地下鉄「大江戸線」の車両はどのように搬入されている? 公園の地下に広がる「秘密基地」を知っていますか
ファンを魅了するふたつの魅力 2020年に全線開業20周年を迎えた都営大江戸線。沿線の勝どき・晴海周辺はこの期間、予測を上回る勢いで利用者が増加。駅の拡張工事も行われました。 また大規模タワーマンションを含む再開発に向けて、勝どき駅にはまだ何の建物もない方角に改札機が設置されています。地下道を建設して駅直結にする予定なのだといいます。ある日突然、壁の向こうから道が現れると思うとワクワクします。 大江戸線の駅名標(画像:写真AC) そんな大江戸線ですが、「コンパクトな車両」と「駅の深さ」が特徴です。 愛着心すら湧くコンパクトな車両が採用されたのは、建設費の圧縮などが理由です。開業当時は驚かれ、なにしろ従来の地下鉄に比べると1割あまりも小さく、天井も低い。身長が180cmくらいの人が乗れば、ガリバー気分が味わえるとも言われたほどです(『FOCUS』2001年4月11日号)。 また駅の深さたるや、「隣駅に移動する程度なら、ホームまで深すぎるので、むしろ歩いたほうが早い」とジョークになるほど。 今では慣れている人が多いですが、路線は地下ながらアップダウンが多いため、ジェットコースターのようにエキサイティングな路線としても話題になりました。ちなみに最近はコロナ禍による換気対策で窓が開いていることもあり、狭いトンネルの中に響くブレーキ音をじかに聞け、エキサイティングさもさらに感じられます。 車両はどうやって地下に搬入されたのか車両はどうやって地下に搬入されたのか ここで気になるのが、こんな深い地下を走る大江戸線の車両はどうやって搬入されたのかということ。かつて夫婦漫才コンビの春日三球・照代が、 「地下鉄の電車はどこから入れたの? それを考えてると一晩中寝られないの」 「階段から入れるんですよ」 というギャグを1970年代後半にはやらせましたが、当時の営団や都交通局には子どもからの問い合わせが殺到したといいます。 大江戸線の六本木駅(画像:写真AC) もちろん階段ではなく、地上部分から搬入するか、クレーンを使って地下に下ろすわけですが、全て地下を走る大江戸線では電車1両が入る大きさの立て坑(垂直方向に掘られた坑道)を作り、そこから地下へ下ろしました。 ちなみに、車両は愛知県や山口県にある工場から海上輸送し、トレーラーに詰め替えて搬入。単純明快な作業ですが、膨大な数の車両を誤りなく搬入しなければならないため、それは大変な作業だったことでしょう。 保管場所の広さは東京ドームの約1.5倍 こうして無事に地下へ入った車両ですが、普段はどこに保管されているのでしょうか。 現在、大江戸線のメインの車両基地となっているのは江東区の木場にある木場車両検修場です。緑あふれる木場公園の地下に東京ドームの約1.5倍にあたる約7万平方メートルの床面積を有しています。 江東区木場にある木場公園(画像:(C)Google) 大江戸線は部分開業した1991(平成3)年時点で、現在の練馬区高松にある高松車庫を光が丘車両検修場として利用。当初の計画によると、車両基地は埼玉県新座市か練馬区大泉学園町、あるいは光が丘南部に設ける計画になっていました。 しかし既に住宅地の建設計画が進んでいたことや、騒音・振動の問題を避けるために木場公園地下への設置が決定されたのです。 木場公園は、材木業者が新木場へ移転していった昭和40年代に防災公園として計画され、1992(平成4)年に開園。その時点ですでに車両基地を造ることが決まっていたため、公園は車庫の天井の上に土を盛る形で施行。実際の工事では完成していた天井部分の下を掘り下げて、2階建て構造の車両基地が建設されました。 木場公園の南にある「検修場」木場公園の南にある「検修場」 そんな車両基地ですが、Googleマップで「木場 車両基地」あるいは正式名称の「木場車両検修場」を検索しても、そのものズバリは表示されません。木場公園の南側に「検修場」と「大江戸線木場庁舎」が表示されるだけです。 木場公園の南にある「検修場」と「大江戸線木場庁舎」(画像:(C)Google) 木場庁舎には地下へと通じる換気塔が伸びており、地下に巨大な車両基地があることを知ると、さながら「秘密基地」の地上構造物のようにも見えます。 換気塔はこのほかにも数か所あるのですが、公園内にある休憩・展示スペースの「木場ミドリアム」近くの換気塔は景観に配慮してなのか、周囲は樹木で覆われており、より「秘密基地感」があります。 Googleマップ上で「検修場」と表示される建物は、巨大なシャッターのあるコンクリート製の建物です。これこそが車両搬入口で、新造車両はここか高松車庫の搬入口のどちらからか地下へと搬入され、使用されるというわけです。 なお大がかりな車両検査となると、電気機関車でけん引されて、都営浅草線の車両がある馬込車両検修場で実施されます。その作業のために大江戸線の汐留駅付近には線路を分岐して浅草線へとつながる連絡線が設けられています。この連絡線は、汐留駅ホームの築地市場駅寄りに立ってみると見ることができます。 こんなルートがあるなんて、鉄道ファンでなくてもワクワクするのではないでしょうか。 ※参考文献:東京都交通局・大江戸線建設物語編纂委員会『大江戸線建設物語―地下鉄のつくり方 計画から開業まで』(成山堂書店、2015年)
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