もうすぐ初詣! 明治神宮でやってみたい「ブラタモリ式」参拝方法とは

1920年創建の明治神宮。その魅力について、東海大学観光学部教授の田中伸彦さんが解説します。


「コロナ時代」の初詣

 2020年は新型コロナウイルスとともに幕を開け、その不安が落ち着きを見せないままに暮れ行こうとしています。感染の懸念から世界中の人たちの行動様式や移動方法が一変、観光業やサービス業などを中心に大きなダメージを受ける1年となりました。

 もうすぐ2021年がスタートします。コロナの脅威は区切りなく続きそうですが、せっかく新年を迎えるのですから気持ちだけでも一区切りつけて心機一転し、新たなスタートを踏み出したいものです。

 さて2021年に「心機一転」を図るために詣でると、御利益がありそうなおすすめの場所はどこでしょうか。筆者(田中伸彦、東海大学観光学部教授)がおすすめしたいのは明治神宮(渋谷区代々木神園町)です。

空から見た明治神宮。荘厳な「神宮の杜」が広がっている(画像:野口克也)



 明治神宮の創建は1920(大正9)年で、2020年に鎮座100年を迎えました。これを記念して規模を縮小しつつも行事が行われ、多くの皇室関係者も参拝しました。

新たな100年を歩み始める明治神宮

 そんな明治神宮ですが、2021年から新たな100年、つまり「心機一転」の第1歩を踏み出します。2021年のお正月に明治神宮に詣でれば、われわれも新しい第1歩を踏み出す力を分けてもらえそうです。

 明治神宮には正月三が日だけで日本一となる300万人以上の参拝客者が訪れますが、大人数が押し寄せる初詣をためらう人も多いでしょう。

 実際、明治神宮でも大みそかから元旦の終夜参拝を取りやめ、12月31日も通常の閉門時間の16時で門を閉めることを決めています。

明治神宮の位置(画像:(C)Google)

 新型コロナウイルスの感染を避けるため、明治神宮では手水(ちょうず)舎のひしゃくを撤去したり、マスクやアルコール消毒の徹底を行ったりと、入念な対策を講じていますが、それでも心配という人はいるでしょう。

 その場合、日時をずらした分散参拝をしてもよいでしょう。ついでに明治神宮を探検してみるのも面白いかもしれません。

明治神宮のバックステージツアーのすすめ

 おすすめは、バックステージツアーです。

 バックステージツアーはもともと演劇界の言葉で、「普段見慣れている表舞台(メインステージ)ではなく、それを支える裏舞台を見学するツアー」のこと。最近は日本でも多くの劇場でバックステージツアーが行われ、人気イベントとなっています。

 都内でも、クラッシック音楽の殿堂・東京文化会館(台東区上野公園)の舞台裏を巡るバックステージツアーが2021年2月8日に開催される予定です。演劇でも、技術スタッフとともにステージを巡る劇団四季のバックステージツアーや、「照明・音響」や「コンサートホール」などのテーマを決めて舞台裏を巡る東京芸術劇場(豊島区西池袋)のバックステージツアーなどが有名です。

 また劇場に限らずテーマパークでも行われており、例えば米フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでは大変人気のあるコンテンツとなっています。

 明治神宮にも、普段は人気(ひとけ)の少ない閑静な散策道が社殿の周囲に広がっています。参拝を済ませたら密になりがちなメインの参道から1歩踏み出し、バックステージを巡ってみてはいかがでしょうか。

ディズニーランドとの思いがけない共通点

 東京ディズニーランドの園内はワールドバザールやウエスタンランド、トゥモローランドなど、「七つのテーマランド」にゾーニングされています。

 偶然ですが、明治神宮内苑(ないえん)も第1区から第7区まで、七つの事業区に分かれて設計されています。

明治神宮のゾーン配置。ディズニーランドと同じハブ&スポーク方式の空間構成となっている。書籍『林苑計画書から読み解く 明治神宮100年の森』より(画像:東京都公園協会)



 中央の社殿がある第1区がディズニーランドで言えばシンデレラ城で、シンデレラ城前の広場が社殿前の御苑(ぎょえん、第7区)となります。

 そして、その周囲を放射状に区切り、第2区から第6区が配置されています。実はこの構成は1955(昭和30)年に開園したカリフォルニア州アナハイムのディズニーランド、マジックキングダムの設計で採用され、東京ディズニーランドでも使われている「ハブ&スポーク方式」という手法と同じなのです。

