たまごサンドと大正古民家「カヤバ珈琲」|老舗レトロ喫茶の名物探訪(10)

2019年3月31日

お出かけ
ULM編集部

1938(昭和13)年に2階建ての民家の1階で開業したカヤバ珈琲店。地元の人々や谷中散策の客などから親しまれ、町のランドマーク的存在でした。2006(平成18)年に閉店するも、多くの人たちの要望によって復活。古民家喫茶として人々の憩いの場となっています。


下町、谷中のランドマークとして親しまれるも閉店

 根津駅から緩やかな坂道を歩くこと10分。通り沿いには厳かな佇まいの神社や菓子司、工芸品店などが点在し、昭和の面影を残す下町風情が漂います。そのランドマークのごとく、交差点の角に佇む昔ながらの町家。そこがカヤバ珈琲店でした。

大正時代に建てられた古民家、カヤバ珈琲店の外観(2019年3月8日、宮崎佳代子撮影)

 1916(大正5)年の建築で、梁(はり)が屋根下の外側に通された「出桁(だしげた)造り」を今に伝える古民家。江戸期には寛永寺上野山内から谷中に入る場所、現在は谷中への東の入り口に当たります。

 建物の所有者であった榧場(かやば)伊之助さんが、ミルクホール、かき氷・あんみつ店などを経て1938年にカヤバ珈琲店を開業しました。店を切り盛りしたのは、妻のキミさんと養女の幸子さん。地元の人々や谷中散策者の憩いの場として、また、東京芸大関係者などの芸術談義の場として親しまれてきたそうです。

 しかし、キミさんが2006年秋に他界。時代はスターバックスなどのシアトル系カフェが市場を席巻し、喫茶店が軒並み姿を消し始めている頃でした。カヤバ珈琲店もキミさんの逝去に伴い、同年に店を閉店。シャッターが下ろされ、建物は空家となりました。

希少な存在の保護を願う人々に、NPO法人が建物を借り受け

 取り壊しも検討されるなかで、谷中のシンボル的存在としてこの店を愛してきた町の人々や常連、親族が、その存続と店の再開を切望。そこで、NPO法人と地元のアートギャラリーが復活に向けて尽力すべく、建物を借り受け、建築家の永山祐子さん設計の元に改修を行いました。そうして、2009(平成21)年9月、カヤバ珈琲店は3年間の眠りから目覚めたのです。

 大正町家らしい柱梁(ちゅうりょう)や外観はそのまま残し、看板や店内の椅子、カウンターも昔のまま。メニューも一部引き継がれました。

 1階はテーブル沿いに窓が一面に広がっていて開放感があり、木の温もりとレンガ造りのカウンターが心地よいレトロ空間を演出しています。テーブル席に腰を下ろすと、椅子の座面の低さに「昭和」を感じさせられます。

 椅子のなかには、座面のカバーが綻びているものも。しかし、それが返って懐かしいようにも思えます。カウンターは使い勝手を考慮して、レンガ3個分ほどかさ上げしたそうです。かつては榧場さん一家の居住スペースだった2階の和室も喫茶使用となっていて、古民家ならではのほっと落ち着く空間です。

 この建物と空間自体が希少で、一番の名物といえるでしょう。

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画像ギャラリー

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