士業の一つとして確固たる社会的地位を持つイメージのある行政書士ですが、ネットで「行政書士」と検索すると「やめとけ」「悲惨」「オワコン」などというネガティブな検索候補が出てきます。果たして、行政書士とは、「やめとけ」と言われるような存在なのでしょうか。
今回の記事は、行政書士に関して以下のようなポイントを解説しています。
- 行政書士はやめたほうがいいと言われるワケ
- 行政書士を目指すメリット
- 行政書士の資格取得がおススメな人とは?
- 行政書士の実際の仕事内容は?
- 行政書士のよくある質問
一緒に行政書士が本当に「やめとけ」な職業であるのか、みなさんと一緒に考えていきましょう。最後には行政書士に関するよくある疑問についても取り上げています。ぜひ参考にしてください。
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行政書士はやめたほうがいいと言われるワケ
「行政書士を目指すのはやめたほうがいい」。このようなネガティブなイメージが少なからずあるのは、行政書士を取り巻く環境に何かしらの原因があるからです。
しかし、行政書士は、決してそのようなネガティブなイメージがつく職種環境ではありません。では、行政書士の否定的な意見に関するポイントを以下よりまとめてみました。そのポイントについて、なぜそう思われているのか一つずつ説明していきましょう。
合格が難しい
行政書士の国家資格試験合格率は、10%ほどが平均といわれています。この数値は決して高い合格率とはいえないでしょう。
また行政書士は受験資格がほぼないために、10〜60代と幅広い年齢層が受験しているのも特徴です。なかには何度となく資格試験を受けてことごとく不合格が続いている人もいるでしょう。
そのような若くない年齢層の人が「何度挑戦しても無駄だからやめとけ」と、腹いせにネット上でネガティブな意見を言っているという見方もできます。
しかし士業でいえば司法書士、弁理士など、行政書士より低い合格率の資格は珍しくありません。さらに、行政書士の場合は受験者層の影響を受けるため、純粋な難易度でいえば他の士業が上といえるでしょう。
試験の特徴を掴めば、法律に詳しくなくても合格が狙いやすいのが、行政書士の特色といえます。
就職先が少ない
行政書士は就職先が少ないというイメージも一部で定着しているようですが、この意見はあながち間違ってはいません。それは「行政書士資格はもともと独立開業型という性質」だからです。
通常の資格は特別なスキル・知識を持っている証明になるため、就活・転職活動の際にアピールポイントになります。しかし、行政書士の資格はもともとが専門職であるために、他の資格である会計やプログラミングといった実用的なものとは性質が違うのです。
そのため、行政書士の国家資格は、企業の従業員として役立つスキルではありません。ただし、行政書士が独立開業して受け持つ案件というものは、いつの時代でも尽きることがないので「行政書士は就職先がない=仕事がない」わけではないのです。行政書士は仕事に困ることは、常にないでしょう。
年収が低い
行政書士の平均年収は600万円ほどといわれています。「厳しい国家資格を合格した行政書士は、年収数千万稼いでいそう」というイメージがあるためか、年収が低いと一部でいわれているようです。
しかし600万円という平均年収は、一般の平均年収より100万〜150万円ほど高く、決して低くはありません。また、600万円はあくまで平均値であり、行政書士のなかには年収が1,000万円以上になる方もいます。
高い年収を誇る行政書士は、他の資格を取得し、ダブルライセンスとなり、業務内容の幅を広げる、地域密着型として運営したりといった工夫をしているのが特徴です。運営のやり方次第で、行政書士は十分に高い年収を実現できる職種といえるでしょう。
行政書士の有資格者数が多い
行政書士は有資格者が多いと言われています。実際に他の資格の有資格者と比較してみましょう。行政書士は約4.9万人に対して、弁護士は約4.1万人、税理士は7.8万人です。
実は、行政書士だけが飛び抜けて登録者数が多いわけではありません。コロナ禍の影響で資格を取れば安泰という風潮になり、ここ数年で行政書士の登録者数が増加したため「行政書士は多い」というイメージがついたようです。
そして行政書士が多い=仕事の取り合いになり、仕事がないというイメージがある人もいるでしょう。しかし行政書士は幅広い業務を請け負うため、仕事がなくなるということはありません。
行政書士を目指すメリット
先の説明で行政書士のネガティブなイメージは払拭してもらえたと思います。行政書士は、確かに資格試験は難易度が高いものですが、資格取得さえすれば、確実に高収入アップが狙える国家資格なのです。
では、国家資格である行政書士の資格取得を達成した際、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは次の2点です。