 そう考えると、明治神宮はディズニーランドよりも30年以上も前にハブ&スポーク方式の設計手法を取り入れたことになります。

 開園当初に掲げられたウォルト・ディズニーのコンセプトに基づき、日々メンテナンスが続けられているディズニーランドだからこそ、夢と魔法の世界が色あせることなく今も輝いているのです。

苑内を彩る100年前の計画

 なお明治神宮でも、100年前に記された「林苑計画書」という書物に書かれたコンセプトに基づき、1世紀にわたってメンテナンスが日々行われてきました。

 100年前の林学・造園学の先人研究者たちが、現在の「明治神宮の杜」へと生態系が遷移していくことを見越し、各事業区を計画的に設計。木々が植えられたのです。

100年前に描かれた「神宮の杜」の未来予想図。このときに立てた計画が現在、目の前に実現している。造園学者・本郷高徳著『明治神宮御境内林苑計画』より

 その成果が、皆さんが目の当たりにしている、神苑(しんえん)と林泉が調和した荘厳な伝統美を持つ神宮の杜(もり)なのです

「明治神宮の杜」誕生秘話

 100年前、現在の明治神宮がある場所は現在のような森ではなく荒れ地でした。

100年前の明治神宮の敷地(南豊島御料地)ほとんど樹木が生えてない状況がわかる。内務省神社局編『明治神宮造営誌』より



 多くの人が勘違いしていますが、明治神宮は原生林(自然のままの森林)ではありません。100年前に人の手で植えられ、つくられた人工の森なのです。

 森林に詳しい専門家であれば、明治神宮のメインとなる参道脇に堂々とそびえ立つクスノキを見るだけで、「関東地方の原生林とは少し違う」と気づきます。関東地方は通常、クスノキは立派に群生しません。これらは100年前の神宮造営の際に、九州や台湾などの暖かい地域から寄進された移入樹木なのです。

 明治神宮の造営にあたって、興味深いエピソードはほかにも残っています。

 そもそも明治神宮とは、明治天皇と昭憲皇太后の御亡きがらが伏見桃山陵(京都市)に納められたことを受け、首都東京にも明治をしのぶ場所を残すべきだという声から計画されたのです。

 大隈重信ら政財界の重鎮は 日光東照宮の杉並木など、日本各地の著名な杉林をイメージし、明治神宮を荘厳な杉林に仕立てることを望んだそうです。しかし、林学博士の本多静六や造園家の折下吉延ら研究者たちは、大気汚染などの公害による枯死を心配して杉林を選択しませんでした。

 開苑当初は陽樹である松をメインに森を仕立て、ときがたつにしたがって、徐々に安定した照葉樹の森に遷移させる計画をつくりました。当時の政治家や実業家は、本多らによる科学的な説明を了解し、杉林をあきらめ、明治神宮を照葉樹林に仕立てることに同意したと言います。

 現在の日本は学術会議任命拒否問題で揺れていますが、100年前の産官学のきずなは強く、熱い議論を互いにぶつけ合いながらも、信頼関係にあったようです。幸いなことに、本多らの科学的予見を尊重した「林苑計画」に食い違いはありませんでした。

杜に隠されたさまざまな秘密

 本多らによる「明治神宮の杜」への仕掛けや工夫は、今でも園内各所で見られます。第1区や第7区はもちろん、周囲の第2区から第6区のバックステージにもたくさん残されています。それらの場所はあまり密にならないので、参拝後のバックステージツアーをおすすめします。まるで「ブラタモリ」の様に、明治神宮に隠された秘密を探検できます。

 ちなみに現在は人気番組となっている「ブラタモリ」ですが、2008(平成20)年ごろは、まだ実験的な番組として放送されていました。当時、タモリさんは造園家の涌井雅之さんら の案内で、明治神宮や表参道、原宿などを巡っていました。そのため、明治神宮は番組人気が出ることを実証した、番組の起源の地でもあるのです。

 なおバックステージツアーに役立つセルフガイドブック『林苑計画書から読み解く 明治神宮100年の森』という本が、明治神宮100年を記念して東京都公園協会(新宿区歌舞伎町)から出版されています。

『林苑計画書から読み解く 明治神宮100年の森』(画像:東京都公園協会)

 2021年のお正月は101年目を迎えて新たな歴史を刻んでいく明治神宮を参拝し、明治神宮の杜が維持された秘密をぜひ読み解いてください。


【地図&航空写真】明治初期の「明治神宮」周辺を見る

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