築100年!?都心にある「実はレトロ」な百貨店に建築当時の面影を見る

都心には、一見すると新しく見えるものの、実は歴史的建造物という建物も少なくありません。今回は、そんなレトロビルの中から「松坂屋上野店」「松屋銀座」の魅力について、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。


 東京都心のデパートといえば、重要文化財に指定されている「日本橋三越本店」や「日本橋高島屋S.C.本館」をはじめとするレトロ感溢れる文化財級の建物を思い浮かべる人も多いかもしれません。

一方で、一見すると新しく見えるため「実は歴史的建造物でありながら外観だけでは古さが分からない!」という建物も少なくありません。

今回は、登録有形文化財などに指定されていないものの、戦前から同じ場所で営業を続けている2つのデパートに隠されたレトロスポットをご紹介しましょう。

レトロ感溢れる内装は外観とギャップ大!――上野松坂屋

 今回最初に紹介するのは、東京メトロ上野広小路駅に直結する百貨店「松坂屋上野店」。

 同じ銀座線にある東京メトロ三越前駅が三越の出資により建設されたのは有名な話ですが、実はこの上野広小路駅は三越前駅が造られることを受けて松坂屋の出資によって建設されたもの。その名残からか、現在も次駅アナウンスでは「松坂屋前」という店名が読まれ、駅構内には「上野松坂屋前」の表示も見られます。

 松坂屋上野店は1768(明和5)年を「開業年」としていますが、これは名古屋で1611(慶長16)年に創業した「いとう呉服店」(現:松坂屋名古屋店の前身)が当地にあった呉服店「松坂屋」を買収して江戸に進出した年。都内のデパートで江戸時代に開店し、現在も同じ場所で営業しているのは「日本橋三越本店」と「松坂屋上野店」の2店だけとなっています。

松坂屋上野店本館と2017年に完成した上野フロンティアタワー(松坂屋南館・パルコヤ)。 どちらも新しい建物に見えますが、左の本館はもうすぐ築100年を迎えます。(画像:若杉優貴)



 現在の松坂屋上野店は本館と南館で構成。2017(平成29)年に建て替えられた南館には大丸松坂屋系列となっているファッションビル「上野パルコ(パルコヤ)」なども出店しています。

 松坂屋上野店本館の外観は1980(昭和55)年に建築家・鈴木エドワード氏などの手で全面リニューアルされており、一見すると新しい建物のように見えます。しかし、実はこの建物は関東大震災後の復興計画に基づいて1929(昭和4)年に建築されたもの。当時は日本橋三越本店などと並び、東京市内を代表する豪華で近代的な百貨店として名を馳せていたといいます。

 松坂屋上野店で注目したいのが、アナログ感満載のエレベーター。ここには建物の外観とは裏腹に建築当時の面影が残されており、可愛らしい丸型のインジケーターで階数をチェックしつつ籠内に入ると昭和の映画の世界にタイムスリップしたかのような気分にさせられます。

丸型のインジケーターが可愛いエレベーター。籠が到着すると電球が光ります。 「御案内」の文字もレトロ。(画像:若杉優貴)

 この松坂屋上野店には、開店当時より日本初のエレベーターガール(当時の松坂屋では「昇降機ガール」)が配置されたことでも知られます。ちなみに、これより古い建物の日本橋三越本店などにもエレベーターは設置されていましたが、籠内に配置されていたのは男性だったとのこと。松坂屋が採用したエレベーターガールは話題を集め、瞬く間に全国の百貨店へと広がることとなりました。

 21世紀になりエレベーターガールは松坂屋上野店からも姿を消しましたが、そのぶん(もしエレベーターが空いていたならば)ゆっくりと籠内のデザインを眺めてみることもできます。

エレベーター籠内も映画の世界に迷い込んだかのような雰囲気。 自動運転化により10数年前にリニューアルされたため全てが建築当時のものというわけではないそうですが、金色に輝くファンデリアの彫刻を見つめていると「もう少し乗っていたい」という気分に。(画像:若杉優貴)

 このほか、松坂屋上野店の本館内では階段室や神社など随所に建築当時の面影を見ることができます。天井などの装飾は同じデザインに見えてもよく見ると階ごとに違っている部分もあるので、まずはエレベーターで屋上まで昇ったあと神社でお参りをして、そして階段を降りながら店内を散策してみては。

美しい装飾がある松坂屋上野店の階段室。(画像:若杉優貴)

実は築100年!裏側は「別の顔」――松屋銀座

 明治に入った直後、1869(明治2)年に横浜で「鶴屋呉服店」として創業した松屋。その後、1889(明治22)年に神田の松屋呉服店を買収、そして関東大震災後の1925(大正14)年には銀座に進出しました。この神田の店舗は現在のJR神田駅やJR新日本橋駅の近くにあったそうで、松屋も元々は三越などと同じく「日本橋にある百貨店」の1つでした。

 東京メトロ銀座駅と直結する現在の本店「松屋銀座」は一見新しい建物に見えますが、実はこの建物こそが1925年の銀座進出時に建設されたもの。建築当時は東洋一といわれる吹き抜けが設けられるなど豪華な内装が話題になったといいますが、現在の館内にはかつての面影はほとんど見られません。

中央通りから見た銀座松屋。

 しかし、中央通り側から裏手(あづま通り側)に回るとその姿は一変。外壁には建築当時の外装がそのまま残っており、LEDが輝く正面部分とは大きく異なる「老舗の風格」を見ることができます。

 もうすぐ築100年を迎える松屋銀座。裏手の一部には耐震補強の鉄骨も見え、まだまだ「銀座の顔」として国内外の買い物客を迎え入れてくれることでしょう。

実は築100年近い松屋銀座。裏側には建築当時の小さな窓が連なる外装が。
開業時の松屋銀座。正面も裏側に残る部分と同じ外装だったことがうかがえます。 (1925年に発行された絵ハガキ、筆者蔵)

 今回は、外観は姿を変えつつもレトロな面影を残す都心のデパートを紹介しました。

 都内ではデパート以外にも「一見古くは見えないものの実はかなり古いレトロビル」がいくつかありますが、そうした建物ほど何の予告もなく壊されてしまうことも少なくありません。各地で再開発が続く今だからこそ「知られざるレトロビル巡り」をしてみてはどうでしょうか。

 なお、百貨店内にはお客さんが多い場所や撮影禁止の場所もあるため、もし売場近くに写真に収めたい場所がある場合は近くの店員さんに一声掛けることをお忘れなく。

現在「百貨店」ではないため取り上げませんでしたが、ビックカメラ(旧ビックロ)が入居する「新宿三越ビル(旧三越新宿店)」も関東大震災後の1929(昭和4)年築。 階段などには昔の面影が見られます。気になる人はチェックしては。

参考:
・三越 編(1990年)『三越85年の記録』株式会社三越
・高島屋史料室
・大丸松坂屋ウェブサイト


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