税理士と司法書士はどう違う?どっちが難しい?ダブルライセンスにメリットはある?

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税理士と司法書士、それぞれの業務内容の違いや難易度、ダブルライセンスで得られるメリットについて解説しています。どちらの資格を取得するにしても約3,000時間、勉強に充てる必要があり、税理士の合格率は例年約3〜5%、司法書士はおおよそ15〜20%と低めで推移しています。

 国家資格である税理士と司法書士は、将来的には独立して開業も可能であることから、人気のある職業です。とはいえ、難易度が高い資格であるため、付け焼き刃の知識で合格は難しく、長期間の勉強と試験対策は必要不可欠です。

 本記事では、業務内容の違いから試験内容、難易度について詳しく解説していきます。税理士と司法書士のダブルライセンスで得られるメリットについても説明しますので、これから資格取得を目指そうと考えている人はぜひ参考にしてください。

税理士と司法書士の違いとは?

 税理士と司法書士の違いを端的に述べると、税理士は「税に関する専門家」であり、司法書士は「登記に関する専門家」です。

 税理士は、相続制申告納付書や確定申告書をはじめ、「税務署」へ提出する書類作成を担当します。一方、司法書士は主に不動産や商業の登記など「法務局」へ提出する書類の作成代行を担当します。

 また、それぞれに独占業務があり、税理士は「税務相談、税務代理、税務書類の作成」、司法書士は「法務局や裁判所、検察庁などへ提出する書類の作成」がこれにあたります。それでは、詳しい業務内容を見ていきましょう。

税理士ができること

税理士の独占業務・税務相談
・税務代理
・税務書類の作成
具体的な業務内容・生前贈与の方法
・相続財産の評価
・相続税の申告
・準確定申告
・相続税の更正請求
・事業承継決算書作成などの会計業務
・資金調達・収益向上・事業承継に関するアドバイス

 税理士には、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の三つの独占業務があります。具体的には、法人税や所得税、相続税などの申告を納税者の代わりに行ったり、確定申告時期に税務署窓口で納税についての相談を受けたりします。さらに、決算書作成などの会計業務や資金調達、収益向上、M&A、事業承継などのアドバイス・支援も税理士の重要な仕事です。

司法書士ができること

司法書士の独占業務・登記・供託に関する手続の代理
・法務局に提出する書類の作成
・法務局長に対する登記・供託に関する審査請求の手続代理
・裁判所や検察庁に提出する書類作成
・作成した書類の法務局・裁判所への提出代行
具体的な業務内容・不動産登記
・商業登記
・書類作成
・企業法務
・相続・成年後見業務
・訴訟代理・支援

 司法書士の代表的な業務内容は、不動産登記や商業登記、債権譲渡登記といった、登記に関する手続き代理です。こうした独占業務にくわえて、高齢化社会の進展に伴い、相続・成年後見業務においても活躍の場が広がっています。さらには、司法書士試験に合格後、特別研究を受講し、司法書士会の認定考査を受けると「認定司法書士」になることができます。すると、弁護士と同じように簡易裁判所で訴訟代理業務を請け負えるようにもなります。

税理士と司法書士の難易度は?どちらが難しい?

 税理士と司法書士の業務内容を説明してきました。では、実際に難易度の違いはどの程度なのでしょうか。

司法書士の試験はどんな内容?

 試験は午前と午後、一日がかりで行われます。午前中の試験科目は、憲法(3問)、民法(20問)、刑法(3問)、商法(9問)の4科目ですべて択一式となっています。司法書士の業務に関係が深いことから、一番問題数の多い民法と次に問題数の多い商法については、合格を勝ち取るうえでポイントとなるでしょう。憲法および刑法の問題については例年、難易度は低めです。

 午後の試験科目は、民事訴訟法(5問)、民事執行法(1問)、民事保全法(1問)、司法書士法(1問)、供託法(3問)、不動産登記法(16問)、商業登記法(8問)の7科目で、問題形式は択一式です。このうち、不動産登記法(1問)と商業登記法(1問)については記述式の問題もあります。記述式では、添付の契約書または登記事項証明書などを判読し、答案用紙に登記申請書を作成していきます。

