【実録 東京人vs関西人 3】東京に住む関西人は、大声で関西弁をしゃべる関西人に若干イライラしている

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【実録 東京人vs関西人 3】東京に住む関西人は、大声で関西弁をしゃべる関西人に若干イライラしている

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松田久一

ジェイ・エム・アール生活総合研究所代表取締役社長

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江戸・東京と、関西・関西人との結びつきを考える、ジェイ・エム・アール生活総合研究所社長の松田久一さんの連載(全4回)。3回目は、お笑いや人情といった側面から関西人の特徴を考えます。

1.関西弁と標準語のはざまで揺れ惑う

 兵庫県出身の筆者(松田久一。ジェイ・エム・アール生活総合研究所代表取締役社長)が江戸・東京と関西の結びつきについて考える4回続きの連載。第3回となる本稿では、お笑いや人情といった側面から関西人の気風を考えていきたいと思います。

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 21世紀に入って、平成から令和に元号が変わり、東京が関西人を吸引するパワーは拡大しました。吸引力は「東京の魅力」に比例し、「心理移動距離」に反比例します。

 東京の仕事機会などの魅力は増え、移動時間もコストを低下し、標準語を話すようになった関西人の心理的な抵抗は減少しています。進学、就職、転勤で東京へと人口が移動しています。関西は成長産業が少なく、雇用機会が相対的に少ないため、高収入を得られる職もあまりないので仕方がありません。その結果、東京には約100万人の関西人が暮らすようになりました。

関西人は一家に1台「たこ焼き機」があると思われがち(画像:写真AC)



 しかし、東京の関西人は、現地の関西人とは違います。これは、海外移住した日本人に似ています。アメリカ本土、ハワイやブラジルなどに移住した人々の価値観や「日本人らしさ」の変化です。1世は、現地との同質化が進む一方で「こだわり」も強くなります。

 2世以降になると、言語習得もあり、完全に同質化してしまいます。

 東京にいる関西人の特徴を五つ挙げてみます。もちろん、統計資料はないので、筆者の実体験と、わずかな資料に基づくものです。

 第1は、関西弁がしゃべれないのでアイデンティティーを失いかけています。ユーチューブで話題になった動画「ある日突然関西人になってしまった男の物語」(関西電気保安協会)を見て、なるほどなあ、と思ってしまう自分に気づきショックを受けます。

 長年の東京暮らしでも、東京ではいつまでも関西弁をしゃべっていると言われ、関西に行けば標準語をしゃべっていると言われます。俺は、私は、何者やねん!? とわからなくなっています。

2.お好み焼きはご飯のおかず……ではない

 実際、標準語と関西弁のアクセントは、まったく違います。違うだけならいいのですが、逆になるので極めて難しく、学校へ行かないと標準語をしゃべれません。これは言語学的に認められていることで、別に「偉そうに」している訳ではありません。

 第2は、関西人の特徴と思われている「たこ焼き機」神話です。関西出身なら「たこ焼き機」が家にあって、「お好み焼き」がうまく焼ける、と言われることに「違和感」を覚えています。

増え続ける、東京在住の開催出身者。普段しゃべるのは標準語? 関西弁?(画像:写真AC)



 確かに、関西でも、みんなが「たこ焼き機」を所有しているのは事実でしょう。しかし、東京に10年も暮らせば、どんなにうまく焼けるスキルを持っていても、記憶をたどり、レシピを見ないと焼けません。「お好み焼き」をおかずに、ご飯は食べられません。関西で食べた記憶もありません。

3.ノリツッコミができると思われがち

 第3は、関西人は素人がノリツッコミできると思われています。確かにできますが、オチがわかっているので、面白くありません。東京でも吉本芸人の出演が多すぎて、だんだんに飽きてきます。東京進出の芸人は、お客さんが甘いので腕を落としていて、関西出身者からすれば世間の評価ほどには面白くありません。

 笑いは、日常を支配している空気や秩序に揺らぎを与え、それを戻したときに起こります(フランスの哲学者、アンリ・ベルグソンの言葉です)。札幌出身のタカトシの「欧米か!」ネタで説明します。