次より、行政書士の二つのメリットについて、一つずつ説明していきましょう。
就職や転職に有利になる
行政書士の資格取得を検討している人は、自身の事務所を構えて独立開業を目指している人が多いでしょう。しかしその一方、転職活動の際に有利になるために、資格取得をする人もいます。
行政書士の資格取得によって好アピールにつながる職種は、企業の総務部・法務部です。行政書士の資格取得は、民法・行政法などの知識を持っていることの証明になります。また、官公庁への書類作成および提出代行も行政書士なら可能です。
行政書士の就職先といえば、行政書士事務所・法律事務所ですが、それほど求人が多いわけではありません。しかし、大規模な企業の総務部・法務部であれば規模が大きい分、採用人数も多いため就職・転職しやすいといえるでしょう。
独立・開業ができる
行政書士の資格取得者は、独立開業することがほとんどです。行政書士は、司法書士のように開業前の研修を受ける義務がないため、資格取得し各都道府県の行政書士会に登録申請して審査に通れば開業できます。
登録料などの諸費用と、事務所として機能するための最低限の設備・環境があれば、小規模ながらも申請から1~2カ月で開業が可能です。また、費用節約のためにレンタルオフィスの利用、自宅を事務所代わりにするケースも少なくありません。
このように手間をかけずにすぐに独立開業できるのが行政書士の強みですが、事務所の登録要件が厳しい面もあるので、その部分をクリアする必要があります。
自宅や共有スペースのどこまでが事務所スペースになるのかを、明確にすることが大事です。その点さえクリアすれば、他の事業に比べてスムーズに独立開業できます。
行政書士の資格取得がおススメな人
行政書士について、資格取得に向いている人は、以下のような人です。
- 行動力、営業力がある人、物事に臨機応変に対応できる人
- コミュニケーション能力がある人
- 責任感がある
- 事務処理能力、責任感がある人
- 好奇心旺盛な人
行政書士として独立開業した場合、自分からアクションを起こさないと事業は円滑に進みません。行動力やアイデア(好奇心)、そして自分の城である事務所を維持するための責任感、やりがいを感じる気持ちが重要といえます。
また、書類作成など事務的な能力も必要です。書類などでのミスはやってはならないため、事務処理能力も重要といえます。
また、顧客と対面した際のコミュニケーション能力も大事です。顧客が何を望んでいるか、どのようなことが希望なのかを聞き出すヒアリングも、しっかりと行わなくてはいけません。
そして営業力にも通じる、他の場所へ出向いて人脈を広げる能力も必要不可欠です。さまざまな人たちと交流を図れば、業務拡大につながるでしょう。
行政書士の実際の仕事内容は?
行政書士の仕事は具体的に何をやるのか、おぼろげに把握していながらも、実際にははっきりと理解していない人もいるでしょう。
行政書士は、役所や警察署などといった官公署に提出する必要書類の作成および提出を代行するのが、主な業務です。行政書士の仕事は他にもあり、仕事内容をまとめると次の三つに分類できます。
- 許認可申請について
- その他書類の作成について
- コンサルティングについて
書類作成などは一般人が行っても問題ないものですが、一般人にはなじみがないものが多いのが現状です。手間がかかる・提出する暇がないなどといった理由のため、行政書士に依頼する人は少なくありません。
では、上にあげた三つの行政書士の仕事内容とは具体的にどういった内容なのか、次より一つずつ説明しましょう。
許認可申請
行政書士のメインとなる業務は、許認可申請です。一般の人が事業を開始する際にやらなければいけないことは、そのための申請手続きです。申請手続きは、各省庁、都道府県庁、市区役所、町村役場、警察といった官公署の許可、認可を取らなくてはなりません。
しかし、そのための書類作成には手間がかかります。そのような面倒な作業である書類作成・官公署への提出を代行するのが、法律の専門家である行政書士です。
許認可申請の種類は1万種以上あるといわれており、その種類によって難易度が異なります。
その他書類の作成
行政書士は、許認可申請の書類提出代行以外の、その他書類の作成および提出、相談も受け付けています。
この場合の書類作成とは、以下のものが代表例です。
- 遺言・相続(遺産分割協議書など)
- 契約書(売買契約書など)
- 自動車登録(ナンバー登録・名義変更など)
- 日本国籍取得(帰化申請書類など)
- 土地活用(営農計画書など)
- 内容証明(内容証明郵便など)
- 外国人雇用関係(在留資格認定証明書など)
- 法人関連手続き(株式譲渡契約書など)
- 知的財産登録申請(特許庁への登録申請書など)
