自分を貫いた4年間――早稲田が私に残してくれたもの 「女子らしくない」と言われても

学生時代の経験は、その後の人生に大きな影響を与えるものです。ライターの秋山悠紀さんにとって早稲田大学での4年間は、社会の常識とされている「女性らしさ」について考える機会でもあったといいます。

「ワセジョっぽいね」と言われて

 山形で生まれ育った筆者。中学生くらいのころから漠然と東京への憧れを募らせ、高校生になると「絶対、東京の大学に行きたい」と思いを馳せるようになっていました。東京に100以上ある大学の中で、田舎の女子高育ちの筆者を魅了したのは早稲田大学です。院生を含めると5万人もの学生が在学するマンモス校には、自分の人生を広げるさまざまな学問の世界があるはず。そして流行や既存の価値観にとらわれない「バンカラ」な、個性的な奇人・変人に出会えるはずだと、期待に胸を膨らませていたのです。

 ところで早稲田大学の女子学生や卒業生はしばしば、早稲田女子を略して「ワセジョ」と呼ばれるのをご存じですか? その定義はさまざまですが、慶応大学や青山学院大学などのいわゆる「キラキラ女子」とは真逆の存在。「男勝り」「女らしくない」「モテない」というような、ネガティブな意味を込めて使われる呼称です。

 高校時代はサッカーと勉強しかしてこなかった当時の筆者も、このイメージにバッチリ当てはまっていたでしょう。でも、男子高生と練習試合をして負けるたびに体格差やスピードの違いに本気で悔しがり、必死の努力によって勉強や受験戦争を勝ち抜いた筆者にとって、女子力やらモテやらなんて本当にどうでもいい価値観のひとつでしかありませんでした。

早稲田大学の大隈講堂(画像:写真AC)



 晴れて早稲田に入学すると案の定、「ワセジョっぽいね」と言われる場面に何度も出くわすことになります。そしてその言葉に含まれている「変わってる」「かわいくない」というニュアンスも、否が応にも感じ取らざるを得ませんでした。おしとやか、幼気(いたいけ)、家庭的、愛想のいい相づち……。「世間では女性は、『ワセジョ』とは真逆の基準で評価されているんだ」と突き付けられる瞬間でした。

 そんな筆者と同じように「女らしさ」に染まれないでいる女子学生は早稲田のキャンパスにたくさんいて、彼女たちとお酒を飲みながらよく「私たちって拗らせてるよね」「だってどうせワセジョだもん」と自虐的に管を巻くこともしょっちゅうでした。そんな私たちの共通認識は「『女子力が高い』ことは、私たちだってやろうと思えばできる。でも、やらない」。そんな物差しで自分が評価されるのは、プライドが許さなかったのだと思います。

ワセジョが闘っていたものは

 そんな4年間を経て卒業し、社会人として過ごす今、ふと思うことがあります。ワセジョが「絶対にやらない」と頑なに闘っていた相手とは、単なるモテや恋愛のアレコレではなくて、現代女性を縛る呪いだったのではないのか、という思いです。

キャンパスで過ごす大学生のイメージ(画像:写真AC)



「家事育児は妻がやるべき」「女は男より仕事ができない。だから給料が安いのは当たり前」「女なのに気が利かないね」「女なんだからでしゃばるな」「女はバカな方がかわいい」――。こういう考え方は残念ながら、今も日本社会に残っています。ワセジョだった私たちがあのころ必死で突き付けていた「NO」は、男性中心の社会で女性に求められる常識に対してだったのではないかと今思うのです。

 もちろん、どの学校を卒業した女性であっても社会に疑問を感じる人はたくさんいます。そのなかで「ワセジョ」というレッテルを授かった筆者たちは、時に自虐を口にしながら時に大げさ過ぎるほど愚直に社会常識への抵抗を体現していたのでした。

 ワセジョなんて嘆いてみたところで、しょせんは偏差値の高い有名大学です。「ブスでも、モテなくても、変わり者だとしても、私たちは早稲田の学生だ」という驕りが当時なかったとは言えません。そういう早稲田生としての聡(さと)さや小狡(こずる)さを抱えながらもなお、20歳前後の若者が持つ有り余るエネルギーやもがきの中で、筆者たちは一生懸命「女性らしさという常識」と闘っていたのだと思っています。

ちなみに男子も相当、拗らせていた

 さて、ここまで女子のことについてばかり書いてきましたが、早稲田の男子についても触れておきましょう。

 男子学生たちもまた女子と同じで、何かを拗らせた奇人・変人ばかり。女子に対してどうこう言えるようなものでは全然ありませんでした。そして、これまた女子たちと同じように、何かに対して一生懸命で、ひたむきな学生が多かったように思い出します。

 たとえば「早稲田祭」(学園祭)。 学園祭で行われるミスコンテストやミスターコンテストといえば普通はモデルや芸能人のような人たちが出場するものです。しかし早稲田祭のミスターコンテストはなぜか、顔の格好良さではなく「筋肉の格好良さ」を決めるルールなのでした。

 ウェイトトレーニングサークル「早大バーベルクラブ」主催の「ミスター早稲田ボディビルコンテスト」は、筋骨隆々の男たちが己の筋肉を披露し合い、「8番キレてるよ!」「まるで大胸筋が歩いてるみたい!」などという声援を受けながら、投票数を競ってその年のミスター早稲田を目指します。

 いかに過酷な状況を乗り越えられるかを競う「早稲田王決定戦」も、早稲田祭の大人気企画です。瓦を頭で割った後に髪の毛を墨汁につけて習字したり、カエルや豚の顔などが入った闇鍋を食べたりと、「なんでこんなことやってるの?」という疑問なんてもはや意味を持たなくなるのが早稲田王の凄みです。

 筆者は驚きやおかしさ、バカバカしさに満ちていたミスター早稲田も早稲田王決定戦も大好きで、毎年観るたびに「ああ、こういう変人・奇人がいるから早稲田に入ったんだよな」と幸せを感じていました。

早稲田大学を創設した大隈重信の像(画像:写真AC)



 そしてこういうバカ男子たちもまた、くだらないことやバカバカしいことに全力を注いでいても結局は「早稲田生だから」サマになったり許されたりしていることをおそらく自覚していたでしょう。性別の違いはあれど、この「早稲田だから」という「免罪符」は筆者たちワセジョが抱えていたそれときっと同じ種類のものでした。

体に染みついたままの、バンカラ気質

 今、筆者の大学時代の友達をあらためて見渡してみると、起業や海外移住をしたり会社で役職についたりしている人もいれば、大学のときからの夢を今も追い続けている人もいます。それぞれの道を模索しながら前進し続けている彼らの姿を見るたび、早稲田在学中に染みついたバンカラ気質や、常識を疑う考え方が背景にあるのを感じずにはいられません。

 それにしても変な人だから早稲田に入るのか、早稲田に入ると変な人になるのか。そして早稲田に入ったからワセジョになるのか、もともとワセジョ気質のある女子が入学するのか。その答えはわかりませんが、今の筆者にも少なからぬ影響を残していることは確かです。

 皆さんはどんな場所で青春時代を過ごしましたか? そのときの経験は、今の自分にどのような影響を残していますか?

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