 2022年8月に法務省から発表された択一式問題の基準点は、午前の部が105満点中81点(35問中、正解が27問)、午後の部が105満点中75点(35問中正解が25問)でした。しかし、この合格基準点は毎年同一ではなく、受験者の得点状況に応じ変動します。例えば、比較的問題が容易に解答できる内容で、受験者全体の得点が高いとおのずと基準点も高くなります。直近7年分の基準点の推移は以下のとおりです。

年度午前の部(択一式)午後の部(択一式)午後の部(記述式)
2015年90点72点36.5点
2016年75点72点30.5点
2017年75点72点34.0点
2018年78点72点37.0点
2019年75点66点32.5点
2020年75点72点32点
2021年81点66点34.0点

司法書士試験の合格率

試験年度合格率
2012年2.85%
2013年2.91%
2014年3.09%
2015年3.25%
2016年3.94%
2017年4.07%
2018年4.31%
2019年4.39%
2020年5.17%
2021年5.14%

 過去10年間の合格率を見てみると、約3〜5%で推移しているのがわかります。司法書士試験を受けるための資格は特に必要ありませんが、合格率の低さを見ると、文系の国家資格のなかでは最難関と言えます。

 司法書士試験の採点方法は、何点以上で合格といった「絶対評価」ではなく「相対評価」です。そのため、比較的簡単な問題が多く出題された場合、基準点が8割以上など、高くなる傾向にあります。

 また、暗記すれば解ける択一式問題だけではなく、深く理解することが求められる記述問題があることも合格が難しい理由のひとつに挙げられます。

司法書士試験に合格するまでの勉強時間

 司法書士試験に合格するために必要な勉強時間は約3,000時間ですが、個人差があるため、あくまでも目安として考えておきましょう。社会人として働きつつ、勉強時間を確保するのは難儀ですが、科目ごとの対策を考えておくと効率的に勉強できます。

  まず、司法書士試験の四つの主要科目には民法、不動産登記法、商業登記法、商法があります。なかでも、民法は全科目のなかで重要度が高いため、一番時間をかけて取り組むべき基礎科目です。商法や不動産登記法とも関連した内容がでてくることから、最初に民法を習得しておくのがベターです。刑法と憲法については、過去問を中心に勉強するのがおすすめです。

 民事訴訟に関連した科目である民事保全法と民事執行法、民事訴訟法については、細かな手続きに関する問題が出てくるため、まずは全体像を把握したうえで、過去問で知識を増やしていきましょう。供託法は、過去問を中心にさまざまな頻出テーマに慣れておくと得点が容易になります。最後の科目である司法書士法は、他の科目との関連性は低いですが、条文通りに出題されるため、一通りきちんと対策しておくと得点につながります。

税理士の試験はどんな内容?

 税理士の試験科目は合計11科目で、会計科目の簿記論と財務初評論は必須科目です。税法の9科目(所得税法、消費税法、法人税法、相続税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税)のうち、3科目を選択しますが、法人税法と所得税法については、どちらか必ず1科目を選択することが必須です。試験日時は、それぞれの科目によって異なります。

 国税庁のホームページによると、各科目満点の60%が税理士試験の合格基準点です。会計学の2科目と、税法に属する3科目を合わせた計5科目に達すると合格者となります。

税理士試験の合格率

試験年度合格率
2013年18.4%
2014年16.8%
2015年18.1%
2016年15.5%
2017年20.1%
2018年15.3%
2019年18.1%
2020年20.3%
2021年18.8%
2022年19.5%

 2013年度から2022年度までの合格率を見てみると、多少のばらつきはあるものの、おおよそ15〜20%で推移しています。税理士試験の合格ラインとされる点数は60点と記載されていますが、相対評価で行われているため、年度によって合格の最低点数が30点台の科目もあります。

