渋谷の丸井が8月に閉店して「木造化」――一体どんな店になる?
8月28日に一旦閉店し、「木造ビル」に生まれ変わる予定の渋谷マルイ。新たな建物はどういったものになりそうなのか、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。都心最大級の「木造商業ビル」に生まれ変わる「渋谷マルイ」 東京・渋谷を代表する老舗商業施設「渋谷マルイ」(丸井渋谷店、東京都渋谷区)が今年8月28日に一旦閉店し、新たに「木造ビル」へと建替えられることが発表されました。 半世紀以上にわたって親しまれてきた渋谷の丸井。新たな建物はどういったものとなるのでしょうか。 8月28日に「一旦閉店」となる渋谷マルイ。6月上旬時点では店頭に閉店告知などはありませんでした。 丸井は建物を解体し、跡地に「木造ビル」を建てるとしています。渋谷の丸井で思い浮かべるのは「ファッション」?それとも「エンタメ」? 渋谷マルイは「丸井渋谷店」として1958年10月に開店。現在の建物となったのは1971年2月で、渋谷駅前を代表する商業施設の1つとして約70年にわたって親しまれてきました。 「渋谷の丸井」というと、40代以上の人にとっては「トレンドファッションの発信拠点」としての印象が強いかも知れません。一方で、近年の渋谷マルイは「サブカルチャーの発信拠点」としての顔が広く知られていました。 現在の渋谷マルイは築51年。最近はテナントの撤退が目立っており「再開発が近いのでは?」との声も上がっていました。 とくに、店名が「マルイジャム渋谷」から「渋谷マルイ」に変わった2015年の改装ではファッション・アパレル関連の売場が削減され、モノ(商品)を売るのみならずサブカルをはじめとした「コト消費重視型」の店舗へと転換。新規テナントとして人気漫画・ワンピースのキャラクターショップ「麦わらストア」や『攻殻機動隊』などの人気アニメで知られるProduction I.G直営店「I.Gストア」(いずれも閉店済み)、ゲーム・アニメグッズショップ「キャラクターステーション」などを導入したほか、8階に漫画・アニメやアイドルグループなどのコンテンツ発信拠点地となる催事スペース「シブマルエイト」(その後7階にも拡大)を開設。8階と屋上ではアイドルグループを中心とした音楽ライブも多く行われるようになりました。 この改装直後の2015年から2016年にかけて行われた『ラブライブ!」や『ご注文はうさぎですか?」などといった人気コンテンツとのコラボレーションはアニメファンのあいだで話題を集め、「アニメのマルイ」としての知名度は大きく上がることとなります。 近年、渋谷マルイの館内では様々なアニメ等のコラボイベントを開催。 「クオリティが高い!」と話題を呼ぶことも…。(2016年撮影) また、こうしたアニメコラボや音楽ライブなどのイベントでは丸井グループのクレジットカード「エポスカード」(旧・赤いカード)所有者に特典があることが多く、イベント開催時には時おりカード申込カウンターに列ができるなど、新規カード会員獲得の柱にもなっていたと思われます。 丸井グループのクレジットカード「エポスカード」は、近年人気漫画・アニメをはじめとした様々なコンテンツとのコラボを実施。 丸井グループの商業ビル「渋谷モディ」のビジョンでは「タイバニエポスカード」のCMが。 渋谷マルイがこのような「コト消費重視型」に転換した背景には、ファストファッションの隆盛にみられるような若い消費者の嗜好の変化に加え、ルミネなどの駅ビル、さらに広大な郊外型ショッピングモールとの競争激化もあったといえます。 現在の渋谷マルイの店舗面積は4,242㎡で、これは競合ファッションビル「ラフォーレ原宿」や「SHIBUYA109」、「渋谷パルコ」よりも小規模。また、近隣にある大型百貨店「西武渋谷店」「東急渋谷本店」や新宿駅ビル「ルミネ新宿」(3店とも各館合計で40,000㎡前後)と比較すると僅か1割程度で、系列店「渋谷モディ」(9,896㎡)を足したとしても歯が立たない規模であり、今となってはこの面積では「フルラインのファッションビル」としての運営は難しかったでしょう。 渋谷マルイの屋上では様々な音楽ライブも行われていました。 (2020年に行われたアイドルグループ「DEAR KISS」のイベント、撮影可能時に撮影)2026年に誕生する「木造マルイ」、今よりもかなり狭くなる!?2026年に誕生する「木造マルイ」、今よりもかなり狭くなる!? それでは、新しい「木造・渋谷マルイ」はどういった内容になるのでしょうか。 新たなビルは構造の約60%に木材を使用した木造地上9階・地下2階建てで、2026年に完成する予定。丸井グループによると、木造ビルとすることで「従来の鉄骨造で建替えた場合と比較して約2,000tのCO2排出量を削減できる見込み」であり、環境負荷を軽減する商業施設になるとしています。 設計のリードデザイナーには、英国の設計事務所「フォスター・アンド・パートナーズ」(Foster+Partners)を起用。同社はアジア圏では香港国際空港や北京首都国際空港など多くの人が集まる施設を手掛けていることで知られます。 渋谷マルイの建替え後イメージ。(丸井ニュースリリースより) 木造地上9階・地下2階の建物となる予定。 さて、肝心の「木造・渋谷マルイ」店内はというと――6月時点では具体的な入居テナント名などは発表されていないものの、全館の売場面積は約2,800㎡を予定。これは「狭い」と言われる現・渋谷マルイの約半分に留まります。 仮に、地上9階・地下2階の全床が売場になるとすれば、ワンフロアの平均面積は約200㎡強とコンビニよりも少し広い程度で、丸井グループとしてもかなりの狭小店舗となります。それゆえ、新店舗が「フルラインのファッションビル」となることは考え難く、新しい建物でも「コト消費重視型」や、あるいは業態特化型の店舗となることが予想されます。 また、同社が発表した建替え後イメージでは店舗屋上にカフェや庭園のような施設が設けられており、新店舗でも現在のような「屋上イベント」の継続が期待されます。 渋谷マルイの建替え後イメージ。(丸井ニュースリリースより) 屋上(画像右)にはカフェや広場のようなものもみられます。 果たして丸井はこの広さ――いや、「この狭さ」の建物で、どういった店づくりを行うというのか…今後の詳しい発表が待たれます。
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