停留所」からです。今回は東京駅から都営バスで晴海三丁目停留所へ。晴海大橋手前の交差点を横断して、晴海客船ターミナル方面へと歩いて行きます。

 月島や勝どきと晴海の間を流れる朝潮運河沿いにタワーマンションができたためか、以前と比べて道を歩く人の数も増えました。

 そのまま歩くと、まず見えてきたのが日本無線協会(中央区晴海3)の本部ビルです。このビルはアマチュア無線をやっている人には試験会場としておなじみ。ちなみにビルの先にある「ローソン 中央晴海三丁目店」が客船ターミナルまでの間で飲み物と食べ物を確保できる最後の店です。その先には自動販売機もないので、街歩きの際には注意しましょう。

 その先、右手には「ホテルフクラシア晴海」(同)の建物が見えます。2018年まで「晴海グランドホテル」の名前で知られた、地域ではもっとも古いホテルです。完成は1975(昭和50)年で、メタボリズムの影響を受けた出窓が特徴的です。

 今は通り沿いの建物が建て替えのために取り壊されているので、建物の全体像をじっくりと眺められます。これもまた今しか見ることのできない風景です。

 そこからさらに進めば、真新しい月島警察署(同)があります。立地は晴海ですが名前は月島警察署。かつては月島3丁目にありましたが、晴海3丁目に移転した今も名前は月島警察署のままです。管轄が変わらないからということでしょうか。

 この月島警察署の横を走るのが環状2号線。築地市場の移転とともに開通した道路は晴海を通って豊洲方面へと向かいます。

 さて、いよいよ左手に選手村の建物群が姿を現してきます。この辺りまでは歩いている人も多いのですが、その先は人も車も少なくなります。

無人の建物群(画像:山本肇)



 珍しいのが、道路に置かれたガードレールの数。道路が整備途上のため、使ってよい道とそうでない道をわけるために白いガードレールが大量に設置されています。こんな奇妙な道も、ほかではそうそう目にできません。

人気の温浴施設は廃止

 さて、環状2号線を横断すると見えるのは巨大な煙突が目を引く中央清掃工場(晴海5)。敷地の一部は公園になっており、クライミング遊具などが置かれていますが、使っている人はまったくいませんでした。ちなみに、休日には「3密(密集・密接・密閉)」を避けられるため、周囲をジョギングしている人は多いのです。

 この中央清掃工場にはもともと、中央区が運営する温水プールを備えた「ほっとプラザはるみ」があったのですが、現在はリニューアルのため休館中。この施設は温水プールだけでなく、ジェットバスや岩盤浴の施設もありました。

 リニューアル終了後には人口も増えますし、運動で汗を流すことができるよい施設だなあと思っていたら、なんと、リニューアル後は温浴施設を廃止する予定なのだとか。なんてもったいない……。

「ほっとプラザはるみ」の現在(画像:山本肇)



 さて、そんなほっとプラザはるみから晴海客船ターミナル(同)までが無人の街の「神髄」です。歩道の部分に通行止めの柵がしてあることからも、街がオープンしていないのを感じます。その近くには「自転車は歩道」という看板がありますが、どこを歩けばよいのでしょうか。

 柵の向こうに見える建物群は、見ものです。整然と建物が並んでいるさまは近未来的ですし、タワーマンションのような強い自己主張もありません。

 かつての高度成長期は最先端の住居として団地が登場し、多くの人が憧れました。この建物群の整然とした配置は、それと似たような美しさがあります。とりわけ、晴海運河に面した建物は、建物の前方に庭が整備されていますし、運河の向こうには豊洲の風景が見渡せます。

晴海客船ターミナルに到着するも……

 こうして無人の街を抜けた先には、展望台の楽しめる晴海客船ターミナルが……と言いたいところですが、展望台は楽しめません。コロナ感染拡大対策の影響で晴海客船ターミナルは「当面の間」閉鎖となっていました。

 建物はもちろんのこと、敷地の全面が閉鎖。駐車場まで閉鎖されているため、夜景を楽しみたい人や名作アドベンチャーゲーム『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』ファンは要注意です。ここの駐車場はかつてタクシーの休憩スポットになっていたのですが、運転手の皆さんはどこに移動したのでしょうか?

晴海客船ターミナルの現在(画像:山本肇)



 無人の街は今しか見ることができません。帰りは晴海埠頭(ふとう)からバスで簡単に帰ることができるので、緊急事態宣言が明けたら出掛けてみても面白いでしょう。

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