GW中におさらい 「渋谷」の巨大開発、街は今後どう変わるのか
再開発が進む渋谷駅周辺。今後、いったいどのように変化していくのでしょうか。まち探訪家の鳴海行人さんが分かりやすく解説します。東横線の跡地を使った遊歩道を整備 山手線の西側にある若者とITのまち渋谷。いま渋谷駅を中心にいま大改造が行われています。今後渋谷のまちはどのように変わっていくのでしょうか。いくつかのプロジェクトを紹介していきます。 回遊性向上で渋谷を行き交う人はより多くなる(画像:123RF) 渋谷駅および周辺の大規模な再開発は2012(平成24)年に開業した渋谷ヒカリエから始まりました。元々東急文化会館だったところを34階建ての高層ビルに建て替えたのです。17階から34階はオフィス、そして低層部は東急百貨店が運営し、20代後半から40代の働く女性をターゲットにした商業施設「ShinQs」(渋谷区渋谷)、そして8階から16階は東急シアターオーブやヒカリエホールを始めとした文化施設が入っています。 その後2013(平成25)年には、東急東横線が東京メトロ副都心線と直通するために今までの地上駅から地下駅へと移り、続いてその線路跡地の再開発が始まりました。 そして建設されたのが渋谷ストリーム(同)と渋谷ブリッジ(同区東)です。渋谷ストリームはGoogleの日本法人を始めとしたオフィスやホテルが中心のビルとなり、渋谷ブリッジは「多世代・異文化をつなぐ」をテーマにホテル・保育所・カフェが入るビルとなっています。そしてその間600mの渋谷川沿いに東横線の跡地を活用した遊歩道を整備し、回遊性を演出しています。 回遊性の演出のウラには、渋谷に多くの不動産を持つ東急電鉄(同区南平台町)が描く構想があります。それが「Greater SHIBUYA」(「広域渋谷圏構想」)です。「Greater SHIBUYA」は、渋谷駅を中心にした半径2.5kmのエリアを指して東急グループが名付けたもので、南は恵比寿・代官山・中目黒、東は青山・表参道、北は原宿・代々木公園を含んでいます。2018年3月27日(火)に発表された東急の中期経営計画に初めて明記され、「渋谷を点ではなく面」で開発し、「何度も訪れたいまち」として渋谷のまちづくり・PRをするという企業方針を示しました。 回遊性の向上の軸は渋谷川回遊性の向上の軸は渋谷川 この「Greater SHIBUYA」では、駅周辺の再開発で高層ビルを建設し、オフィス床面積を生み出すだけではなく、渋谷のまち全体を「働く・遊ぶ・暮らす」が融合する「ALL IN ONEの街」として印象づけ、「世界のSHIBUYA」としてブランディングしたいという東急グループの思惑があります。 「Greater SHIBUYA」の範囲内には東急不動産の保有する建物が集中しており、東急電鉄本体の価値向上はもちろんのこと、東急不動産の持つ保有不動産価値向上という側面も強くあります。こうした「面」での開発を進め、「Greater SHIBUYA」を実現させるためには、回遊性の向上がいわば最重要課題となっています。そこで、まずは渋谷川を軸にしたルートを育てていきました。 渋谷ストリーム脇を流れる渋谷川(画像:123RF) まずできたのが、2017年に完成した再開発ビル「渋谷キャスト」(渋谷区渋谷)を経由した原宿方面への南北軸です。渋谷キャストも、渋谷ストリームと同じくオフィスを中心としたビルですが、こちらはコワーキングスペースや居住空間が入り「クリエイターがより創造的なライフスタイルを実現できる」というコンセプトを持った複合施設です。商業スペースにはおしゃれなカフェやアパレルショップが入り、昼時には「キッチンカー」がやってきて楽しげな都市空間が演出されています。 そして先ほど紹介した「渋谷ストリーム」と「渋谷ブリッジ」が2018年誕生し、南側への回遊軸も形成されました。 2019年度中に移設した駅が供用開始予定2019年度中に移設した駅が供用開始予定 今後は渋谷駅と渋谷駅の西側を中心に再開発が進んでいきます。 まず渋谷駅は駅の構造を改造し、それと並行して駅ビル「渋谷スクランブルスクエア」が作られます。まず渋谷駅は現在離れている埼京線と湘南新宿ラインのホームを北へ移設、山手線ホームを最大16mの幅とした1面2線化などが行われます。更に東京メトロ銀座線も東急百貨店の3階から表参道側(東)へ130メートル移設を行う工事を現在行っており、今年度中には移設した駅が供用開始予定です。 そして駅ビルの渋谷スクランブルスクエア東棟が今年度に完成します。地上47階建て、高さは230mになります。そこで屋上は展望施設「SHIBUYA SKY」となり、地下2階から14階が商業施設、15階が産業交流施設「SHIBUYA QWS」、17階から45階が渋谷最大級のオフィスになる予定です。そして2027年には渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟が現在の東急百貨店東横店の場所に新たな歩行者デッキとともにお目見え予定です。 2019年11月に開業予定の「渋谷スクランブルスクエア」(画像:写真AC) さらに駅の西側ではバスターミナルを挟んで「東急プラザ」を建て替えた「渋谷フクラス」も今年度完成します。ここにはGMOインターネットグループが入居予定のオフィスのほか、2階から8階は「東急プラザ渋谷」になります。「東急プラザ渋谷」は“本物・本質的・普遍的なものの良さ”を大切にし、時間を積み重ね成熟していくことを楽しむライフスタイル「MELLOW LIFE」を提案することをコンセプトとしています。 更に渋谷駅の南西側では渋谷駅桜丘口地区の再開発が2023年度に竣工します。ここには地上39階の高層ビルをはじめとした3棟のビルがお目見えすることになっています。 さて、渋谷のまちの雰囲気はこうした再開発で変わっていくのでしょうか。 結論からいうと、今まで醸成されてきたまちの雰囲気を生かしつつ、「クリエイティブ」の面を強化していくものと考えられます。東急電鉄の「Greater SHIBUYA」構想を見ても周囲のまちを巻き込んだまちづくりだけでなく、クリエイティブ・コンテンツ産業の中心地としての渋谷を作っていきたいという意気込みが見られます。 これから渋谷は、大規模複合施設の建設・開業ラッシュとなります。それによって渋谷が東急の思い描くような、訪れたい・広がりのあるまちとして出来上がってくるのでしょうか。そして、今まで人々の愛してきた渋谷の文化や雰囲気は引き継がれていくのでしょうか。渋谷のまちが変化した姿は、これから徐々に見えてくることとなります。
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