学校行事の定番「遠足」が次々と行われなくなっているワケ
かつては学校行事の定番だった遠足 秋に行われる小学校のイベントといえば、運動会や遠足です。しかし近年は運動会が5月に移行しつつあるなど、環境は様変わり。遠足もこれまでの「学校行事」のイメージから「校外学習」へとシフトするなど、変化の波が訪れているのです。 校外学習のイメージ(画像:写真AC) 筆者の子どもたちが通う小学校や近隣の小学校は、遠足に行く学年を1~2年生に限定したり、そもそも遠足が行われなかったりします。 学校行事の定番だったはずの遠足はなぜ減っているのか、その理由を探っていきましょう。 お弁当は作らなければならない まず遠足が減ったことで、親はお弁当のことを考えないで済むようになったのでしょうか。そうではありません。実際のところ、親の負担は昔と大きく変わっていません。 近年、遠足の代わりに校外学習を行う小学校は急増しています。校外学習は遠足と同じように、お弁当持参。行き先によっては、普段の登校時間よりも集合時間が早いケースも多く、親はその分早起きしてお弁当の支度をしなくてはなりません。そのため、親の負担が減っているとは言えないのです。 遠足の代わりに校外学習が激増遠足の代わりに校外学習が激増 筆者世代で「社会科見学」と呼ばれていた校外学習は、遠足の代わりとして存在感を増しています。 遠足で食べる弁当のイメージ(画像:写真AC) 小学3~4年生になると、班別に調べ物をしたり、意見を述べあったりして、ほかの子と力を合わせながら作業することを学んでいきます。校外学習はダムや水道局、下水道やごみ処理場など、生活をする上で重要な施設に足を運びます。 筆者の子どもたちが通う小学校では4年生のときに年4回程度、校外学習を行っています。集団行動や班別行動に慣れさせて、5年生と6年生の宿泊を伴った校外活動をスムーズに行うためです。 遠足同様にお弁当持参ですが、学年によっては1年間に複数回行われるため、親の負担は少なくありません。また、校外学習は「授業の一環」のため、おやつを持っていくのは基本的に禁止。無邪気におやつ選べられないのは、気の毒といえます。 校外学習では、学習単元や集団行動を学べる 筆者が子どものころ、遠足で勉強っぽい内容を学ぶことはありませんでした。その学年の体力に合ったハイキングコースを歩くなど、体育のような色合いが強かった記憶があります。 現在、遠足の代わりとなっている校外学習は、学習を前面に出した内容となっています。筆者の子どもたちを見ていても、班ごとに下調べをしたり、ときには週末に宿題が出されたりすることもありました。施設に出向いた後、教室内で各班が発表をし、連携しながら班の中で自分の役割を果たすことを学んでいるようです。 子どもたちの話を聞いていると、「純粋に子どもが楽しめる行事」というものが少なくなっているような気がします。子どもの教育を取り巻く環境は昔とは大きく異なります。週休2日の実施や脱ゆとり教育による学習内容の増加にともない、昔ながらの遠足よりも、授業を補完する要素が強い校外学習を行うようになったのは、ある意味自然なことなのかもしれません。 人前で発表する機会が増えるメリットも人前で発表する機会が増えるメリットも 親としてうれしいのは、筆者の小学生時代よりも子どもが校外学習を通じて人前で発表する機会が増えたことです。自ら調べ、学び、発表することは、文部科学省が推進する「アクティブラーニング」に重なります。 校外学習のイメージ(画像:写真AC) 意見を述べたり、他者に分かりやすく説明したりするスキルを家庭だけで伸ばすことは難しく、学校でこのような力を鍛えるのはありがたく感じます。「先生から渡された」というプリントを見ると、問題の要点のまとめ方や図の作り方などが丁寧に説明されていました。 筆者の小学生時代、アクティブラーニング的な存在は学級新聞くらいでした。一方、現在の教育現場は、将来役に立つプレゼンテーションの基礎を教えています。椅子に座った授業では、挙手する子は固定化しがちです。単に遠足の代わりや授業の補完という役割以上のことを果たしているのではないでしょうか。 昔ながらの遠足が復活することはない? 子どもたちに、筆者が経験した遠足の話をすると決まって「いいな~」と羨ましがられます。運動着を着てバスに乗り込み、ハイキングしてお弁当とおやつを食べることに憧れるとは思ってもいませんでした。 授業数の増加やアクティブラーニングは、校外学習を利用すれば解決できるため、筆者世代が経験した遠足が復活する見込みは、限りなくゼロに近いでしょう。遠足を廃止する学校が増えるのは致し方ない状況なのです。
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