建て替え迫る五反田「TOCビル」――レトロで唯一無二な「卸売ビル」の魅力に迫る

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建て替え迫る五反田「TOCビル」――レトロで唯一無二な「卸売ビル」の魅力に迫る

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若杉優貴

都市商業研究所

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東京都品川区の大崎広小路駅近くにある卸売店を中核とする複合商業施設「TOCビル」が、建て替え・再開発のため2024年に閉館予定です。昭和レトロな建物やチェーン店のお得な店舗限定品に出会える穴場スポットの歴史と今後について、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。

●五反田のランドマーク「TOC」再開発で閉館へ

 東京都品川区の大崎広小路駅近くにある卸売店を中核とする複合商業施設「TOCビル」(テーオーシービル・東京卸売センタービル)が、建て替え・再開発のため2024年中に閉館します。

 五反田駅から歩くと少し距離があり、フラっと寄りづらい立地だけに「名前は知っているけど入ったことがない」という人も多いのではないでしょうか。

 今回は、閉館が迫ったちょっぴりレトロな卸売ビル「TOCビル」の魅力に迫ります。

半世紀の歴史に幕を下ろすTOCビル。 茶色いタイル張りの外観は昭和レトロな雰囲気も。(画像:若杉優貴)



●「昭和レトロ」も魅力のTOCビル

 TOCビルがあるのは国道1号線・桜田通り沿い。最寄り駅は東急池上線の大崎広小路駅ですが、五反田駅や不動前駅、戸越銀座から歩いても10分前後の距離。また、五反田駅からは無料シャトルバスが約8分おきに運行されています。筆者は戸越銀座を訪れたついでに、歩いてTOCビルへと向かいました。

 高度成長期である1970年に開業しただけあって、建物の外観は茶色いタイル張りの外壁に窓が多く並ぶという今となってはレトロなスタイル。(かつては消防法等の規定により商業ビルなどには例外を除き多くの窓を設置することになっていました)

 そして、建物に近づくと驚かされるのがその大きさです。建物は地下3階・地上13階建て、延べ床面積は約174,013㎡で、都内の伊勢丹や三越といった大型百貨店よりもはるかに広い面積となっています。

TOCエントランス。設立者・大谷米太郎氏の胸像が設置されています。(画像:若杉優貴)
TOCは館内もレトロな雰囲気。1970年代の百貨店で定番だった「丸ボディ型」のエスカレータが迎えてくれます。ちなみに1階からエスカレータに乗るとたどり着くのは「3階」。このカオスもTOCらしさ。(2階は医療関係とオフィス等)(画像:若杉優貴)

 正面から館内に入ると迎えてくれるのが、TOCの設立者である大谷米太郎氏の胸像。大谷米太郎氏は元力士からホテルニューオータニなど複数の企業を立ち上げたという異色の経歴を持つ実業家で、TOCは現在も大谷家が会長・社長職を勤めています。

 その大谷米太郎像の横にあるのはTOCビル名物「徳の市」告知についての案内。徳の市とは毎年4回ほど全館を挙げて開催する大セールのことで、この日ばかりは広い館内も多くの人で埋め尽くされます。

 館内は築53年を迎えたと思えないほどきれいであるものの、エスカレーターや階段などはレトロな雰囲気が漂う造り。大理石を使った装飾からは、単なる卸売ビルではない「百貨店のような重厚さ」も感じさせられます。

TOCのエレベーターホール。百貨店やシティホテルのような雰囲気も。(画像:若杉優貴)

●おなじみのチェーン店から個性的な専門店、飲食店まで…多彩な店がそろう館内

 TOCビルは「卸売ビル」であるがゆえ「一般の人が入って楽しめるの?」という疑問を持つかも知れませんが、館内には「ユニクロ」「ダイソー」「アカチャンホンポ」などおなじみの大手チェーン店、「ベッド」「ペルシャ絨毯」「ベネチアンガラス」「だっこ紐」「書道用品」「ヨーロピアン雑貨」といった一般客向けの商品も扱う個性的な専門店が数多く出店(閉館前のため一部閉店・休業中の店舗あり)。

 また、大手チェーン店であっても、TOCだけのアウトレット商品や限定商品を販売している店が多くあります。

 おおまかにいえば、5階までの低層階は食品やチェーン店なども多く、高層階に行くほど個性的な卸売店やオフィスが多くなる構成で、地階・1階には飲食店も複数出店しています。

