「ファストファッションに違和感」 皮革製品の展示会で学ぶ、動物の命をもらうことへの感謝と敬意

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「ファストファッションに違和感」 皮革製品の展示会で学ぶ、動物の命をもらうことへの感謝と敬意

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古くから続く東京の地場産業のひとつ、皮革製品製造。その市場は毎年縮小し続けています。安さを前面にしたファストファッションやネット通販商品があふれる今、あらためて革製品の良さとは何か、知ってみたくなりました。

ファストファッションの対極にある革靴と革鞄

 全盛期だった20年ほど前と比べると、事業所数や従業員数、売上額は今や3分の1ほどにまでに落ち込んでいるそうです。

 古くから続く東京の地場産業のひとつ、皮革製品製造。1990年代後半ごろまでは、身だしなみに気を配ることをビジネスマナーのひとつと捉えるビジネスマンたちが、4万円前後の革製バッグやシューズを年に3点ずつぐらい買っていったものだといいます。

「それからもう20年以上経ちますから。今の日本人の価値観は当時とだいぶ変わってしまったのでしょう。あの頃の時代が戻ることはもうないのかもしれません」

 2019年11月19日(火)。東京国際フォーラム(千代田区丸の内)で始まった「東京皮革製品展示会(TOKYO LEATHER & GOODS EXHIBITION)2020」の会場で、東日本鞄工業組合理事長の澤浦正さんは業界の来し方行く末に思いを馳せます。

 展示会を主催するのは、東京都と業界組合8団体でつくる実行委員会。1998(平成10)年から27回続く催しで、2019年は鞄や靴、ベルト、小物などを扱う計17社がブースを出展しました。

東京皮革製品展示会に並んだ革製品の数々(2019年11月19日、遠藤綾乃撮影)



 この20年で皮革産業が苦戦を強いられている背景のひとつには、ファストファッションに代表される安価型消費スタイルの定着や、長引く景気低迷などがあります。

 さらに、両手が自由になるナイロン製リュックサックや歩きやすいスニーカーがビジネスシーンでも取り入れられるようになり、かつてメインターゲットだったビジネスマンが高価な日本製皮革製品から離れてしまったことも要因だといいます。

 確かに、手間と時間を掛けて手入れをし、長い間大切に使い続けていく革鞄や革靴は、いわばそれらの対極にある品物といえるのかもしれません。

「所有」に関するパラダイムの転換

 日本に「ファストファッション」の波が押し寄せたのは2000年代半ばごろ。外資系ブランドの日本への進出が相次ぎ、2009年には新語・流行語大賞のトップテンにも選ばれました。

 極めて安い値段でやバッグやシューズ、服を買い、短いサイクルで捨てたり買い替えたりをしていく消費のスタイルは、景気停滞の煽りを食う若者を中心に瞬く間に支持を得ていきました。

 モノを持たないことを是とする「ミニマリスト」という生活スタイルが注目されたり、服や持ち物をネットで気軽に売り買いできるフリマアプリが大ヒットしたりしたのも同じ潮流のなかでの出来事です。

東京皮革製品展示会に並んだ革製品の数々(2019年11月19日、遠藤綾乃撮影)



「それでも、革製品を長く大切に使っている私からすると、簡単に買えて簡単に手放せる今のファッションの有りようは、やはりどこか違和感を覚えるところがあります。そのような消費スタイルになっていくなかで、(物を長く大切にするという)文化や振る舞いまで手放してしまっているとしたらちょっと寂しいとは思いますね」(澤浦さん)

 現代社会の、物の所有や扱い方の変容について疑問を呈する澤浦さん。そんな時代だからこそと、皮革製品の良さをあらためて語ります。

「ナイロンや合皮は石油から作ったものですが、革は動物の命をいただいて作るものです。太陽を浴び、雨風を受け、草を食んで育った動物たちの皮は、国や地域によって触り心地がそれぞれでまったく違うほどに、個性的でエネルギッシュで魅力的です。

 ナイロンや合成皮革の製品は、使えば使うほど劣化していきますが、本革製品は、使えば使うほど色や触り心地、風合いが変化していきます。良質なのものを丁寧に長く扱い、その変化を味わうことは、かつて大人のステータスであり楽しみそのものでもありました。若い世代の人にも、まずは一度体験してもらいたいと思っています」

 2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、国内のみならず世界的にも「東京ブランド」の価値が再注目を集めている今は好機ともいえます。展示会は20日(水)18時まで、東京国際フォーラムのロビーギャラリーで開かれています。

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