揚げたてコロッケのおいしさにノックアウト 商店街で「お総菜」を買って帰る楽しさよ再び

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揚げたてコロッケのおいしさにノックアウト 商店街で「お総菜」を買って帰る楽しさよ再び

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増田剛己

散歩ライター

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コロナ禍で遠出がまだまだはばかれるなか、散歩ライターの増田剛己さんは身近な散歩の楽しさを提案しています。キーワードは「お総菜」です。

試行錯誤した散歩の習慣化

 健康のためにウオーキングをしなくちゃと思いながらも、なかなか習慣にできないという人は多いのではないでしょうか。僕(増田剛己。散歩ライター)も以前は歩かなくちゃと思いながらも、家でついゴロゴロして時間を過ごしていました。

 フリーライターという職業柄、自宅で仕事をすることが多かったため、自分なりにスケジュールは組めるのですが、それでも歩くことを習慣化することはできませんでした。でも、あるきっかけで歩くことを日々のルーティンにすることができたのです。

 最初に歩く習慣を身につけるためにしたことは、自転車を友人に譲ることです。自転車があると買い物などに歩いて行こうと思いながらもついつい自転車に乗ってしまうのです。こうすることで、出掛ける場合はすべて徒歩移動に変えたのです。

当初のお供は携帯ラジオと音楽プレーヤー

 さらに携帯ラジオを聞きながら歩くということを始めました。

 1日1時間ほど、好きなラジオ番組を聞きながら歩きました。もともと、家で仕事しながら聞いていたのですが、それを歩きながら聞くことにしたのです。これは大成功で歩く習慣が身に付きました。しかし、程なく好きなラジオ番組が終了してしまいました。その後、他の番組を聞きながら歩きましたが、そのうちやめてしまいました。

コロッケが並ぶ総菜店(画像:増田剛己)



 次はヘッドホンをして、音楽プレーヤーで好きな音楽や落語などを聞きながら歩くということをやりました。

 これはけっこう続きましたが、耳からの音に集中してしまうためでしょうか、自転車や車と接触しそうになって、何度かヒヤッとしました。やはり、周囲の音を遮断して歩くのはよくないことだと思い、やめました。

厚揚げが散歩のモチベーションに

 次にチャレンジしたのは、豆腐を買いに行くことです。

 きっかけは、家で原稿を書いていた時のこと、「と~ふ~♪」というちょっと懐かしいラッパの音でした。表に出てみたら、お豆腐屋さんが自転車で豆腐を売りに来ていたのです。試しにひとつ豆腐を買ってみました。スーパーより値段は少し高いのですが、味はバツグンによかったのです。

 次の日も同じくらいの時間にラッパの音がしないかと待っていたのですが、これが来ないのです。

 数日後、やっとラッパの音が聞こえたので急いで表に出ると、自転車に乗ったお豆腐屋さんがいました。

「ここのところ来なかったですね」と言うと、「ああ、売り切れちゃって」とお豆腐屋さん。自転車でまわるルートでは、わが家のある場所は最後のほうにあるため、売り切れていることもしばしばだそう。だからラッパは聞こえなかったのです。ということは、店は近いのでしょうかと聞けば、わが家からすぐの場所でした。

 後日、お豆腐を買うためにお店まで行ってみました。歩いて3~4分ほどの場所。こんな近くにお豆腐屋さんがあったのかと驚きました。これまで音楽などを聞きながら歩いていたせいでしょうか、近所のお店などがまったく見えていなかったのです。

 僕は豆腐屋さんのある通りを住宅街だと思っていたのですが、よく見れば、ちょっとした商店街でした。昔は魚屋や肉屋などもあったけれど、どこも廃業してしまったそうです。当時残っていたのは八百屋さんと鶏肉屋さん、そしてこのお豆腐屋さんくらいでした

 ある日行くと、ご主人がちょうど厚揚げを揚げていらっしゃいました。

散歩で見つけた厚揚げ(画像:増田剛己)



 それがあまりにもおいしそうだったので、ひとつ買いました。熱々です。急いで家に帰り、生姜醤油で食べてみると、これがおいしいのなんの。初めて揚げたての厚揚げを食べましたが、そのおいしさに感動して、それ以来、厚揚げを買いにいくことが日々のルーティンになりました。

レンチンでさらなる高みへ

 仕事の進み具合によっては、夕方遅く、閉店間際に行くことも。そんなとき、「あまっちゃったから1個おまけしとくね」と2個くれたのです。

 2個もらうとスーパーよりも安いじゃないの……そう思ってまた同じような時間に行くと、厚揚げは売り切れていました。「がんもならあるよ」とご主人。ならばがんもどきをいただきましょう。

