1年延期になったけど……「東京オリパラ」開催が東京・湾岸エリアにもたらした十分過ぎる「功績」

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1年延期になったけど……「東京オリパラ」開催が東京・湾岸エリアにもたらした十分過ぎる「功績」

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若杉優貴

都市商業研究所

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東京の臨海副都心を中心として湾岸エリアで今、大型商業施設の新規オープンやリニューアルが相次いでいます。気になる施設や見どころ、特徴を、都市商業研究所の若杉優貴が一気にご紹介します。

2020年は新施設ラッシュ

 東京の臨海副都心を中心とした湾岸地域では、2020年春から秋にかけて大型商業施設の新規開業やリニューアルが相次いでいます。

新施設が続々誕生する湾岸地域。ウォーターズ竹芝(画像:れめさん、若杉優貴)



 新型コロナウイルス感染拡大の影響でなかなか東京都外に行きづらい時期が続きましたが、今回はコロナ禍のなか湾岸地域に新たに生まれた四つの大型商業施設を訪れ、旅行気分を味わいつつそれぞれの「特徴」を探っていきましょう。

海が一望できる「アトレ」

 まず最初は東京の海の玄関・竹芝。その海が見渡せる一帯に6月17日(水)から9月にかけて順次オープンしたのが「ウォーターズ竹芝(WATERS takeshiba)/アトレ竹芝(atre takeshiba)」です。

「アトレ」といえばJR東日本グループの駅併設型ショッピングセンターとして知られますが、ここはJRの駅ではなく、ゆりかもめの竹芝駅前。ちなみにJR浜松町駅からも徒歩圏となります。

ウォーターズ竹芝/アトレ竹芝。天気が良ければ海を挟んで東京スカイツリーを望むこともできる(画像:れめさん、若杉優貴)

 ウォーターズ竹芝は芝弥生会館・四季劇場などの跡地を再開発したもので、敷地面積は約2万3000平方メートル、延床面積は約10万2600平方メートル。

 タワー棟・シアター棟・駐車場棟の3棟を中心に構成され、商業施設「アトレ」を核に、JR東日本グループとマリオットグループが運営するラグジュアリーホテル「メズム東京、オートグラフコレクション」や劇団四季専用劇場「JR東日本アートセンター四季劇場[春][秋]」「自由劇場」などが進出しています。

食事もエンタメも楽しめる

 そのうち、タワー棟・シアター棟の下層階を占める「アトレ」の館内には、イオングループが運営するフランス・パリ発祥のオーガニック食品スーパー「Bio C’ Bon(ビオセボン)」、サードウェーブ系ハンバーガーカフェ「the 3rd Burger」、ワールドリカーインポーターズ(世界のビール博物館)のステーキ&クラフトビール新業態「ブラウアターフェル」などが出店。

 また、シアター棟には、劇団「ユースシアタージャパン」、大自然をテーマとしたキッズエンターテイメント施設「CULAFUL(キャラフル)」、コーエーテクモウェーブによる酒やドリンクを楽しみながらデジタルクレー射撃などを行うことができる施設「Digital Park LUXY(デジタル パーク ラグジィ)」など、個性的なテナントが数多く出店します。

 さて、ウォーターズ竹芝/アトレ竹芝の一番の特徴は「桟橋(さんばし)」が併設されていること。この桟橋には浅草や両国、お台場、豊洲を結ぶ定期船が就航しており、都内では珍しい「船で直接アクセスできる商業施設」となります。

ウォーターズ竹芝に併設された桟橋。船に乗らなくても、桟橋近くに設置されたテラスで海風に当たりながらカフェタイムを楽しむこともできる(画像:れめさん、若杉優貴)



 竹芝から両国までは約1時間ほど、運賃は大人1850円(「水上バス 浅草・お台場クルーズ」を利用の場合)。さらに、将来的にはここから羽田空港を結ぶアクセス航路も整備される計画(実証実験中)で、「飛行機に乗る前にちょっと竹芝で観劇と買い物を」という楽しみ方もできそうです。