トシ「母親の味と言えばみそ汁だよね~」
タカ「母親の味と言えはチェリーパイだよね~」
トシ「欧米か!」と言って頭をたたく

 トシが、現実の常識の世界を設定します(ツッコミ)。それに対して、現実にまったくそぐわない、虚構の「タカ」の答え(ボケ)があり、聞いている側が「えっ?」となり、現実に揺らぎが生じます。それをトシが「欧米か!」(ツッコミ)と言って現実に引き戻す。この時に、現実感を与える = たたく行為のタイミングで笑いが生まれます。

4.損得勘定と、現実主義と、粋な美意識

 頭をたたく行為は、現実に引き戻す効果があり、漫才のなかでもっとも効果的に利用したのはダウンタウンです。関西人ならトシが「なんでやねん?」のツッコミで、定型的な笑いを取りにいくはずです。そこを「欧米か!」で、さらにボケて落としているのがすごいところです。

 ノリツッコミとは、タカの虚構に対して、トシが「シチューもそうだね」と虚構に虚構を重ねていくことです。そうすると、現実への引き戻しが大きくなり、どこかで「なんでやねん?」で笑いが生まれます。しかし、標準語のタカトシには「なんでやねん!」はありません。そこで「欧米か!」の選択になる訳です。

 芸能活動を休養する以前の ナインティナイン岡村隆史の芸は、虚構をどこまでも真面目に追求し、虚構を現実と思わせてしまうすごさでした。EXILEとのダンス共演あたりが頂点でした。現在は、素人いじりがメインになっている という印象です。

「欧米か!」ネタで一躍人気者になったタカアンドトシ。関西ではなく札幌出身(画像:吉本興業)



 素人芸の面白さは、1度きりの、あり得ない虚構の設定にあります。それを芸人が現実に引き戻し、笑いを取ります。明石家さんまは、これがうまいです。

 関西人は笑いのセンスを持っています。関西弁と標準語という二重言語による独特の現実認識にあります。また、小さい頃から吉本文化に染まっているので当然です。土曜日のお昼は、みんなが「吉本新喜劇」を見て体得していきました 。関西では勉強のできる子は人気がありません。「面白い」人間が、もっとも人気がありました。

 第4は、実益主義で損得を計算して商人のように行動し、法、建前や形式を重視しません。確かに、関西人には独特の現実主義の人間が多い気がします。

 テレビや映画では、「もみ手の商人」「無遠慮な中年女性」などのステレオタイプは、ほとんどが関西人として描かれています。しかし、現実主義の側面も持つことも忘れてはなりません。そして、粋(すい)を極めた美意識も持ちます。

5.大声で関西弁をしゃべる同郷人にイラッ

 江戸の歌舞伎作者・近松門左衛門の「曽根崎心中」は、商人と遊女が恋仲になり、義理と人情の板挟みで、純愛を通すために心中した大阪の物語です。浮世草紙・井原西鶴の「日本永代蔵」は江戸時代に金持ちになる方法を追求した事例研究ですが、金持ちになるには職を磨き続け、正直を貫き、運がよければ「仕合わせ」になるというのが結論です。

 大阪出身の川端康成は、学生時代に東京・神楽坂の女給(ウエートレス)を追い回し、失恋したあげくに、伊豆へ傷心旅行をして書いたのが「伊豆の踊り子」です。新感覚的な文章に飾られた現実体験は、ふられた女給へのいちずさです。

 第5に、東京の関西人は、東京にやってきたての関西人が嫌いです。

東京の関西人は、東京にやってきたばかりの関西人が嫌い?(画像:写真AC)



 関西にいるのと同じ感覚で、どこでも大きな声を出し、関西弁でしゃべっているところをみると「イタイ」と感じます。東京では電車内などの公共の場で、大きな声で話しているのを見かけることはあまりありません。それが暗黙のルールです。しかし、関西では違います。

 しょうゆの色は「黒い」、エスカレーターも右をあける、横断歩道は明らかに車が来なくても赤信号は待つ、なんでもかんでも長い行列をつくる、駅の売店で物を買っても「おおきに」とは言わない、おばちゃんがアメをくれない。土曜昼の吉本新喜劇の役者の名前とギャグを知らない――。

 それが「東京ルール」です。東京ルールを知らないことがなぜか妙に腹立たしく、嫌いなのです。

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