コロナ禍で「テイクアウト」飽和も お得な「宝くじ」付きサービス発見、いったい何?
新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う外出自粛が続くなか、街の飲食店は次々とテイクアウトやデリバリーに参入しています。ある意味、飽和状態とも言える現状で、「消費者にとっての付加価値をいかに提供できるか」が、混戦から抜け出すカギとなりそうです。飲食店が悲鳴「前年比で数%程度か」 日本フードサービス協会(港区浜松町)が2020年4月27日(月)に発表した、同年3月の来店客数は、全業態集計で「前年同月比66.7%」。 「緊急事態宣言」が発令された4月はさらなる落ち込みが予想されていて、「売上高が前年比数%程度しか見込めないところもある」と、極めて厳しい状況を伝えています。 新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う外出自粛の要請が出された2020年4月。時を同じくして、街の飲食店が次々と参入したのが「テイクアウト」や「デリバリー」のサービスです。 外出自粛、外食自粛になってから、あなたはテイクアウトやデリバリーを利用しましたか?(画像:写真AC) 普段なら予約でいっぱいの高級店から、料理自慢の老舗まで。チェーン店はもちろん個人経営の居酒屋さんやラーメン店なども参入し、テイクアウトやデリバリー市場は大幅な拡大の一方、「飽和状態」と言えるかもしれません。 もともと有名店でもなく販促活動が得意でないお店にとって、消費者がよりメリットを感じられるサービスを提供することが課題と言えそうですが、ただでさえ売り上げが大幅に減じているなかで、「追加値引き」などを行える体力が残っている飲食店はほとんどないのが現状でしょう。 店側の追加負担を掛けずに、新たな付加価値を生み出す仕組みづくりを――。飲食などのマーケティング、コンサルティングを担う志成(新宿区西新宿)が飲食店ユーザー向けの「宝くじ付きメニュー」企画を始めるのは、そうした狙いがあったからだと言います。 店側の負担なし、クラファンで原資店側の負担なし、クラファンで原資 企画の名前は「TOKYO HOPE LOTO」。 東京都心部を中心に66店舗(2020年5月11日現在)の対象飲食店でテイクアウトかデリバリーを利用すると、抽選券として使える「宝くじ」が付いてきます。対象店2か所で注文し、異なる店舗の抽選券2枚がそろえば「抽選」にチャレンジ。応募はスマートフォンやパソコンで、当選すれば対象店舗で使える「お食事券」がもらえる、という仕組みです。 5月14日(木)から6月30日(火)までの期間限定企画。発行するお食事券は9月以降の使用が可能予定で、「状況が落ち着いた頃のリピーターを増やす」ことが狙いのよう。 お食事券の原資は現在クラウドファンディング(CF)で募っているため、お店側の追加負担は一切ないというのが特徴です。 テイクアウトやデリバリーで「宝くじ」が当たる「TOKYO HOPE LOTO」の仕組み(画像:志成) 同社がCFで支援を呼び掛けた5月10日以降、11日16時現在ですでに65万円近くが寄せられています。広報担当の丹野怜央(れお)さんは「お食事券の当選額については現在調整中ですが、できるだけ厚く広く、多くの人の手元に行き渡るよう、2000円以上を目安に考えています」。 コロナ禍でテイクアウトやデリバリーを始めたお店や、「お店がピンチです。ぜひ利用してください」とSNSで窮状を訴えているお店を積極的に探し、メールやSNSメッセージ、電話などを使ってアプローチしていったといいます。 お食事券といえば、平素であれば各飲食店別やグループ店ごとに発行するものなのでしょうが、「こんなときですから、より多くのお店を取りまとめて数を集めた方が店側にも消費者側にもメリットがあると考えました」と丹野さん。 飲食店に聴き取りをする中で、「例年の10分の1も売り上げが立たない」という悲痛な声にも接しているといいます。「廃業の危機さえ感じているお店もあるでしょうから、今回の企画やクラウドファンディングでの支援を通して『応援されている』ことを知ってもらうこともまた励みになるのではと、期待を込めて取り組んでいます」 ちなみに対象の店舗は和食・洋食・中華など、ジャンルも業態も価格帯もさまざま。東京都内を中心に現在も募集中とのことです。 テイクアウトは今後も不可欠な販路テイクアウトは今後も不可欠な販路 実は新型コロナの感染拡大以前から、外食産業は課題に直面していました。 信用調査会社の帝国データバンク(港区南青山)は2019年12月13日(金)、「飲食店の倒産、過去最多へ」と題した記事で次のように伝えていました。 「節約志向の高まりに加え、2019年10月に消費税率の引き上げとそれに伴う軽減税率が導入されたことで、消費者はテイクアウトやデリバリーなどの『中食』や、『内食(自炊)』を選ぶ傾向が強まったと言われる」 コロナ以前からテイクアウトやデリバリーに参入していた飲食店もありますが、全体の売り上げにおいてはあくまで手段のひとつ。しかしそれが今回、店舗経営の極めて重要な柱へと変化を遂げました。 「TOKYO HOPE LOTO」の利用を呼び掛ける、志成の佐藤廉也代表(画像:志成)「コロナによって、あらゆる食事の場面が原則自宅に取って代わってしまいました。たとえコロナが収束しても、在宅でのテレワークなどがある程度は定着することが予想されます。店外用メニューをこの機会に強化しておくことは、飲食店にとって今後に不可欠な販路を整えることになるのではないでしょうか」(丹野さん) 新型コロナを機に岐路に立たされる街の飲食店。そして一変した私たち消費者の食事風景。両者をつなぎ、支援する取り組みもまたさまざまに誕生しています。 有名店の料理を自宅の食卓で味わう――そんな、生まれて間もない食の楽しみ方を、この際試してみるというのもひとつではないでしょうか。面白い付加価値のあるサービスも探せばいろいろあるようです。
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