古都・奈良を旅する!写真映えする癒やしの世界遺産「新・南都八景」
奈良は、国内外の旅行客に人気が高い観光地。ユネスコ世界遺産「古都奈良の文化財」は、2023年で登録25周年です。これを記念して「新・南都八景」がこのほど発表され、特に写真で撮ると美しい8つのスポットが制定されました。旅行ジャーナリスト・フォトグラファーのシカマアキさんが、奈良を旅する新たな楽しみ方と合わせて紹介します。 奈良には昔から「南都八景」と呼ばれる美しい風情ある情景があります。その8つは「東大寺の鐘」「春日野の鹿」「猿沢池の月」「三笠山の雪」など。室町時代に名付けられて長年、古都奈良を象徴する景色として親しまれてきました。南都は、奈良がのちの都である平安京から見て南にあったための呼称です。 奈良は四季ごとに美しい。特に世界遺産の社寺とともに撮る魅力にあふれている。写真は唐招提寺金堂(画像:シカマアキ)【その他の画像】>> 2023年12月、ユネスコ世界遺産「古都奈良の文化財」から8つの構成資産(東大寺、興福寺、春日大社、春日山原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡)でおすすめの「写真映え」撮影スポットがオンラインによる一般投票で選定され、奈良市観光協会から「新・南都八景」がこのほど発表されました。 ●【東大寺】意外と知られていない「二月堂の眺め」とは まず、奈良の大仏さんで親しまれている東大寺から選ばれたのは「二月堂の眺め」です。二月堂の名称は、奈良の春を告げる風物詩、1400年近く途切れることなく続く行事「修二会」(しゅにえ、お水取り)が旧暦2月に毎年行われることに由来します。 東大寺二月堂からの眺め。奥に東大寺大仏殿の屋根も見える(画像:シカマアキ) 二月堂は高台にあり、大仏殿、さらに奈良の街並みや山々を望むことができます。24時間出入りでき、早朝から夕方そして夜と、異なる景色が眼下に見られます。 ●【興福寺】若草山から眺めることで新たな光景に出会える 興福寺は、五重塔や中金堂などの建立が710年の平城遷都ごろという古刹。これまで幾度となく焼失と再建を繰り返してきましたが、伽藍は建立当時から同じ場所にあります。新・南都八景に制定された「若草山からの興福寺遠望」は、地上から見る興福寺とまた違う魅力があります。 若草山山頂からは興福寺の五重塔や中金堂などの伽藍を遠くに眺められる(画像:シカマアキ) なお、興福寺の国宝・五重塔では、約120年ぶりの大規模修理が始まりました。2024年秋には塔全体が覆われて見えなくなります。完了予定は2031年ごろなので、今の五重塔が見たければぜひ早めに奈良を訪れましょう。 ●【春日大社】鳥居と奈良の鹿を撮影する絶好のスポットは… 奈良公園および周辺で見られる鹿は、奈良時代に神様が白鹿に乗って来たと伝わり、春日大社の神使(しんし)として手厚く愛護されてきました。今回選ばれた「春日鳥居の前でたたずむ鹿」は、まさに奈良を象徴する光景と言えるでしょう。 春日大社二之鳥居(画像:シカマアキ) 春日大社には、参道の入口に日本三大木造鳥居の1つである「一之鳥居」、その先に「二之鳥居」があります。参道において鹿との遭遇率は高いものの、鳥居と一緒に撮るのはなかなか難しいかもしれません。もしシャッターチャンスがあれば、ぜひ撮ってみてください。 春日大社の参道、石灯籠の間で見かけた鹿(画像:シカマアキ)●【春日山原始林】市街地から近い場所にある石畳の道 春日山原始林は、実は世界遺産。県庁所在地に原始林が今も残るのは、極めてまれとのことです。1100年以上前に狩猟と伐採が禁止されて以降、春日大社の聖域として、ずっと守られてきました。 春日山原始林の入口付近。奥に進むと滝坂の道となる(画像:シカマアキ) 「滝坂の道」は、奈良市の市街地から東にのびる柳生街道の前半部分にあたります。不ぞろいの石畳の坂道には山岳信仰の対象だった石仏群が多く見られるなど、古来より変わらない風景が広がります。地元ではハイキングコースとしても人気があります。 ●【元興寺】レトロな街並みにある世界遺産の寺 ならまち(奈良町)は、元興寺の旧境内を中心とするエリア。江戸時代ごろの建物が細い路地に軒を連ね、近年はおしゃれなカフェやショップなども増えており、奈良のお散歩スポットとして旅行客にも人気があります。 日本最古の瓦が今も使われている元興寺(画像:シカマアキ) 元興寺は、718年に飛鳥の法興寺(飛鳥寺)が平城京に移されたと伝わります。特に、飛鳥時代の古瓦で使用できるものを集め、屋根の瓦として今も使われている「日本最古の屋根瓦」が、新・南都八景として制定されました。境内から色が異なる瓦を見るとわかるため、歴史の壮大さを感じることができます。 ●【薬師寺】「西ノ京」で最も歴史があって奈良を象徴するスポット 一方、薬師寺は、東塔と西塔の2つの三重塔が高く並び立つ姿が有名な世界遺産の寺。この2つの塔を1枚の写真に収めるには、南大門を出た先から撮影します。できれば広角レンズを使いましょう。 東塔(右)と西塔。約1300年前の創建時からある東塔は国宝で、「日本で最も美しい塔」といわれる(画像:シカマアキ) 寺の外にある大池ごしに、春日山などを背景とし、薬師寺を撮る光景も有名です。昔ながらの光景が残り、その雰囲気が随所で体感できるのも奈良の魅力と言えるでしょう。 ●【唐招提寺】8世紀最高傑作の「金堂」を最も美しく撮るには 平城京の西にあたる「西ノ京」と呼ばれるエリアにある世界遺産の1つ、唐招提寺。新・南都八景に選定されたのは「金堂」です。 唐招提寺の参道から見た金堂。