有明ガーデンはイオンや温浴施設も

 続いて紹介するのは、ゆりかもめ有明駅前に6月17日(水)に開業した住友不動産の複合商業施設「有明ガーデン」です。

 有明ガーデンは有明駅前・東京臨海広域防災公園近くの平面駐車場を開発したもの。

 開発面積は10万7000平方メートルと広大で、商業ゾーン「住友不動産ショッピングシティ有明ガーデン」を核に、劇場・ライブホール「住友不動産東京シアターガーデン」、劇場「劇団四季専用劇場」(仮称、2021年開業)、温浴施設「泉天空の湯 有明ガーデン」、タワーマンション「シティタワーズ東京ベイ」、ホテル「住友不動産ヴィラフォンテーヌグランド東京有明」、公園「有明ガーデンパーク」などで構成されています。

商業ゾーンの「住友不動産ショッピングシティ有明ガーデン」。テラスが設置され開放的な雰囲気(画像:若杉優貴)



 そのうち、商業ゾーン「ショッピングシティ有明ガーデン」の店舗面積は約4万平方メートル、売場は1階から5階で、核店舗として大型スーパーの「イオンスタイル有明」が出店。

 そのほか「アーバンリサーチ」「H&M」「ムラサキスポーツ」「ニトリデコホーム」など日常生活に便利な約200店が軒を連ねます。また、この秋には無印良品の旗艦店が新たに開業する予定となっています。

ビッグサイトまで徒歩で行ける立地

 もうひとつの目玉となる8000人規模の大型ライブホール「東京ガーデンシアター」は110度の扇型に配置された客席が特徴。

 開業直後から「Official髭男dism」「King Gnu」「LUNA SEA」「ナオトインティライミ」「田村ゆかり」「小倉唯」「TrySail」など、さまざまな有名アーティストの公演が決まっていましたが、残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大にともない多くが中止・延期となっています。

東京ガーデンシアターの館内イメージ(画像:住友不動産)



 さて、この「有明ガーデン」の1番の特長は、何といっても「東京ビッグサイトまで徒歩圏」ということです。

 有明ガーデンから東京ビッグサイトまで実際に歩いてみると約15分ほど。コミックマーケット(通称コミケ)に行ったことがある人ならば「コスプレ会場の防災公園から見て首都高湾岸線を挟んだ場所にできたのが有明ガーデン」といえば位置関係が分かりやすいかも知れません。

 有明ガーデンの開業によって、コミケの途中に「ちょっとイオンまで歩いて買い物を」「汗をかいたから泉天空の湯でひと風呂浴びてこよう」……など、これまでは考えられなかった行動を取ることも可能になります。防災公園からあまりに近いからといって、うっかりコスプレしたまま店内に入ってしまわない方がよいかもしれません。

期間限定の「江戸前場下町」

 続いてはすっかり観光地として定着した豊洲市場へ。この豊洲市場の向かいには2020年1月に三井不動産がプロデュースする商業施設「江戸前場下町」が開業しています。

 江戸前場下町の店舗面積は約475平方メートルと小規模ですが、館内には寿司店や海鮮料理店、そして包丁店など、いかにも「市場らしい」21店舗が出店。

 営業時間も9時から18時、一部店舗は21時まで営業しているため、豊洲市場内の店舗が閉店したあとでも市場の味を楽しむことができます。

江戸前場下街(画像:若杉優貴)



 そして、江戸前場下町の大きな特徴として挙げられるのが、全店舗が「期間限定」だということ。

 江戸前場下町がある場所には、東京オリンピック・パラリンピック終了後に万葉倶楽部グループによる温浴・宿泊施設を備えた複合商業施設「(仮称)豊洲江戸前市場」が着工される予定で、計画通りに進めば江戸前場下町の営業期間はあと1年弱となります。

 気になる店舗があるならば今のうちに。

ららぽーと豊洲、巨大化し駅直結

 湾岸地域の東の入口になる豊洲にも新たな施設が開業しています。

 豊洲駅前で行われていた大型再開発「豊洲ベイサイドクロス」が完成し、中核施設となる「豊洲ベイサイドクロスタワー」の下層階には隣接する大型商業施設「アーバンドックららぽーと豊洲」が「ららぽーと豊洲3」として増床。ららぽーとの既存棟部分も改装を行い、2020年3月18日(水)から6月1日(月)にかけてリニューアルオープンすることとなりました。

