東京五輪 都内小学校の相次ぐ観戦辞退は当然か? 灼熱の中、児童を引率するのが危険すぎるワケ
真夏の集団行動は危険を伴う 熱中症への不安を理由に、東京オリンピック・パラリンピックの観戦を辞退する東京の小学校が続出しているという記事が2019年12月10日(火)、朝日新聞デジタルで配信されました。 今回は、児童たちが目の前でオリンピックやパラリンピックを観戦するという貴重な機会を辞退するに至った決断を考えて行きたいと思います。 熱中症防止のイメージ(画像:写真AC) 自国開催のオリンピックやパラリンピックを観戦するという機会は、通常滅多にありません。同級生と観戦すれば、その子にとって一生の思い出になるでしょう。 しかし報道にもあったように、辞退した学年は主に小学1年生から3年生までの低学年が中心です。児童たちが集団行動をしていると、教員はどうしても児童ひとりひとりに目を届けにくくなります。 またオリンピックやパラリンピックの観戦は、交通渋滞を考慮して公共交通機関を利用する移動が推奨されていることから、トラブルに巻き込まれることなく全員を無事に引率できる保証もどこにもありません。 児童が熱中症になったときに対応する教員も必要となり、引率の数を増やさなければなりません。迷子や連れ去りなど最悪の事態を想定すると、低学年児童を観戦に連れていくには教員側の覚悟が必要です。 灼熱の中を移動し、長時間観戦することは危険を伴うものです。とくに、生まれたときからエアコンのある環境で育っている児童は、想像以上に体力を消耗します。学校側が観戦より児童を守ることを優先するのは、当然のことです。 公立学校のエアコン導入率はほぼ100%公立学校のエアコン導入率はほぼ100% 2010年の記録的な猛暑を受け、東京都では公立の小中学校にエアコンの導入を進めてきました。その結果、現在ではほぼ100%の公立学校でエアコンが完備されてます。自宅にはエアコンがあるけど学校にはない、といった状態は解消されており、児童が空調の整った環境で勉強に集中できるようになっています。 東京オリンピック・パラリンピックのイメージ(画像:写真AC) その反面、とくに低学年の児童たちは暑さに慣れず急激な体調の変化を起こす危険性もあるのです。東京の夏は大人でもこたえます。児童たちに何か起きてもおかしくありません。 競技会場に隣接している学校の児童であれば、移動に伴うリスクは最小限にとどめられます。しかし、会場から離れた場所の小学校の児童たちは猛烈な暑さの中、公共交通機関を利用して移動しなくてはなりません。 暑さに慣れていないと判断力が落ちたり集中力も途切れてしまい、知らぬ間にグループから離れてしまうことも考えられます。屋内競技の観戦であっても、天候によっては移動時に炎天下の中を歩くはずです。観戦という「貴重な体験」と熱中症などの「トラブル」を天秤にかければ、多くの小学校では後者を選択するでしょう。 熱中症の救急搬送ピークと重なる開催期間 総務省消防庁によると、直近3年間で熱中症の救急搬送が一番多い月は2017年と2018年が7月、2019年は8月となっています。とくにオリンピックの開催期間は7月下旬から8月上旬と、救急搬送のピークと重なっています。 こうした明確なデータを見てしまうと、教育現場が観戦に二の足を踏むのは当然と言えるのではないでしょうか。学校の規模にもよりますが、何事もなく1学年100人程度の低学年児童を引率出来るとは限りません。 東京オリンピック・パラリンピックのイメージ(画像:写真AC) 学校教育の下で何か起きたら、学校側が責任を問われるのは避けられません。自国開催という千載一遇のチャンスを見逃すのは教員たちも難しい決断だと思います。しかし、熱中症の危険度が高まる時期に、低学年の児童を引率して集団行動をとるにはデメリットが多すぎます。児童たちを保護者に無事に戻すことを最優先に考えれば、オリンピックやパラリンピックの観戦を辞退する流れが加速したのは自然なことといえます。
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