これら「権利」「義務」に関する問題は、当事者同士が行うと誰もが自身の考えを主張してトラブルに発展することが少なくありません。
そのため、法律の専門家であり、豊富な知識を持つ行政書士が仲介役となって、これら権利や義務に関する書類作成を公平な立場で行うのです。
行政書士が確固とした書類を作成してこれを管理しておくことによって、あらゆるトラブルを防止できます。
コンサルティング
行政書士のなかには、コンサルティング業をメインに行っているところもあります。
行政書士というと法律の専門家というイメージがありますが、行政書士の深い知識を持って、さまざまなかたちで中小企業などの運営をサポートすることが可能です。行政書士が行うコンサルティング内容は、以下の通りになります。
- 社内規定の作成代行
- 各種契約書類の作成代行
- 補助金および助成金の申請手続き代行
- 公的融資の申し込み代行
- 事業承継や事業再生のサポートおよびアドバイス
近年では、会社の経営など深い部分にまで関わる業務も行う行政書士事務所もあり、経営コンサルティングを全面に打ち出しているところも珍しくありません。コンサルティング目的で資格取得を目指す人もこれから増えるでしょう。
また、行政書士YouTuber・宮城彩奈さんのように、動画配信によってさまざまな情報を発信する方法もあります。
行政書士のよくある質問
行政書士の資格取得について、目指している人のなかには、行政書士を目指しながらもいくつかの不安要素があるようです。そのような人の代表的な疑問は次の二つです。
次より上記の疑問二つに回答しましょう。
行政書士は食えない?
行政書士は先述した「資格取得は大変なのに年収が低い」といった意見があり、食えないのではというイメージがあります。
「年収が低い=一般平均より高い、やり方次第でさらに高収入が可能」
「有資格者が多い=それほど特別多いわけではない、案件が豊富だから仕事はある」
先の段落で説明した通り、ネット上で見られるイメージはすべて誤解です。しかし、それでも行政書士は、食えないというイメージを持っている人もいるようです。その原因は「行政書士事務所は廃業が多い」という情報です。
確かに行政事務所は独立開業して1年も経たずに廃業してしまうケースは少なくありません。その理由は実務経験がない人・社会人経験がない人が、いきなり開業してしまうからです。行政書士事務所は、条件さえ満たせば他の事業より簡単に開業できてしまうため、その分、廃業も目立ってしまいます。開業するまでに実務経験をしっかり積み、他の士業との横のつながりを持つなど情報網の蓄積や営業力、差別化も重要だからです。
行政書士としての案件・ニーズは常に消えることはないため、行政書士=食えないといったことはありません。ただし、独立開業する際は、しっかりと事業計画を立ててビジョンを持つことが大事です。
また、行政書士資格を持っていることで、行政書士事務所や大手企業の法務部への転職の際、行政手続きや法律知識を有している証明として役立つこともあります。
行政書士の勉強は時間の無駄?
「行政書士の資格試験勉強は時間の無駄といった意見は、何度となく不合格になった人間による腹いせの意見であることが多い」といったことは、先で説明しました。
それでも行政書士を目指すのは無駄な行為という人の主張でよくあるのが、「書類作成や提出はそのうちAIにとって代わられる」といった意見です。
実際に行政書士の仕事の一部はAIに今後変わっていくといわれています。しかしあらゆる場所で本格的にAIが導入された場合、法整備や新たな業務が増えるのも事実であり、それによって行政書士の業務も増えるでしょう。
何より行政書士は士業・国家資格として、世の中に確固とした社会的地位があります。そして行政書士が扱う「権利」「義務」といった大事な要素はいつの時代でも普遍的な問題であるため、途絶えることはないでしょう。
行政書士としての業務および資格取得のための努力は、食えない・時間の無駄どころか、一生食べていけるといっても、言い過ぎではないでしょう。
まとめ
行政書士は士業・国家資格として社会的に目立つ立場にいるため、それだけ否定的な意見も少なくありません。そのため、行政書士目指して資格取得の勉強を一生懸命やっている人のなかには「行政書士って食えないの?勉強って時間の無駄?」と不安になっている人もいるでしょう。
今回の記事は、そんな不安を解消してもらうために、以下のようなポイントについてを解説しました。
- 行政書士はやめたほうがいいと言われるワケ
- 行政書士を目指すメリット
- 行政書士の資格取得がおススメな人とは?
- 行政書士の実際の仕事内容は?
- 行政書士のよくある質問
行政書士は、一生食いっぱぐれのないといっても大げさではない、社会的地位のある仕事です。今回の記事を読んで不安を払拭して、安心した気持ちで資格取得の勉強に励んでいただければ幸いです。