 小売店と並んで卸売専門店舗・業者向け店舗、さらには物流倉庫や一般オフィスがあったりもしますが、このごちゃまぜ感こそがTOC。館内に掲示されているフロア案内のなかには「一般客が買い物できる店舗/卸売専門の店舗」が示されているものもあるため、チェックしてみましょう。

 広すぎて館内全部を回り切れる自信がない!という人は、飲食店やチェーン店が多い下層階からいけるところまで巡るのもオススメです。

TOCの館内(地階)。低層階には大手チェーン店も多く入居しています。 チェーン店でも「ここだけのアウトレット品」を扱っている店舗も多く、おなじみのお店の商品が格安で手に入るかも?(画像:若杉優貴)
TOC館内はフロアごとに商店会があり、4階は「四ツ葉会」、3階は「三和会」…というように階層にちなんだ名称が付けられています(一部除く)。中には「横文字」の商店会名も。お買い物のついでにチェックしてみては?(画像:若杉優貴)

 TOCでは建て替えが近づくなか、ここ最近は人気テナントだった森永のお菓子店「おかしなおかし屋さん」が2022年12月に、大手手芸店「ユザワヤ」が今年6月に閉店するなど、閉館に向けた準備が着々と進んでいますが、まだまだ多くの店舗が営業中。なかには建て替え計画発表後に新たに出店した店舗もあります。

 館内各地では「閉店セール開催中」の看板を掲げるショップも目立つようになっており、今だけのオトクな商品に出会うことができるかも知れません。館内を散策してお気に入りの1店を探してみては。

1階・地階を中心に飲食店も出店。最近開店したばかりの八百屋さんも。(画像:若杉優貴)
上階に行くほど静かな雰囲気。閉店セール中の店舗もいくつかありました。(画像:若杉優貴)

●広くてのんびりくつろげる!隠れた人気スポット「TOC屋上広場」

 館内を一通り巡ったあとは、TOCビルの隠れた人気スポット「屋上」へ足を運んでみましょう。

 14階(TOCビルでは「P階」と呼称…ペントハウスのP)にあたる屋上は広場になっており、花壇やベンチが設置されています。建物の規模が大きいがゆえ、広場の面積もかなりのもので、混雑の心配もなし。屋上には飲み物の自動販売機のほか、大型商業ビルでは定番ともいえる屋上神社(氷川神社)、さらにはゴルフ練習場まであります。

 訪問時には館内で働いていると思われる人はもちろんのこと、買い物に来た親子連れがお弁当を広げてくつろいでいる姿も見られました。

とにかく広いTOC屋上広場。花壇やゴルフ練習場(フタバゴルフガーデン)も!(画像:若杉優貴)
TOC屋上・氷川神社。お買い物のついでにお参りしてみては。(画像:若杉優貴)

 都心に超高層ビルが増えたとはいえ、TOCビル屋上からの眺めは格別。東京タワーはもちろんのこと、冬の晴れた日には約100km離れた富士山を望むこともできるそうです。

TOCビル屋上から北西方面の眺め。中央の緑地は品川区・目黒区民の憩いの場「林試の森公園」(旧・林野庁林業試験所)。(画像:若杉優貴)

新・TOCビルは「高さ150メートル」

 今後、TOCビルはどのように生まれ変わるのでしょうか。

 TOCビルを運営する株式会社テーオーシーによると、新・TOCビルは地上30階・地下3階建て、高さ約150メートルの超高層ビルとなる予定。延床面積は約27万6,000㎡で、現在の約1.5倍の規模となります。着工時期は2024年中が予定されており、現在のTOCビルは1年以内に閉館となる見込みです。(当初は2023年春の閉館を予定)

新・TOCビルのイメージ。2020年代後半に完成するとみられます。(テーオーシーニュースリリースより)

 TOCビル閉館まであと数ヶ月。ちょっぴりレトロで唯一無二の「卸売ビル」、今のうちに足を運んでみてはいかがでしょうか。

 なおTOCビルは「卸売センター」だけあって、夕方以降は営業している店舗が少なくなります。また、閉店・移転する店舗も増えているため、もしお目当ての店舗があるならば、営業時間・営業期間の確認もお忘れなく。

■TOCビル(東京卸売センタービル)
住所:東京都品川区西五反田7-22-17
アクセス:東急池上線「大崎広小路駅」より徒歩5 分
JR山手線・都営浅草線・東急池上線「五反田駅」より徒歩8分(シャトルバスあり)

参照資料:
新TOCビル計画に関する都市計画決定のお知らせ(2022年4月22日)
https://www.toc.co.jp/toc/ir-new/assets/pdf/other/20220422.pdf

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