タピオカミルク、チーズティーの次は? 東京で進化を遂げる「お茶ブーム」に迫る
陰りが生じたタピオカブーム 2019年の新語・流行語大賞のトップ10にノミネートされた“タピる”は、「タピオカミルクティーを飲むこと」を意味する新語です。 新たなお茶の楽しみ方として注目されている「お茶 × 酒」のコラボ。写真は静岡で人気急上昇中のクラフトカクテル「宵茶」(画像:小川裕夫) 流行発信地でもある原宿から女子中高生を中心に広まったタピオカは、社会全体を動かすほどの一大ムーブメントにもなりました。 しかし2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、繁華街から人出は消失。タピオカブームにも陰りが生じています。 ただタピオカブームが失速したのは、新型コロナウイルスだけが要因ではありません。そもそも流行は移ろいやすいものであり、流行に敏感な女子中高生は新しいトレンドへ心を移しやすいのです。それは、今に始まった話ではありません。 チーズティーのベースは「お茶」 そんな中、新たなトレンドとして注目されているのがチーズティーです。タピオカ同様に、原宿のカフェではチーズティーをメニューに加える店が急増しています。 本格派ティーストア「THE ALLEY(ジ アレイ)」の「チーズクリーム黒糖ラテ」と「チーズクリーム白桃烏龍」(画像:ポトマック) 流行に伴ってタピオカの飲み方・食べ方はバリエーションを増やしましたが、それでもタピオカはミルクティーに大粒のタピオカを投入して飲むスタイルが一般的でした。 一方、流行の兆しを見せているチーズティーは、お茶の上にクリームをトッピングしたドリンクです。お茶をベースにしているとはいっても、そのお茶は緑茶・紅茶・ウーロン茶・抹茶・フレーバーティーなど自由。そのバリエーションが幅広いことも、人気に火をつけています。 そうしたお茶にバリエーションも豊富ながら、トッピングするチーズのバリエーションも多く、そのために店ごとに味が大きく異なります。 いくつもの味を楽しむことができることも、チーズティーを人気にしている要因のひとつです。もちろん、チーズティーにタピオカをトッピングすることもできます。 コンビニ業界からは早くも熱い視線が注がれています。コンビニ大手のセブン-イレブン・ジャパン(千代田区二番町)は、すでに2019年11月からチーズティーを販売。ローソンは、6月16日(火)からマチカフェ展開店舗でチーズティーの提供を開始しました。 タピオカ、そしてチーズティーと長期的な「お茶ブーム」になりそうな気配ですが、一方でお茶業界は危機に直面しています。 緊急事態宣言の影響はお茶どころにも緊急事態宣言の影響はお茶どころにも 世界を恐怖に陥れている新型コロナウイルスは、2020年2月頃から日本でも感染拡大の危険性がささやかれるようになりました。そして、3月半ばからは外出自粛が呼びかけられ、4月7日(火)に緊急事態宣言が発出されています。 緊急事態宣言は5月25日(月)に全面解除されましたが、期間は1か月超にも及びました。 新茶の最盛期である八十八夜を直撃したため、お茶業界は大きな影響を受けたのです。特に、摘み取り作業や出荷作業が困難を極めたこともあり、全国屈指のお茶どころである静岡県は対応に苦慮することになりました。 茶畑と富士山(画像:写真AC) 摘み取られたものの、倉庫に眠ったままになっている茶葉も多く、そのために農水相などもお茶の消費喚起に力を入れています。 自宅で手軽につくれるチーズティー チーズティーブームは、そんなタイミングで起きました。 しかし、おしゃれなカフェでチーズティーを飲むのは楽しいひとときですが、密を気にする人にとって原宿などの人ごみへ出掛けることをためらう気分になるかもしれません。 しかし、わざわざ原宿まで出掛けなくてもチーズティーを楽しむことはできます。チーズティーの原材料は近所のコンビニやスーパーなどでも簡単に買うことができるからです。 また、市販のペットボトルのアイスティーや家に残っているティーバッグ、茶葉を使ってお茶を入れ、スーパーやコンビニで売っているありきたりのチーズでもおいしいチーズティーをつくることができます。既製品で自宅で手軽につくれる・それが、チーズティーの大きな特徴です。 クックパッドやデリッシュキッチンといったレシピサイトにも、すでに多数のレシピが投稿されています。それらを見れば、初めてでも安心してチーズティーづくりにチャレンジできます。 大手レシピサイト「クックパッド」に掲載されているチーズティーのレシピ(画像:クックパッド) 新型コロナウイルスの感染拡大によって危機に直面したお茶業界は、チーズティーという新たなムーブメントをきっかけにして巻き返しを図っています。 注目される「お茶 × 酒」のコラボ注目される「お茶 × 酒」のコラボ そして、チーズティーとともに新たなお茶の楽しみ方として注目されているのが、「お茶 × 酒」のコラボです。 大手飲料メーカーでは、早くから緑茶ハイやウーロンハイ、焼酎のお茶割りといった飲み方を提唱し、夜のお茶消費にも力を注いできました。缶入りの緑茶ハイなども珍しくなくなり、居酒屋でも定番メニューになっています。 緑茶ハイやお茶割りにつづく新たな「お茶 × 酒」のコラボとして、静岡県では日本茶のクラフトカクテルを広める取り組みが始まっています。 日本茶のクラフトカクテルと言われてもピンときませんが、日本酒・ウオッカ・ウイスキーといったアルコール類に茶葉を1~3日ほど漬け込んだ店独自のオリジナルカクテルのことです。 店ごとにレシピが異なるため、クラフトビールにあやかってクラフトカクテルと呼ばれていますが、静岡県では静岡市が中心になってお茶をベースにしたクラフトカクテルを「宵茶(よいちゃ)」と名付け、全国への拡大に取り組んでいます。 静岡県が取り組む「宵茶」プロジェクトと同様に、東京でも「お茶 × 酒」をコラボさせるムーブメントが起きています。東京では「宵茶」と呼ばれていませんが、中央区日本橋人形町の「おちゃらか」(現在は移転準備中)や、港区南青山の「櫻井焙茶研究所」が「お茶 × 酒」のコラボを楽しむための提案やメニュー提供をしています。 港区南青山の「櫻井焙茶研究所」のウェブサイト(画像:櫻井焙茶研究所) ふだん何気なく食卓で飲むお茶は昔ながらの古いイメージがいまだ根強くあります。しかし、知らず知らずのうちにお茶は進化を遂げ、時代とともに新しい味が次々と生まれているのです。
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