銀座から始まった「スターバックス」の快進撃 上陸25周年、進化の歴史を振り返る
2021年で日本上陸25周年を迎えた「スターバックス」。その歴史について、ジャーナリストのシカマアキさんが解説します。日本最初の客が注文したドリンクは? 日本に「スターバックス」が上陸してから、2021年で25周年を迎えました。また、スターバックスが1971(昭和46)年にシアトルのパイクプレイス・マーケットに誕生してから、今年でちょうど50周年の年でもあります。なお、日本最初の店舗は銀座で、現在は全47都道府県に約1600店舗があります。 今回は国内外のスターバックスを多く訪れた筆者(シカマアキ、ジャーナリスト)が、日本におけるスターバックスの25年間の進化を振り返ります。 ※ ※ ※ スターバックスの日本1号店は、現在も営業している「銀座松屋通り店」(中央区銀座)です。オープン日は、1996(平成8)年8月2日。スターバックスにとって、北米エリア以外で初となる店舗でした。 開業当時の銀座松屋通り店(画像:スターバックスコーヒージャパン) 開業当日、交差点の角に立つ1号店をぐるりと囲む長い行列。早朝から汗ばむ真夏にもかかわらず、ずっと続く列の長さを見たハワード・シュルツ氏(スターバックス前CEO)が、思わず目を丸くして驚いたという逸話が残っています。 日本最初の客が注文したのは、アメリカで定番のカスタマイズドリンク「ダブルトールラテ」でした。「ダブルトールラテ」は現在、この店舗限定でメニューに掲載されています。日本1号店の記念プレートも店内にあり、レシートには日本国内での店舗番号「#1」が印字されます。 日本進出から約半年で5店舗日本進出から約半年で5店舗 店舗数はその後、1997(平成9)年3月末で5店舗、1998年3月末で18店舗と続々に増加。日本国内100号店「山王パークタワー店」(千代田区永田町)が2000年2月にオープンし、ここからスターバックスの全国展開が本格化しました。 以下、首都圏以外の地区1号店と開業時期です。 札幌パルコ店。店内の壁に北海道らしいデザインのアート(画像:シカマアキ)・北海道地区:札幌パルコ店(札幌市、2001年4月) ・甲信越地区:新潟万代シティ店(新潟市、2001年5月) ・東海地区:名古屋JRセントラルタワーズ店(名古屋市、2000年3月) ・関西地区:梅田HEP FIVE店(大阪市、1998年11月) ・四国地区:高松丸亀町フェスタ店(香川県高松市、2002年2月) ・北陸地区:香林坊109店(石川県金沢市、2002年4月) ・山陰地区:シャミネ松江店(島根県松江市、2013年3月) ・沖縄地区:那覇国際通り牧志店(沖縄県那覇市、2002年6月) カスタマイズはなんと17万通りも! スターバックスの登場は、日本の喫茶文化を変えたといっても過言ではありません。25年の間に育まれた、いくつかのエピソードをご紹介します。 まず、スターバックスの店舗の従業員は「スタッフ」ではなく「パートナー」と呼びます。これは全世界の店舗共通。そして、店舗に客が入った時のあいさつは「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と呼び掛けるのもいまや定着しています。 カウンターに立つバリスタは、緑のエプロンがおなじみ。たまに、黒いエプロンを身に付けるバリスタもいます。実はこの黒いエプロンは「ブラックエプロン」と言われ、スターバックス社内での試験を通過した人のみが着用できるコーヒーのエキスパート。もし見かけたら、おいしいコーヒーの味わい方やコーヒー豆の特徴など、ぜひ聞いてみてください。 ブラックエプロンを着用するバリスタ(画像:スターバックスコーヒージャパン) ドリンクを自分好みにカスタマイズできるのも、スターバックスの特徴です。ミルクを豆乳に変更したり、バニラシロップを追加したりと、そのカスタマイズは合計なんと17万通りも。バリスタに気軽に相談できるのもスターバックスの良さと言えます。 各店舗のパートナーが手書きで描いている、店内の「チョークボード」も必見。なかには「美大出身のプロ?」と思うほど、見事なチョークボードに遭遇することも。