「上司の話は聞きたくない」――東京・オフィス街の駅改札前に掲げられた看板、いったい何?
オフィス街の玄関口になぜ 2020年6月24日(水)夕、仕事で訪れたJR田町駅。改札を出たとたんデカデカと掲げられた看板に思わず目を奪われました。 「上司の話は聞きたくない」。オフィス街の駅改札前に掲げられた看板に、思わず立ち止まる客も(2020年6月24日、遠藤綾乃撮影)「上司の話は聞きたくない」―― これは一体、何なのでしょう。 田町駅といえば森永製菓(港区芝)や三菱自動車工業(同区芝浦)、日本電気(NEC、同区芝)など名だたる老舗企業が本社を構える渋いオフィス街。労働基準監督署や各国の大使館もあり、ビジネスマン風の男女が多数行き交う駅前です。 そこに来てあたかも勤め人たちの思いを代弁するかのような看板があったものだから、ついつい足を止めてしまいました。よく見るといくつも並べられた商品に「メロンパン」や「ラスク」の文字も。どうやらスイーツの期間限定販売店のようです。 実はある商品の名前でした 売店の女性スタッフに思い切って看板の意味を訪ねてみたところ、「上司の話は聞きたくない」はメロンパンの商品名ということが判明。そのほかにも 「死んでも地獄におちない」 「残業でござる」 「いざ出陣」 「反抗期」 など、メロンパンらしからぬ名前を冠した商品の数々。 それにしても、なぜこのような名前を付けることにしたのか。今度はそちらの疑問が気になってきます。 男性のリピーターも増加中男性のリピーターも増加中 メロンパン「上司の話は聞きたくない」などを販売しているのはエイト(さいたま市)。2003(平成15)年にキッチンカーでの販売をスタートし、現在は東京など首都圏の駅構内や百貨店に期間限定ショップを展開しているそう。 ホイップクリームがたっぷり挟まった、シュークリームのようなメロンパン(2020年6月24日、遠藤綾乃撮影) 同社代表の阪田紫帆里(さかた しほり)さんによると、こうしたネーミングの商品を売り始めたのは2018年。名づけを任された女性社員が「中年男性の願望などを想像して」思いつくままに案を出していったといいます。 ちなみに代表作ともいえる「上司の話は聞きたくない」は、シリーズ10作の中で最もシンプルなプレーン味。「上司の話もメロンパンも、シンプルな方がいい」という謎かけのような意味合いが込められているのだとか。 奇抜な名前とは裏腹に、ふわふわの大きなメロンパンの間にはホイップクリームがたっぷり挟まっていて、思いきり甘いけれど後味はさわやか。 1日1000個単位で売り上げる日もあるという人気ぶりで、リピーター客が多いのも特徴。とりわけ男性客の姿が目立つのは、味はもちろん商品名につい共感してしまう効果もあるようです。 6月24日(木)の田町駅では、クールビズ姿の会社員風の中年男性が売り場前に足を止めて商品をのぞき込んでいき、また別の30代くらいの男性は「ネーミングが変わってますねー。お土産に買っていくことにしました」と話していました。 商品名が会話のきっかけに商品名が会話のきっかけに ちなみに今回、東京でも屈指のオフィス街にて「上司の話は聞きたくない」という看板を掲げたのはあくまでも「たまたま」で、渋谷などの繁華街でも出店は行なっているそうです。 値段は、「上司の話は~」が540円(税込み)、カスタードとホイップのWクリーム「死んでも地獄におちない」は648円。 ほかにも、つぶあん入りの「いざ出陣」(648円)や削りチョコのかかった「残業でござる」(648円)など。 メロンパンの売店の全景。夜遅くに通ったときも、帰宅途中のビジネスマンらで賑わっていた(2020年6月24日、遠藤綾乃撮影) JR田町駅での出店は6月30日(火)まで。その後の出店情報はツイッターのアカウントで随時発信していくとのことです。 「商品の名前がコミュニケーションのツールになったりもします。ちょっと笑えて、味もおいしい。私たちのメロンパンが、皆さんがハッピーを感じるきっかけになれたら」と阪田さん。 家族と食べるスイーツとしてはもちろん、気心の知れた相手なら仕事の取引先への手土産にも――? あの会社の常務や専務との間に果たして笑いは生まれるのか、ビジネスマンの皆さん、思い切って試してみていただけないでしょうか。
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