「スーパーボール」に「10円ゲーム」 都内で見つけた昭和感たっぷりの駄菓子屋とは
昭和時代、子どもたちに大人気だった駄菓子屋さん。その現在について、エデュケーショナルライターの日野京子さんが解説します。昭和の町の風景に溶け込んでいた駄菓子屋元号が令和に変わり早いもので4年がたとうとしています。現役世代でも徐々に平成生まれが増え、ますます「昭和は遠くなりにけり」になっています。 東京都心の高層ビル群や街並みをみると、昭和の雰囲気を探すのは簡単ではありません。しかし昭和の頃によく見かけた小学校近くの駄菓子屋が東京のど真ん中でも健在です。 駄菓子屋を取り巻く環境は厳しいものがあります。店主の高齢化や少子化によるお客さん(小中学生)の減少、商品単価も安く利益が出にくい商売ということもあり駄菓子屋は街から姿を消しているのも事実です。 少ないお小遣いでも買える駄菓子は小学生に大人気(写真:PIXTA)経済産業省の商業統計で駄菓子屋が含まれる「菓子小売業(製造小売)」の事業者数は1991(平成3)年は6万9042でしたが、2016(平成28)年には1万5746にまで減少。そのうち駄菓子屋の形態ともいえる個人事業所数は5万4327事業所から7054事業所に激減しています。 こうしたなかで現在も昔ながらの小学校そばの駄菓子屋があるのは奇跡であり、貴重な存在です。小さい頃を懐かしむために、または小学生の頃の憧れだった「大人買い」を楽しむために、アクセス抜群の「23区内にある昭和的な駄菓子屋さん」をご紹介していきます。 新宿にも存在する地域の駄菓子屋1日の最多乗降者数が世界一とギネス認定されている新宿駅を有する新宿区。この街に昭和的な雰囲気の駄菓子屋があると聞いてもにわかに信じられないかもしれませんが、商業施設に入っている駄菓子屋ではなく、正真正銘の「駄菓子屋」です。 グミ1つから買えるのも駄菓子の魅力(写真:PIXTA)東京メトロ丸ノ内線西新宿から12、3分歩いた距離にある「横山」は昭和の雰囲気を残す町の駄菓子屋さん。新宿フロントスクエアを通り抜けて青梅街道を渡り、北に進み路地を歩いていくと大都市新宿の姿は消え、高層ビルが皆無の懐かしい街並みが広がります。 そんな地域に横山は店を構えています。さらに、昭和の駄菓子屋さんの条件の一つである「小学校の近く」を軽々とクリアする場所に新宿区立柏木小学校があります。 横山は戦後間もない1948(昭和23)年創業。新宿駅周辺の開発とは無縁のようなたたずまいをみせています。 店内には定番の駄菓子の他、スーパーボールくじや玩具類が壁にかかって売られており、まさに子ども達の夢の国。店の前からは新宿フロントタワーが見え、昭和と現代が交差する不思議な空間となっています。 ・横山 東京都新宿区新宿2-4-14 東京メトロ丸の内線西新宿から徒歩12~3分 人気の谷根千地域に残る駄菓子屋人気の谷根千地域に残る駄菓子屋東京の下町を今に伝える人気エリア「谷根千」は谷中・根津・千駄木周辺、つまり文京区から台東区にまたがる地区を意味する言葉です。歩いているだけでノスタルジックな気持ちに浸れる同エリアには、意外にも小売りをしている駄菓子屋は1948(昭和23)年開店の「駄菓子の木村屋」のみ。 店名は記されていないものの、店の前を通ればすぐに駄菓子屋だと気がつきます。年季の入った木枠のガラスケースに所狭しと駄菓子の数々が並べられています。プラスチック容器が主流になって久しい駄菓子屋の世界で、このスタイルを続けているのはかなり珍しいものです。 自分でガラスケースを開けて駄菓子を取り出す仕組み(写真:PIXTA)駄菓子の木村屋の近くには台東区立谷中小学校があり、古い駄菓子屋さんと小学校の存在は切っても切れないようです。 東京メトロ千代田線の千駄木駅からすぐ近くという好立地ということもあり、谷根千エリア散策の際には立ち寄りたい駄菓子屋です。 ・駄菓子の木村屋 東京都文京区千駄木3-40-19 東京メトロ千代田線の千駄木駅から徒歩数分 懐かしいレアなゲームで遊べる阿佐ヶ谷の駄菓子屋駄菓子屋さんの定番といえば、駄菓子やスーパーボールクジの他に店先に並んでいるガチャガチャやコインゲームでしょう。お小遣いの残りを確認しつつ、友だちと大騒ぎしながらチャレンジした経験を持つ方は少なくないでしょう。 とくに「駄菓子屋の店頭のゲーム」というのは、世代によって遊んだモノが異なります。 昭和40年代から50年代はレバーを巧みに使ってゴールまでたどり着く10円ゲームが、そして昭和後期から平成初期ごろに音や光も派手な電気で動くジャンケンマンやルーレット系のメダルゲームが一世を風靡。店頭のゲームも時代に合わせて変化しています。 いつの時代もコインゲームは子どもたちに人気(写真:PIXTA)こうしたなか、昔懐かしい駄菓子屋のゲームで遊ぶことができるお店が阿佐ヶ谷の「やなぎや食料品店」です。こちらも近隣に杉並区立杉並第九小学校があり「小学校の近くに駄菓子屋あり」を地でいっています。JR阿佐ヶ谷駅北口から中杉通りを道なりに1キロメートル北に進み、早稲田通りと合流する交差点を右に曲がり歩いていくとお店が見えてきます。 店内には、今ではなかなかお目にかかれない10円ゲームが鎮座しています。10円ゲーム世代の方にとっては懐かしく、ファミコン世代でもあるメダルゲーム世代の大人にとっては逆に新鮮さを感じることでしょう。 とくに野球の10円ゲームは、世界のホームラン王をモデルにしたと思われる一本足打法の左打者が大きく描かれています。令和になっても昭和のゲームを現役で遊べる奇跡を体感できる駄菓子屋さんです。より昭和の雰囲気を味わいたいなら、荻窪駅で下車し北口の商店街を散策してから立ち寄るのもおすすめです。 ・やなぎや食料品店 東京都杉並区阿佐谷北4-25-12 JR阿佐ヶ谷駅から徒歩13分 JR荻窪駅または東京メトロ丸の内線荻窪駅から徒歩25分 駄菓子屋は童心に戻る不思議な空間子ども達に大人気の「銭天堂」シリーズは、不思議な駄菓子屋さんを舞台にしたお話です。今の子ども達にとっても、時代を感じさせる雰囲気のある駄菓子屋さんは魅力的な存在のようです。 町の駄菓子屋さんは年々姿を消していますが、都心にあるアクセスのよい駄菓子屋さんで子ども時代の思い出に浸ってみてはいかがでしょうか。 参考:経済産業省の商業統計 菓子小売業(製造小売)
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