季節ごと、地域ごとに違うチョークボードは、たとえ同じ商品であっても店舗によって異なるので、こちらもぜひチェックを。 いまや定番ドリンクのひとつ「キャラメルマキアート」は1999(平成11)年11月、「ほうじ茶ティーラテ」は2009年12月に初登場したのをはじめ、抹茶やさくらなどを使った日本のスターバックス、オリジナルのドリンクも続々販売されました。発売されるたびに話題となり、時には売り切れ続出も多く見られます。 それぞれの地域にある特別なお店それぞれの地域にある特別なお店 数あるスターバックスのなかで、特別な店舗がいくつかあります。 東京といえば、2019年2月に中目黒に開業した「スターバックス リザーブR ロースタリー東京」(目黒区青葉台)です。世界で6店舗のみ、焙煎(ばいせん)設備のある「スターバックスの妥協を許さないコーヒーイノベーション」を表現した店舗。季節ごとに異なるドリンクやフード、景色、そしてイベントなど、いつ訪れても特別感が漂う場所です。 「スターバックス リザーブR ロースタリー東京」は焙煎設備を併設し、間近で見学も可能です(画像:シカマアキ) また「リージョナル ランドマーク ストア」は現在、全国に28店舗。日本の各地域で象徴となる場所に位置しています。その地域の歴史や伝統工芸などを訪れた人が再発見し、世界に発信する店舗というコンセプトです。 例えば、「伊勢内宮(ないくう)前店」(三重県伊勢市)は、伊勢神宮の門前にあるおはらい町通りに面しています。江戸時代の町並みが再現された景観に合わせた2階建ての木造建築デザイン。のれんや鬼瓦をはじめ、小屋組みの空間、天窓、三重県産の木材を使ったテーブルなどが特徴的。お伊勢参りの気分そのままに、ぜひ立ち寄りたいスポットのひとつです。 「門司港駅店」(福岡県北九州市)は、大正時代の待合室の雰囲気と鉄道の歴史などが体感できる店舗。世界文化遺産の宮島にある「厳島表参道店」(広島県廿日市市)は日本唯一、船で行くスターバックスで知られます。「京都二寧坂ヤサカ茶屋店」(京都市)は、伝統的な日本家屋がそのままスターバックスとなり、畳の間でくつろげます。西陣の技術、素材を生かした布で表装されたオリジナルの掛け軸アートなども必見です。 東京都内にも2店舗あります。そのひとつが、新宿御苑店(新宿区内藤町)です。店内のテーブルには多摩産の木材を使用。公園の景色を借景として、四季折々の風景がスターバックスおなじみのドリンクとともに堪能できます。 もう1店舗は二子玉川公園店(世田谷区玉川)で、丘の上に立つ芝生に囲まれた地元民に長年愛されているお店です。 通常店舗でも、よく見ると内装に「竹」が使われていたり、地元の染め物をアートとして掲げていたりします。基本的に、日本のスターバックスには同じ店舗が存在しません。自宅近くの店舗をそうした視点で見てみると、新たな発見があるでしょう。 近年は「地域」とのつながり近年は「地域」とのつながり 銀座から始まった日本のスターバックスの歴史。当時まだ珍しかったさまざまなドリンクを味わうたび、新たな発見の連続だった人も多かったことでしょう。 店舗はそれぞれの町に、駅や空港に、そして全国へ徐々に増えていき、いまや全都道府県に合わせて1600あまり。都市部では、いまやオフィスや自宅の近くに何店舗もあることも珍しくなくなりました。利用者にとって、それぞれの時代に合わせたメニューや店舗などを展開し、その都度、幅広い世代で話題をさらっています。 スターバックスのウェブサイト(画像:スターバックスコーヒージャパン) 25年の間、店舗で利用できるWi-Fiが高速化され、カードでの決済やアプリからの注文ができて利便性が向上。環境に配慮し、ストローがいち早くプラスチックから紙に変わったのも画期的です。 のんびり過ごせる、公園内や書店併設の店舗も続々オープンしています。特に近年、店舗内装に地元産木材を用いたテーブルを設置するなど「地域とのつながり」が感じられる店舗が増えています。海外のスターバックスにはないメニューやグッズ、店舗などから「日本らしさ」も随所に感じられます。いま一度、身近にあるスターバックスから体験してみてはいかがでしょうか。
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