映画「天気の子」予告編にも登場! 解体迫る、代々木駅前「東京の九龍城」とは?
代々木駅前に廃墟のような大きなビルがそびえ立っています。その名は「代々木会館」。いったいどのようなビルなのでしょうか。その詳細について、「都市」と「商業」を専門に研究する都市商業研究所が解説します。代々木駅前の廃墟のようなビル「東京の九龍城」と言われた、いわくつきの物件がいよいよ最期の時を迎えます。 その物件とは代々木駅前にそびえ立つ「代々木会館」(渋谷区代々木)。代々木駅を降りた際に、一見廃墟かと見まがう大きなビルに目を奪われたことがある人も多いのではないでしょうか。 令和に残った昭和「代々木会館」(画像:都市商業研究所) 代々木会館は今から約50年前に国鉄代々木駅前に竣工した8階建ての雑居ビルです。この建物が一躍脚光を浴びたのは、今から45年前の1974(昭和49)年。日本テレビ系ドラマ「傷だらけの天使」の舞台となったことによるものでした。 かつては内部の飲食店街に予備校、ビリヤード場、パチンコ店などさまざまなテナントが出店していたこのビルも、ここ最近はほぼ空き家に。何度も再開発の話が持ち上がるも、多くの区分所有者がいることもあり、断念されてきたという経緯がありました。しかし、ついに2019年6月に「解体告知」が掲出され、その長い歴史に幕を下ろすことが分かりました。 「名物書店」も閉店。本の行先は「未定」 筆者が代々木会館を訪れたのは5月末のこと。すでにテナントは、1階のラーメン居酒屋「きぬちゃん食堂」と3階の「東豊書店」のみとなっていましたが、3階の東豊書店の店内は「近いうちの閉館」を聞きつけた客で溢れていました。 この東豊書店は日本屈指の「中国語専門書店」として知られ、中国・香港・台湾などで出版された本が床から天井までビッシリと並ぶ様子はまさに「東京の九龍城」を感じさせてくれます。 もちろん、本はどれも日本国内の一般書店では販売されていない未知のものばかり。文化大革命期の中国、英国統治下の香港、戒厳令期の台湾で出版された古い本も多く、台湾出身の店主・簡さんのはじく五玉そろばんの音と相まって、ここが21世紀の都内だということさえも忘れさせられます。 簡さんに閉店後の本の行方について伺ったところ「ハハッ、まだ決まってないよ」とのこと。「1棚くらい買いたい……」との思いを押さえつつ、筆者は買えるだけの本を抱え、後ろ髪を引かれつつ店を後にしました。 なお、1階のラーメン居酒屋「きぬちゃん食堂」は移転して営業を続けるとのことです。 再び銀幕に登場!?再開発内容は「不明」再び銀幕に登場!?再開発内容は「不明」 現在、代々木会館前に掲げられている解体告知によると、解体は8月1日(木)から2020年の1月31日(金)まで。横浜市に本社を置く企業の名前が記されています。都心駅前の一等地における大型再開発であるものの、7月現在はどういった内容の開発が行われるのか一切明かされておらず、今後の動向が注目されます。 眠りに就く代々木会館の後ろにはNTTドコモ代々木タワーが(画像:都市商業研究所) さて、間もなく見納めとなる代々木会館ですが、実は最後に大きな「餞別」となる出来事がありました。7月19日(金)に公開予定の新海誠監督のアニメーション映画「天気の子」の予告編において、映画内の重要な場面にこの代々木会館が登場することが分かったのです。 45年の時を経て再び名作の舞台となる代々木会館。すでに館内に立ち入ることはできませんが「最後の雄姿」を目に焼き付けておきましょう。
- おでかけ