イベント後には入団希望者も 観る者の心を揺さぶる「新宿エイサーまつり」の魅力

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イベント後には入団希望者も 観る者の心を揺さぶる「新宿エイサーまつり」の魅力

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アーバンライフ東京編集部

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新宿の「夏の風物詩」ともいわれる「新宿エイサーまつり」は、1000人をこえる演者が沖縄の伝統芸能を披露するイベント。その熱気と魅力は、感動のあまり「エイサー団体に入りたい」という人も出てくるほどだといいます。

「自分もあんな風になりたい!」と思って

 毎年7月の最終土曜日に新宿駅付近で沖縄の伝統芸能を披露する「新宿エイサーまつり」は、2017年には25団体1100人の演者が出演し、105万人もの観客が集まるなど、新宿の夏を盛大に盛り上げる恒例イベントです。出演者は首都圏で活動するエイサー団体が中心。魂の込もった演舞に心を動かされ、イベント後に入団を希望する人も絶えないといいます。

第15回新宿エイサーまつりに出演する「昇龍祭太鼓」のメンバー(画像:昇龍祭太鼓)



「新宿エイサーまつりで見た演舞があまりにかっこよくて、『自分もあんな風になりたい!』と思ったのです」

 こう話すのは、東京都杉並区を拠点に活動するエイサー団体「琉球舞団 昇龍祭太鼓(しょうりゅうまつりだいこ、以下、昇龍祭太鼓)」で太鼓歴3年になる、沖縄出身の伊志嶺(いしみね)利佳さん。東京で就職したばかりの頃に、新宿エイサーまつりで同団体の演舞に出会い、心を奪われたといいます。

「女性が太鼓を抱えて踊るのは体力が要りますし、細かい部分の表現までしっかり練習しないといけません。でも、仲間のみんなと音がそろったときはとても気持ちいいし、私たちの演舞で多くの人に沖縄の魅力を知ってもらえるのが嬉しいです」(伊志嶺さん)

新宿エイサーまつりでは、新宿周辺の道路やステージなど、 各所で演舞が披露される(画像:新宿エイサーまつり実行委員会)

 もともと、エイサーは沖縄のお盆に行われる伝統行事で、「先祖をお送りする日」とされる旧暦の7月15日に、地域の青年会が旗頭(はたがしら)、太鼓、小鼓(パーランクー)、手踊り、三線(さんしん)などの隊列をなして踊り歩くものです。
 
 戦後には、沖縄各地のエイサー団体が競い合う「全島エイサーコンクール」も開かれるようになり、沖縄以外の全国各地でもエイサー団体が結成されていきました。近年では伝統的エイサーを基礎に、多彩なパフォーマンスや音楽などを取り入れたエンターテイメントとして上演を行う「創作エイサー」も生まれ、1年を通して全国各地の団体によって上演されています。伊志嶺さんが所属する「昇龍祭太鼓」は、創作エイサーを行う代表的な団体のひとつです。

新宿エイサーまつりに出演する、「昇龍祭太鼓」代表の水野順一郎さん(画像:昇龍祭太鼓)

 一方、新宿の独自イベントとして定着している新宿エイサーまつりは2001(平成13)年、個人の出資で沖縄から招かれた団体が新宿でエイサーを披露したことに始まります。かねてから「新宿でメインとなる祭りを作りたい」という思いを抱いていた新宿の商店会関係者がエイサーを見て、これを新宿独自のイベントにすることで意見が一致。翌2002(平成14)年から毎年、新宿エイサーまつりが開催されることになりました。

「昇龍祭太鼓」代表の水野順一郎さんは、第1回のイベントに出演する団体を集めるため奔走した、新宿エイサーまつりの立役者のひとりです。近年は同団体を率いて新宿エイサーまつりに毎年参加し、イベントを盛り上げています。

「数ある首都圏のエイサーイベントのなかでも観客数がもっとも多く、東京でも有数の大規模な祭りに成長しました。私たちにとって重要な舞台のひとつです。毎年、新宿エイサーまつりの後は、入団希望者からの問い合わせが増えるんですよ」と話します。

観客と演者で心が通い合う「距離の近さ」

 観る者の心を揺さぶり、「自分もやってみたい」とまで思わせるエイサーの魅力とは何なのでしょうか。水野さんは次のように話します。

「新宿エイサーまつりは特に、演者と観客の距離がとても近いのです。20~30人がいっせいに打つ太鼓の振動や一糸乱れぬ動きを間近に体験すれば、子供から大人まで誰もが夢中になってしまうでしょう。もちろん、私たちもエイサーの伝統を大切にしながら、あっと驚くような仕掛けや発想を演出に取り入れて、お客様に喜んでもらえる演舞を心がけています。感動がきっかけで入ってきてくれたからこそ、メンバーには『次はあなたがお客さんを感動させる番だよ』と伝えています」(水野さん)

 伊志嶺さんと同じく、新宿エイサーまつりがきっかけで入団した小池直美さんは、「新宿エイサーまつりでは、演じている私たちもお客さんの反応がよく見えるんです。涙を流して感動して下さっている方がいると、逆に私のほうがもらい泣きしそうになることも(笑)」とも。

 たまたま友人と飲みに行った時に見た新宿エイサーまつりがきっかけで入団したという小島守央さんは、沖縄の出身ではなくエイサーも初心者でしたが、7年の経験を積んでレギュラーメンバーとして活躍中。入団後に知り合った団員の女性と結婚したといいます。
 
「エイサーと出会って、人生が変わりました。仕事以外に、ひとつの目標に向かって支え合う仲間がいることが、とても貴重だなと思っています」(小島さん)

新宿エイサーがきっかけで「昇龍祭太鼓」に入団した伊志嶺さん、小池さん、小島さん(左から。画像:昇龍祭太鼓)

 2018年の第17回新宿エイサーまつりは、台風接近による悪天候のなか、7月28日に行われました。この新宿エイサーまつり以外にも、「フェスタまちだ2018」(2018年9月開催)、「浅草国際通りビートフェスティバル」(例年9月開催)、「沖縄めんそーれフェスタ」(例年5月開催)、など、東京各地のさまざまなイベントでエイサーを見ることができます。もし演舞に心を動かされたら、エイサー団体への興味も高まるかも知れません。

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