759年に戒律を学ぶ人々の修行道場として唐の高僧、鑑真和上が創建した(画像:シカマアキ) 南大門をくぐって参道を歩くと、8世紀の建築で最高傑作と名高い金堂が見えてきます。参道の中ほどが、金堂の全景を撮るのに絶好の場所です。秋には青空そして紅葉とともに撮ると、さらに美しい光景となります。 ●【平城宮跡】今も広大な敷地で撮ってみたい「空」天平みはらし館(無料)から朱雀門など平城宮跡の眺望が楽しめる(画像:シカマアキ) さらに、「平城宮跡の空」も、新・南都八景に選ばれました。今も広大な敷地である平城宮跡は、はるか先まで見渡すことができ、奈良時代当時から再現された朱雀門などを入れて撮るのがポイント。特に、晴れ渡った青空や雲、夕方から夜にかけてのマジックアワーなどは幻想的な景色となります。 ●東京から奈良を旅するには? アクセス方法とおすすめ時期も 東京都心から奈良へ向かうには、新幹線で京都まで行き、在来線に乗り換える方法が最短です。所要時間は、東京~京都へは約2時間10分、在来線に乗り換えて京都~奈良までJRで約45分、近鉄で約50分。奈良に着いてどこへ向かうかで、JRか近鉄どちらを利用するかをあらかじめ決めておきましょう。 また、時間はややかかるものの運賃が安い高速バスだと、バスタ新宿などから奈良駅まで夜行バスがあります。飛行機であれば、羽田=伊丹線を利用し、伊丹空港からリムジンバスで奈良市内へ行くことができます。東京からだと1泊、できれば2泊以上がおすすめ。 興福寺五重塔と猿沢池。池に写り込む五重塔は奈良らしい風景(画像:シカマアキ) 奈良は京都よりも歴史が古く、平城京があった約1300年前からの建物が今も見られるほか、国宝や重要文化財なども数多くあります。春の桜、秋の紅葉のほか、冬はたまに雪が積もり、初夏に咲く蓮など、四季それぞれで美しい光景に出会えます。春秋は観光シーズンでやや混雑し、外国人旅行客も多いです。 「新・南都八景」をはじめとした奈良の人気スポットは多々。カメラを片手に、奈良を旅してみてはいかがでしょうか。 ■東大寺 二月堂 住所:奈良県奈良市雑司町406-1 TEL:0742-22-5511 拝観時間:24時間参拝可能 拝観料:無料 ※大仏殿・法華堂・戒壇堂・東大寺ミュージアムは別途有料です。各拝観時間など最新情報は公式サイトをご確認ください アクセス:JR「奈良駅」もしくは近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より市内循環バス7分「東大寺大仏殿・春日大社前」下車徒歩5分 ■興福寺 住所:奈良県奈良市登大路町48 TEL:0742-22-7755(本坊寺務所) 拝観時間:9:00~17:00(受付16:45まで)※国宝館、東金堂、中金堂 ※国宝館、東金堂、中金堂は有料です。最新情報は公式サイトをご確認ください アクセス:近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より徒歩約5分 JR「奈良駅」より市内循環バス5分「県庁前」下車すぐ ■春日大社 住所:奈良県奈良市春日野町160 TEL:0742-22-7788 拝観時間:参拝場所・時期によって異なる 拝観料:国宝殿や植物園など参拝場所によって異なる アクセス:JR「奈良駅」または近鉄奈良線「近鉄奈良駅」よりバス約13分「春日大社本殿」下車すぐ、または市内循環バス約10分「春日大社表参道」下車徒歩10分 ■春日山原始林 住所:奈良県奈良市春日野町 アクセス:JR「奈良駅」または近鉄奈良線「近鉄奈良駅」よりバスで約13分「春日大社本殿」下車徒歩約10分 ■唐招提寺 住所:奈良県奈良市五条町13-46 TEL:0742-33-7900 拝観時間:8:30~17:00(受付16:30まで) 拝観料:大学生以上1,000円/中高生400円/小学生200円 アクセス:近鉄橿原線「西ノ京駅」より徒歩10分 JR「奈良駅」または近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より奈良県総合医療センター行きバス17分「唐招提寺」下車すぐ ■薬師寺 住所:奈良県奈良市西ノ京町457 TEL:0742-33-6001 拝観時間:8:30~17:00(受付16:30まで) ※拝観料は期間によって異なります。最新情報は公式サイトをご確認ください アクセス:近鉄「西ノ京駅」より徒歩すぐ JR「奈良駅」または近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より奈良県総合医療センター行きバス18分「薬師寺」下車すぐ ■元興寺 住所:奈良県奈良市中院町11 TEL:0742-23-1377 拝観時間:9:00~17:00(受付16:30まで) 拝観料:大学生以上500円/中高生300円/小学生100円 ※特別展開催中など異なる アクセス:JR「奈良駅」より徒歩15分、またはバス「福智院町」停留所より徒歩5分 近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より徒歩20分、またはバス「田中町」停留所より徒歩5分 ■平城宮跡 住所:奈良県奈良市佐紀町 TEL:0742-36-8780(平城宮跡管理センター) 開館時間:施設によって異なる 休館日:施設によって異なる 入館料など:無料 アクセス:近鉄奈良線・橿原線・京都線「大和西大寺駅」よりぐるっとバス「朱雀門ひろば」下車すぐ 近鉄奈良線「近鉄奈良駅」またはJR奈良駅よりぐるっとバスまたは奈良交通バス「朱雀門ひろば」下車すぐ
- 奈良
- 旅行