気鋭デザイナーと伝統職人が出会うとどうなる? 「東京の手仕事」を進化させる魅惑の化学反応とは
東京に伝わるさまざまな伝統工芸品に、新たな魅力を付加した商品の開発を支援する「東京手仕事」プロジェクト。伝統工芸の職人とデザイナーによる異色のコラボレーションから、斬新で魅力的な商品がいくつも生み出されています。現代の暮らしに溶け込むデザインと用途 今や国内大手から外資系まで数々の企業が立地する巨大都市へと発展した東京ですが、200~400年ほど前、まだ江戸と呼ばれていた時代から脈々と受け継がれている工芸品や職人の技術は、今も地域に残されています。 職人の高齢化や後継不足といった問題も抱えるなか、貴重な伝統技術を守ろうと職人を支援する施策を展開している東京都中小企業振興公社(千代田区神田佐久間町)。同公社が2015年度から行っているのが「東京手仕事」プロジェクトです。 都内の各百貨店で開かれている展示販売「東京手仕事展」の売り場(2020年3月25日、遠藤綾乃撮影) 公社は毎年度、都や国、都内の市区町村が認定する伝統工芸品の作り手を「職人枠」として、プロダクトデザインの実績などがある経験者を「デザイナー枠」としてそれぞれ募集。作り手が持つ技術とデザイナーのアイデアをマッチングさせることで現代のライフスタイルに合った新たな商品を生み出すサポートを行っています。 またデザイナーによらず、自ら商品企画とデザイン・製作を行う職人も支援の対象。商品を最終的に外部審査員が選考し、「普及促進商品」と認定しています。 審査の基準は、 1.新たな販路拡大意欲 2.商品特性に応じた規模での継続的な生産の可能性 3.販路開拓に向けた公社による支援の必要性 認定された商品は、大型イベントへの出展や都内百貨店などでの展示販売などを通して消費者にアピールしています。 「日用品」として受け入れられるために「日用品」として受け入れられるために 地域に根差し、伝統技術を伝えるだけでなく地場産業として地域経済の発展に寄与してきた東京の伝統工芸品。「江戸切子」や「東京銀器」など、2020年3月現在41品目が東京都指定の伝統工芸品とされています。 それらを伝統の姿のまま重んじ保存していく意義がある一方で、現代の生活様式や消費ニーズに合わせた形に「進化」させ、人々の日常に再び根付かせていくことも重要であると、公社は考えます。 同事業の担当職員いわく、 「うやうやしく扱われる装飾品ではなく、あくまで『日用品』として、いかに多くの人に手に取ってもらえる商品を作るかを考えることは、伝統工芸品や職人の仕事を今後も持続させていくうえで欠かせない視点です。現代のマーケットに合わせた商品を開発し、若い世代にも親しんでもらいたい」。 東京手仕事プロジェクトの支援商品のひとつ「手編みジュエリーペンダント」(2020年3月25日、遠藤綾乃撮影) 同プロジェクトの支援商品や、同じ職人たちが作る関連商品を展示販売する「東京手仕事展」は、大丸東京店(千代田区丸の内)9階で2020年3月31日(火)まで開催中。 都指定の伝統工芸品「江戸木目込(きめこみ)人形」の技術を生かし絹の生地で葛飾北斎の富嶽三十六景を表現したマグネットや、「江戸木(もく)彫刻」の熟練彫刻師が彫り上げた美しい曲線を描くヒノキの香台など、懐かしく日本らしい情緒のなかに洗練されたセンスも感じさせるモダンな品々が並びます。 2020年度も新たな支援商品の選定や各種イベント・百貨店への出品を計画中とのこと。長い歴史を持つ伝統工芸の品を日常に取り入れてみることは、日本の文化史や当時の人々の暮らし向きに思いをはせる機会になるかもしれません。
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