若手ジャニーズは「学園ドラマ」で名を上げる――コロナ禍の再放送で改めて見えたこととは

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若手ジャニーズは「学園ドラマ」で名を上げる――コロナ禍の再放送で改めて見えたこととは

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太田省一

社会学者、著述家

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コロナ禍で数多く目にしている再放送番組。そんななかでも、ジャニーズのメンバーが出演している番組が話題です。ということで今回は、ジャニーズと学園ドラマの生徒役の歴史について、社会学者で著述家の太田省一さんが解説します。

コロナ禍で東京の学園ドラマが話題に

 ようやく撮影再開のニュースが届くようになりましたが、コロナ禍のなか、ドラマもずっと再放送が多くなっていました。

 そのなかで話題になっていたのが、『ごくせん(第1シリーズ)』(日本テレビ系、2002年放送)(以下、『ごくせん』)や『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系、2005年放送)(以下、『野ブタ。』と表記)など人気学園ドラマの再放送です。

 それぞれ架空の学校ですが、『ごくせん』が白金学院高校、『野ブタ。』が隅田川高校とどちらも東京にあるとおぼしき高校が舞台の作品でした。

港区赤坂にあるジャニーズ事務所の外観(画像:(C)Google)



 そしてもうひとつの共通点、それはジャニーズのタレントが生徒役で出演していたことです。そこで以下では、ジャニーズと学園ドラマの生徒役の歴史を、少し振り返ってみたいと思います。

『ごくせん』で発揮された松本潤のクールさ

『ごくせん』は、教師・山口久美子、通称ヤンクミを演じた仲間由紀恵の代表作でもあります。学校では熱血教師、しかし実は任侠(にんきょう)集団「大江戸一家」組長の孫娘で、それをひた隠そうとするという設定にコミカルな風味がありました。

 そのヤンクミが赴任早々担任になるのが3年D組です。D組は不良の集まりで最初はヤンクミに対して反抗的ですが、ともに悩み、問題を解決しようと奮闘するヤンクミに次第にこころを開いていきます。

港区赤坂にあるジャニーズ事務所の所在地(画像:(C)Google)

 学園ドラマの定番ですが、不良役には期待の若手俳優が起用されました。第1シリーズでは、小栗旬や成宮寛貴とともに嵐の松本潤が不良を演じています。

 松本は政治家の息子で、成績優秀かつスポーツ万能。でもある理由から不良になっているという役どころです。ストーリー的にも、ヤンクミの正体を知り、隠れて手を貸すというキーパーソンでした。

 一番反抗的だったのが、最後には一番の理解者になる――。いわば「ツンデレ」の王道ですが、松本潤のクールなたたずまいにもぴったりでした。彼はこの後、やはり学園ドラマの『花より男子』(TBSテレビ系、2005年放送)の道明寺司役で大きく人気を博すことになります。

『野ブタ。』で主演を務めた亀梨和也

『ごくせん』の第1シリーズは最高視聴率23.5%(ビデオリサーチ調べ。関東地区)とヒット。それを受けて第2シリーズ、さらに第3シリーズが制作され、不良役が若手俳優の登竜門になっていきました。

『ごくせん』のロゴマーク(画像:日本テレビ)



 ジャニーズにとってもそうで、例えば第2シリーズにはKAT-TUNとしてCDデビューする前の赤西仁と亀梨和也が出演しました。

 その亀梨和也は、『野ブタ。』では主演を務めています。

 ここでの彼は、如才ないがいつも冷めている桐谷修二を演じています。また当時NEWSの一員で、直前に別の学園ドラマ『ドラゴン桜』(TBSテレビ系、2005年放送)にも出演していた山下智久が共演、こちらはいつも自由気ままな草野彰を演じました。

 対照的なキャラクターのこのコンビはたちまち人気を呼び、2人が組んだユニット「修二と彰」による主題歌「青春アミーゴ」(2005年発売)は、ミリオンセラーの大ヒットとなりました。

『野ブタ。』で演技力を見せた山下智久

『野ブタ。』は、よくある熱血青春ものとは一線を画す新しいタイプの学園ドラマでした。

 堀北真希演じる転校生の小谷信子は、いじめられっ子。そんな彼女を修二と彰がプロデュースして人気者に変えようとします。ただそこには妨害もあり、一筋縄ではいきません。時には窮地に陥ります。

 しかしそれを乗り越えていくなかで、プロデュースする側とされる側というだけの関係を超えた3人の友情が生まれます。

 木皿泉の脚本はそんな学校という場所特有の“生きづらさ”を巧みに浮き彫りにし、亀梨和也と山下智久もそれに応えて修二と彰の心境の変化をよく表現していました。

『金八』での風間俊介の繊細さ

 そのように光の部分だけではない学校の影の部分を描いた学園ドラマのパイオニア的作品が、東京の区立中学である「桜中学」を舞台にした『3年B組金八先生』(TBSテレビ系)だと言えるでしょう。主役の先生・坂本金八を演じたのは、ご存じの通り武田鉄矢でした。

 一方でこの作品は、1979(昭和54)年に始まった第1シリーズに出演して爆発的人気となったたのきんトリオ(田原俊彦、近藤真彦、野村義男)以来、生徒役でジャニーズが数多く出演したことでも有名です。実は亀梨和也の俳優デビューも、この作品の第5シリーズ(1999年放送開始)でした。

 そしてそこに同じくジャニーズから出演していたのが、風間俊介です。

『3年B組金八先生』第5シリーズ(画像:TBS)



 この第5シリーズでは学級崩壊などがテーマで、見た目ではっきりわかる昔ながらの不良生徒ではなく、表面上は完璧な優等生でありながら、陰で他の生徒の弱みを握って思うように操る裏の顔を持った生徒が登場します。その生徒・兼末健次郎を演じたのが、風間俊介でした。

 健次郎は、先生には屈託のない笑顔を見せたかと思えば、手下のようになった他の生徒たちには冷酷な顔を見せます。ただ彼にも家庭の複雑な事情があり、深い悩みを抱えています。

 そしてその結果苦境に立たされるのですが、なんとか彼を救おうとする金八にも助けられ、最後は再生へと向かいます。風間俊介はそんな難しい役柄を繊細な演技で見事に演じきり、評判になりました。

近年存在感を増す「俳優組」

 ジャニーズのなかの風間俊介は、「俳優組」と呼ばれるポジションです。

「俳優組」とは、他の多くのように歌手としてメジャーデビューすることなく俳優をメインの活動にするジャニーズタレントを指します。

 同じ「俳優組」には、生田斗真もいます。彼もまた、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系、2007年放送)という学園ドラマで大きく注目されました。

5人組アイドルのイメージ(画像:写真AC)



「俳優組」ジャニーズの存在感は近年さらに高まっているようです。

 生田斗真は、2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』で日本初のオリンピック選手となる陸上選手・三島弥彦を好演しました。さらに2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』では、風間俊介が徳川家康を演じています。

 先日放送された『麒麟がくる』の桶狭間の戦いを描いた回で、今川方から無理難題を言われて松平元康(徳川家康)が無言で相手をにらんだシーン。その鋭いまなざしに兼末健次郎をダブらせたのは、きっと私だけではないはずです。

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