コロナ禍で変わるクリスマス商戦 百貨店・ショッピングモールが新たに仕掛ける「ネット販売」とは
三越伊勢丹が始めた「アート特化」のネットショップ 季節は年の瀬になり、イルミネーションがまぶしい時期ですが、クリスマス商戦もコロナ禍で2019年とは大きく異なっています。 そうしたなか、大手各社が力を入れているのがネット販売の充実です。クリスマスを前に、さまざまな企業が個性的な取り組みで集客に乗り出しています。 百貨店の雄・三越伊勢丹ホールディングス(新宿区新宿)が12月16日(水)から開始するのは、「日常で楽しめるアートを提案する」ことをテーマとしたコンセプト型のネットショップ「イセタンマート」です。 伊勢丹 新宿店(画像:若杉優貴) これまでの百貨店各社によるネット通販・ECショップは贈答品や百貨店向けの高級アパレル、化粧品が中心でしたが、イセタンマートはアートを大きなテーマとしています。 例えば、現代アーティストの奈良美智(よしとも)氏とコラボレーションしたスケートボードや、二ューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションのなかでも人気の高いゴッホの「The Starry Night(星月夜)」が描かれた折りたたみ傘など、アート性を感じるツールやオブジェ、ファッションアイテムを600点以上展開しています。 イセタンマートではオープニング記念として、「BRANDALISED presents BANKSY’S GRAFITTI MART」と題し、覆面アーティストとして知られるバンクシーの作品を使った限定アイテムの販売も行われます。 アーティスト・百貨店・消費者をつなぐ取り組み 三越や伊勢丹などの大手百貨店は、その創業初期から実店舗でアート作品の販売はもちろんのこと、アーティストの支援・育成に力を入れてきた歴史があり、現在も多くの店舗で実店舗型の「アートギャラリー」を併設するなど、アートとは切っても切り離せない存在となっていました。 しかしオンラインでのアートや関連商品の販売はまだ少なく、それゆえイセタンマートには、新たな時代の「アーティスト」「百貨店」「消費者」の三つをつなぐネット上の架け橋として成長に期待がかかります。 「イセタンアート」のイメージ(画像:三越伊勢丹ホールディングス) これまでの百貨店のネットショップとは一味違ったものとなりそうなイセタンマート。気になる人はぜひチェックしてみては。 生配信に挑戦するららぽーと生配信に挑戦するららぽーと 一方、三井不動産(中央区日本橋室町)と三井不動産商業マネジメント(同区日本橋浜町)が運営する、ららぽーとを始めとしたショッピングセンターが取り組むのは、動画配信による「ライブコマース」です。 ライブコマースとは、実店舗のスタッフやタレントなどのインフルエンサーが薦める商品を動画の生配信で紹介・販売するもので、いわばインターネットを使った生放送のテレビショッピングと言えます。 配信が行われるコレド室町テラス。ここからは「誠品書店/誠品生活」が配信に参加する(画像:若杉優貴) 配信は12月14日から23日にかけて、三井不動産商業マネジメントが運営する首都圏のららぽーと各店やコレド室町テラス(同区日本橋室町)、ダイバーシティ東京プラザ(江東区青海)などからインターネット上のライブストリーミングサービス「Livekit」「TIG LIVE」を活用する形で実施。顧客からの質問に対してリアルタイムな回答も行われます。 コロナ後のビジネスモデル構築に向けて このライブコマースの最も大きな特徴となるのが、さまざまな業種のテナントが参加するということです。 三井不動産商業マネジメントが運営する各施設は、イオンモールや百貨店とは異なり、決まった「核店舗」がある訳ではなく、施設ごとに全く異なったテナントが出店しています。 今回のライブコマースでは、そうしたショッピングセンターごとに異なるテナントの多様さを生かす形で、女性の支持を集める「AZUL BY MOUSSY(アズール バイ マウジー)」、スーツの「ORIHICA(オリヒカ)」、さらには若者に人気の「GAP」や「WEGO」などといった各種アパレル、化粧品の「ファンケル」、シューズの「ABC-MART」、さらには台湾の大手書店・雑貨店「誠品生活」など、販売品目の垣根を越えた店舗が参加。 配信される動画内で欲しいと思った商品がある場合は、動画内のリンクから三井ショッピングパーク(三井不動産商業マネジメントが運営するアウトレットモールの総称)の公式通販サイト「&mall」はもちろんのこと、実際に来店して商品を手に取り、確認して購入することもできます。 配信のイメージ。と三井ショッピングパークの12月のライブコマース配信予定(画像:三井不動産商業マネジメント) 三井不動産商業マネジメントではこうしたライブコマースをまずは半年間試験導入して今後継続するかどうかを決めるとしており、年明けにも新たな店舗を加える形での配信が行われると見られます。 実店舗とネット通販の融合を図るべく、個性的な取り組みにより新たな形でのクリスマス商戦に挑むこととなった百貨店やショッピングセンターたち――いずれも実験的な試みですが、コロナ禍という逆風を逆手に取る形で成長を遂げ、コロナ後へとつなげることができるかどうかが注目されます。
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