1月に引退 非鉄道ファンにささげる惜別の山手線「E231系」
2020年1月をもって山手線から引退する「E231系500番台」。その魅力と歴史について、フリーランスライターで近著に『私鉄特急の謎 思わず乗ってみたくなる「名・珍列車」大全』(イースト・プレス)がある小川裕夫さんが解説します。山手線の主役が交代 2002(平成14)年から山手線で走り始め、2010年前後から山手線の「顔」として親しまれてきた車両「E231系500番台」が2020年1月をもって山手線から引退します。 鉄道に詳しくない人にとってE231系500番台と言われてもピンときませんが、その姿を見れば、「あぁ、あの車両のことか」と理解できる人も多いのではないでしょうか。 長らく山手線の顔として活躍したE231系500番台も、とうとう見納め(画像:写真AC) 首都圏の大動脈でもある山手線は、常に時代の変化に敏感です。時代の流れは山手線の車両にも大きく反映されます。 E231系500番台と一口にいっても、時代ごとにバリアフリー化が図られたり、混雑緩和のためにラッシュ時に座席を収納できるようにされたり、ホームドア設置にあたり車両のドア数をそろえる必要性から1両あたりの扉を片側6ドアから4ドアへと改造されたり、さまざまな移り変わりを経ています。 時代の波を乗り切ったE231系500番台ですが、その間も鉄道車両の技術向上は進みました。そのため、山手線の主役交代を余儀なくされることになったのです。 他線区へと活躍の場を移したベテラン車両も JR東日本は2015年から、後継となる新型車両E235系を登場させました。そして、約5年の歳月をかけて新型車両へと置き換えを進めてきました。 山手線から引退するとはいえ、E231系500番台はまだ20年ほどしか運用されていません。古くなったとはいえ、まだ現役車両として活躍できる車両です。 長らく山手線の顔として活躍したE231系500番台も、とうとう見納め(画像:小川裕夫) 鉄道車両は1両あたり数億円もします。山手線は一編成11両で運行されているので、一編成を新しく置き換えると10億円以上もの出費になる計算です。 地方では山手線のような一編成11両という長大編成では走りませんが、それでも1両数億円もする高価な鉄道車両を新造することは容易ではありません。 そのため、首都圏で活躍したベテラン車両が地方私鉄や地方路線に移籍して活躍するケースもあります。山手線のE231系500番台も、すでに山手線からの運用を離脱した車両が転用改造された上で他線区へと活躍の場を移しています。 E235系、登場当初「スマホの画面のようだ」E235系、登場当初「スマホの画面のようだ」 山手線の主役を務めたE231系500番台が完全に引退してしまうことになったため、このほどJR東日本はE231系500番代に「ありがとう」のヘッドマークを掲出。さよなら運転を始めています。 最後の勇姿を記録に収めるべく、沿線では「ありがとう」のヘッドマークを掲出したE231系500番台を撮るファン・沿線住民の姿が見られます。 登場時に話題になった山手線の新型車両E235系は斬新な顔(画像:小川裕夫) 世代交代を果たし、新たに山手線の主役となるE235系は顔のデザインが斬新だったことから、登場当初は「スマホの画面のようだ」などと評されました。そして、会員制交流サイト(SNS)などでコラージュが作成されるほどの人気を博します。当初は電車っぽくないと評されたE235系の顔は、5年の歳月を経てすっかり山手線ユーザーのおなじみになっています。 現在、E235系は山手線にしか走っていませんが、JR東日本は2020年度から横須賀線・総武快速線でもE235系を運行すると発表しています。総武線快速の電車は内房線・外房線・成田線・鹿島線などにも乗り入れているため、今後は千葉県や茨城県にもE235系が走ることになります。 山手線の主役はE231系500番台からE235系へと交代するわけですが、500番台という形式番号からもわかるように、E231系にはいくつか種類があります。それらは細かな違いのため、鉄道に詳しくない人が判別することは難しいのですが、首都近郊では231系0番が中央・総武緩行線で、1000番台が東海道本線や東北本線・高崎線などで、3000番台が川越線や八高線で運行されています。 第二の人生を歩むE231系を見つけよう第二の人生を歩むE231系を見つけよう 鉄道ファンを除けば、大半の人にとって鉄道は移動の手段でしかありません。E231系500番台がE235系になったところで日常生活に大きな変化はありません。乗り合わせたときに「あぁ、新しい車両だな」と感じるぐらいでしょう。 しかし、東京近郊に住んでいれば、無意識のうちに通勤や通学、買い物や外出の際に1度はE231系に乗車しているはずです。 長らく山手線の顔として活躍したE231系500番台も、とうとう見納め(画像:写真AC) 次に山手線に乗車する際は、過去の記憶をたどりながら、山手線から引退して第二の人生を歩むE231系500番台に思いをはせてみるのもいいかもしれません。
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