 こうしたことから、税理士試験に合格するためには、必ずしも高得点をとる必要はなく、合格ラインギリギリの点数であっても良いと言えます。適切な時間配分と比較的容易な設問に対してミスをしないように注意しましょう。

税理士試験に合格するまでの勉強時間

 税理士資格取得までにかかると想定される勉強時間は、トータルでおおよそ3,000時間です。仕事をしながら資格取得を目指す場合、勉強に割ける時間は限られてしまうため、3〜5年程度が目安です。試験科目ごとに具体的な平均勉強時間を見ていきましょう。まず、必須科目である「簿記論」「財務諸表論」ではそれぞれ約450時間、選択必須科目の「所得税法」「法人税法」がそれぞれ約600時間です。

 次に、選択科目の「相続税法」は約450時間、「消費税法」は約300時間、「固定資産税」250時間、「住民税」と「事業税」はそれぞれ約200時間、「国税徴収法」と「酒税法」はそれぞれ約150時間が目安となっています。ただし、現在の仕事で税務に関わっている人とまったくの初学者の場合では、合格ラインに届くまでの勉強時間は異なってきます。

 一般的に、税理士試験に合格するまでの道のりは長く、難易度は高めではありますが、一度合格した科目については、次の受験が免除される「科目合格制度」が採用されています。そのため、まずは自分が理解しやすい科目に狙いを定めて勉強を始めるのもおすすめです。

税理士試験と司法書士試験の難易度はほぼ同じだが、やや司法書士試験が難しい

 受験資格が必要ない司法書士に対して、税理士試験を受験するためには資格や職歴、学職といった要件を満たす必要があります。しかし、税理士試験は主要な試験科目が5科目であること、一度合格した科目は受験が免除されるため、他の科目に専念できる点が多少有利であると考えられます。

 実際のところ、過去10年の合格率の推移を見ても税理士試験のほうが司法書士より高くなっています。こうしたことを勘案すると、税理士試験と司法書士試験に臨むための勉強時間はともに3,000時間程度、難易度もほぼ同じではありますが、司法書士試験の方がやや難易度が高いと言えます。ただし、単純に合格難易度だけで試験選択をするのではなく、自分が将来活躍したい場をしっかりと考慮したうえで決めて、合格を目指すのが良いでしょう。

税理士と司法書士 ダブルライセンスのメリットは?

 どのような資格であっても、多くの資格を持っている方が強みになるのと同様に、税理士と司法書士資格をダブルで取得していると、さまざまなメリットがあります。特に、不動産業界においては、それが顕著です。例えば、不動産物件の売買時には、所有移転登記が必須であるとともに、支払うべき税金が発生するため、ダブルライセンス者が重宝されます

 相続においても、税理士が主にサポートする相続税申告と、司法書士が行う相続登記、両方の業務を自分一人で請け負えるようになります。こうしたメリットがある一方で、税理士と司法書士の試験は出題範囲が異なり、合格への道のりは一筋縄ではいきません。まずは、自分が活躍したい業界において、ダブルライセンスが有利に働くのかについて調べたうえで、将来を見据えて計画性のある勉強をすることをおすすめします。

まとめ

 税理士と司法書士はどちらも難易度の高い国家資格で、税理士は税に関する専門家、司法書士は登記に関する専門家であるという違いがあります。業務内容は異なっていても、試験合格に向けて勉強する時間は、それぞれトータルでおおよそ3,000時間が必要とされています。

 合格率については、税理士が例年3〜5%とかなり低い水準で推移していて、司法書士は約15〜20%とこちらも難易度が高いと言えます。税理士と司法書士をダブルで資格取得した場合のメリットは、特に不動産業界において重宝される傾向にあります。

両方の資格を取得するのか、それともひとつに絞って資格取得を目指すのかについては、自分が描く未来予想図にのっとって決めるのがおすすめです。難易度の高さだけにとらわれることなく、資格取得を目指してください。

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