 実はそれまでがんもどきを料理して食べたことがなかったので、調理方法を聞きました。「煮てもいいし、焼いてもいいよ。簡単なのは電子レンジでチンして生姜醤油で食べるのかな」というので、電子レンジでチンしてみました。いやぁ、これも実においしい。

電子レンジでチンした厚揚げ(画像:増田剛己)

 しばらくこのお豆腐屋さんに散歩がてら訪れていましたが、残念ながらご主人は病気になり、店を閉めることになりました。程なく店の建物が壊され、さら地になってしまいました。

食材を買うことが散歩のモチベーションに

 これを機会に、僕はあちらこちらを歩きながらお豆腐屋さんを探してみました。すると、家から歩いて30分以内の範囲に2店あり、めでたく日々の散歩コースに加わりました。

都内商店街のイメージ(画像:写真AC)



 このころから、「食材を買いに出掛けること」が散歩の目的になっていきました。スーパーやコンビニなどでその日使う分だけを買うようにすると、毎日外に出掛けなくてはなりません。

 またスーパーやドラッグストアも近所だけではなく、少し遠いところへ出掛けてました。

 同じ系列のスーパーは品ぞろえが似ていますが、初めて行く店だとこれまで見たこともない商品が並んでいます。また値段もそれぞれで、特売の日も違っています。そのため、「今日はあのスーパーに行ってみようか」なんてことになるのです。

 いつもと同じ道ではなく、違う道を行くと新しい発見もあります。商店街などを見つけると、できるだけ端から端まで歩いて往復します。というのも、歩く方向でお店の見え方が違うため、必ず往復するようにしています。

揚げたてのコロッケの吸引力

 あるとき、商店街のお肉屋さんの前を通ると、ちょうど揚げたてのコロッケを店頭のケースに入れているところでした。これはおいしそうです。

 お店の人に「コロッケ、1個でもいいですか」と聞くと、「はい大丈夫ですよ。すぐに食べますか」とのこと。「あ、はい、すぐ食べます」と伝えると、1個だけを包装紙に入れて渡してくれました。すぐに食べられるように1個用の包装紙があるのですね。

散歩で見つけたコロッケ(画像:増田剛己)

「ソースはそこにありますから、お好みでどうぞ」

 なるほど、見れば店頭にソースが置かれていました。その時はソースをかけず、歩きながら熱々のコロッケをいただきました。揚げたては熱いですねぇ。ハフハフといただくと、なんともおいしいのです。

毎日食べて、毎日歩く

 以来、商店街に行ったら必ずコロッケを1個だけ買い、歩きながら食べるということをしました。

 初めて食べるコロッケの場合、ソースをかけるかかけないかは、ひとくち食べてから決めたいものです。それで、携帯用のソース入れを持ち歩くことになりました。というのも、店頭でソースをかけてくれるお店はほとんどないです。

都内商店街のイメージ(画像:写真AC)



 いろいろな商店街でコロッケを食べましたが、どこもおいしいですね。特においしい場合は、再びお店に行って晩御飯用の揚げ物を買ったりしました。

 同じように魚屋さんがあったので、刺し身を買いました。スーパーの刺し身もいいのですが、こういった魚屋さんの刺し身はやはりおいしいですね。

 気がつけば、僕は毎日、食べるものを買いに行くために歩くという日々を送っていました。平均すると1日で6~7kmは毎日歩いています。ご飯は毎日食べるので、当然、毎日散歩をします。

家の近所のお店をのぞいてみよう

 それでは、どの商店街へ行けばいいのでしょうか。テレビなどでよく取り上げられる人気の商店街には、いいお店がそろっています。そのため、人が結構押し寄せていて、「密」が心配です。

 わざわざ電車に乗って出掛けなくても、あなたの家の近くに商店街があるかもしれません。

 以前こんなことがありました。住宅街を歩いていると、いきなりお豆腐屋さんが目の前に現れたのです。

街の豆腐店のイメージ(画像:写真AC)

 厚揚げを買うついでに、お店の歴史を聞けば、昭和の中頃に創業したそう。当時このあたりは飲食店などが立ち並ぶ商店街だったそうで、ほかのお店が閉店し、住宅に建て替わったとのこと。

 住宅街の中にポツンとあるお店は、やっぱり理由があるのだなと思いました。東京の各地にはこんな場所がけっこうあります。家の近所のこんなお店を歩いて探してみるのも楽しいかもしれません。

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