 ららぽーとでは増床に伴いフードコートが拡大されるなど62店の新テナントが出店したほか、ベイサイドクロスタワーの高層階には豊洲最大級となるシティホテル「三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロス」が進出しています。

豊洲の新たなシンボル「豊洲ベイサイドクロスタワー」。写真は完成前に撮影(画像:若杉優貴)



 今回の再開発の大きな特徴となるのが、ららぽーと豊洲・ベイサイドクロスタワーと東京メトロ豊洲駅が「直結」されたこと。

 これに併せて東京メトロ豊洲駅では3月に改札を増設、ホームを拡張するなどのリニューアルが行われており、ららぽーとのみならず豊洲駅自体の利便性も大きく向上することとなりました。

「東京BRT」で湾岸地域が身近に

 2020年に入って湾岸地域でこれだけ多くの商業施設が開業した理由は、言うまでもなく「東京2020オリンピック・パラリンピック」の開催に起因するもの。

 残念ながらオリンピック・パラリンピックは来年に延期されてしまいましたが、それに伴うインフラ整備は大型商業施設の新規出店・リニューアルの大きな後押しとなりました。

 3月には豊洲市場・有明(選手村)と新橋を結ぶ環状2号線の「旧・築地市場」にあたる部分が整備されて通行しやすくなったほか、10月1日には新たに「虎ノ門ヒルズ―新橋―勝どき(勝鬨)―晴海」間に高速バス輸送システム(路線バス)「TOKYO BRT」が1期開業を迎えています。

TOKYO BRT(画像:東京都都市整備局)



 TOKYO BRTは虎ノ門・新橋と臨海副都心を結ぶ快速バス路線で、レインボーカラーに塗装された専用の連接バスと燃料電池バスを中心に用いた高速運行を実施。停留所付近では乗り場(縁石)との隙間ができないようにするため自動制御運転を行うなど、さまざまな最新技術が導入されています。

 10月の1期開業時点ではまだプレ運行であるため、「虎ノ門ヒルズ」「新橋」と、都営大江戸線勝どき駅近くの「勝どきBRT停留所」、トリトンスクエア近くの「晴海BRTターミナル」の4停留所を結ぶ1系統のみ。

 さらに連節バスは1編成のみとなりますが、将来的には豊洲・有明地区方面を結ぶ4系統が運行される予定となっており、先ほど紹介した商業施設「有明ガーデン」1階にもBRTターミナルが設置されています。

 運賃も全線220円均一(1期開業時点)と安く、湾岸地域がますます身近なものになることは間違いありません。

新しい施設を回ってちょっと旅行気分

 TOKYO BRTは当面プレ運行となりますが、運行本数は1日75本(休日63本)とかなりのもの。晴海BRTターミナルからは「ららぽーと豊洲」や「豊洲市場」も徒歩圏となるため、潮風に吹かれながら散歩するのも良いでしょう。

 また、これまで豊洲市場周辺では夕方以降はバスの本数がかなり少なくなっていたため、「豊洲PIT」や「IHIステージアラウンド東京」などでのイベント終了後に「混雑するゆりかもめではなく晴海まで歩いてBRTで新橋・虎ノ門に出る」という手も使うことができます。

 なお「BRT」といっても専用道を走る訳ではないので、ラッシュ時・混雑時などには遅延することもあり得るのでお気を付けを。

 2018年10月に豊洲市場が開場したこともあり、湾岸地域ではこれまで以上に多くの路線バスが運行されるようになりました。

 2020年秋には有明地区を舞台としたアニメシリーズが放送されるなど、ますます人気を集めそうな湾岸地域。

 「りんかい線」や「ゆりかもめ」を使って何度も湾岸地域を訪れたことある人も、新たに開通した道路や交通機関を使って新しい施設を巡り、ちょっとした旅行気分を味わいながら「オリンピック・パラリンピックに向けて生まれ変わりつつある湾岸地域」を実感してみてはどうでしょうか。

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