アンティークな時間の流れ「カフェ・ド・ルトン」|老舗レトロ喫茶の名物探訪(9)

2019年1月10日

お出かけ
ULM編集部

ビルが林立する銀座の商業地区。そのせわしない時間と人の流れに逆らうかのごとく、静かにゆっくりと時を刻む老舗レトロ喫茶「カフェ・ド・ルトン」があります。その名物は、アール・ヌーボーのアンティークに統一された瀟洒な大人空間と、静謐な「時間の流れ」といえます。


創業44年、銀座の隠れ家的老舗喫茶

 銀座5丁目で次の仕事までの空き時間を過ごす喫茶店を探そうとした矢先。図らずも「カフェ・ド・ルトン」の看板が目に入りました。場所はビルの地下で通りから店は見えず、大通りからも外れたこの界隈に老舗レトロ喫茶などもはやないだろう。そう思い一旦通り過ぎたものの、思い直してビルの地下へ。しかし、店に入った瞬間、あっと驚くほど瀟洒(しょうしゃ)でレトロ喫茶らしい空間が広がっていました。

「カフェ・ド・ルトン」の店内。大きな古時計が存在感を放つ(2018年11月28日、宮崎佳代子撮影)

 客席の隅にありながらひときわ強い存在感を放つ大時計は、ビルが林立する商業地区の忙しない時間と人の流れに逆らうかのごとく、どっしりと構えてゆっくりと時を刻んでいるように感じられました。インテリアはアール・ヌーボーのアンティークで統一されていますが、クラシカルな高級感以上に、家主が古い家で愛着を持って長年大事に使ってきたような温もりをたたえていました。

 カウンターにも小さなアンティーク時計。そのすぐそばに白髭を生やしたダンディーなマスター、井田利光さんが立っていました。

カウンターに置かれたアンティーク時計(右)。左はマスターの井田さん(2018年11月28日、宮崎佳代子撮影)

 ブレンドコーヒーとワッフルを注文した後、井田さんが運んできた水のグラスを一瞥して目が飛び出しそうに。それは、カッティングの深い手彫りの江戸切子。独特の色ガラスがランプの光に照らされ、机の上に青い陰を落とす様子にうっとり。水を飲んだだけで満足して帰ってしまいそうになりました……。

店で水用のグラスに使われている江戸切子(右)。手彫りのもので、持つと不思議なまでに手に馴染む。左はブレンドコーヒー 800円(税込、以下同)(2018年11月28日、宮崎佳代子撮影)

「コーヒーが旨く、いい音楽がかかっていて、いいムード、そして心地いいインテリア。それを44年間ずっと大切にしてきたので、そこをわかってもらえないお客様には口うるさいことを言ったりもする偏屈なマスターなんですよ、私は」

 そう言って一笑する井田さん。パソコンの使用は他に客がいる場合は禁止、大声で話をする団体客を注意することも厭わないとか。「静かに時を過ごしてもらうことをモットーにしているので」と毅然とした表情で話します。

 井田さんが店を開業したのは1979(昭和49)年のこと。創業時から、メニューはほとんど変えていないそうです。食べ物のメニューはワッフルとクレープ、ショコラ(ケーキ)の3種類。昭和40年代、既にクレープを出す店は巷にたくさんありましたが、ワッフルがメニューにあるのは珍しかったそうです。

 注文のワッフル(プレーン)に添えられていたのは、バターとブルーベリージャムのみ。シンプルで素朴な味わいが、昔懐かしく思える優しい味でした。その「懐かしさ」を楽しみに来る常連客も少なくないそうです。

焼きたてのプレーンワッフル 600円(2018年11月28日、宮崎佳代子撮影)

 深入り豆をハンドドリップで淹れたブレンドコーヒーは、香り高さとまろやかなコク、後味のよい苦味を楽しめます。口当たりの良い、上質のカップが、優雅な気分を演出してくれます。アイスコーヒーのみ、氷を入れた時に味が薄まることを考慮してネルドリップで淹れるそうです。

古時計と店名が意味する、マスターの想い


この記事の画像をまとめて見る(6枚)

画像ギャラリー

/wp-content/uploads/2019/01/190109_retoro9_01-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/01/190109_retoro9_02-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/01/190109_retoro9_03-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/01/190109_retoro9_04-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/01/190109_retoro9_05-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/01/190109_retoro9_06-150x150.jpg

New Article

新着記事