公立学校に通ったら「お金が掛からない」は大間違い 文科省データで見えてきた東京の現実とは
キーワードは「学校外活動費」 東京都内は一般的に、中学受験が盛んと思われています。しかし、東京都教育委員会の「公立学校卒業者の進路状況調査書」を見ると、2018年度の公立小学校から私立中学への進学率はわずか17.9%で、小学生の80%以上は公立中学に進学しています。 公立といえば、授業料は無料で「私立に比べれば安い」というイメージは定着していますが、果たして本当でしょうか。 学生生活と受験のイメージ(画像:写真AC) 文部科学省の「平成30年度 子供の学習調査」によると、首都圏のような大都市を含む指定都市(政令で指定する人口50万以上の市)や特別区(東京23区)の公立中学の学校教育費は年間平均13万4212円に対し、私立中学の学校教育費は107万1438円と約8倍になっています。 学校自体に関する費用を見れば、公立中学の方が圧倒的に安いことは疑いの余地がありません。しかし子どもを公立中学に通わせている家庭の方が「学校外活動費」がかかっているのです。「学校外活動費」とは、 「補助学習費」 + 「その他の学校外活動費」 を意味しています。 「補助学習費」の意味「補助学習費」とは、予習・復習・補習などの学校教育に関係する学習を行うために支出した費用で、「その他の学校外活動費」とは、知識や技能を身に付け、豊かな感性を培い、心とからだの健全な発達を目的としたけいこごとや学習活動、スポーツ、文化活動などに要した経費を指します。 前出の「平成30年度 子供の学習調査」で、「指定都市・特別区」に分類されている大都市圏にある公立中学の「学校外活動費」の年間平均は36万6246円ですが、私立中学は33万1264円と少し低くなっているのです。 ちなみに全国の公立中学3年生の平均は40万8187円で、私立中学3年生は38万6042円と、こちらも公立中学を下回っています。 「補助学習費」に年間8万円以上の差「補助学習費」に年間8万円以上の差 念のため繰り返しますが、 「学校外活動費」 = 「補助学習費」 + 「その他の学校外活動費」 です。 「補助学習費」にカウントされる「家庭教師費」と「学習塾費」の1年間の合計を比較すると、大都市の公立中学に通う生徒は年間平均27万2500円、私立中学に通う生徒は18万4539円と8万円以上の差があります。 その理由は、私立中学の多くが中高一貫校で高校受験をする必要がなく、中学3年間は比較的余裕を持って勉強でき、学校側から手厚い指導を受けられるため、公立中学と比べて家庭教師や塾にかかる費用が抑えられているためだと考えられます。なお公立中学に通う生徒は3年生ともなると、33万8040円まで跳ね上がります。 学生生活と受験のイメージ(画像:写真AC) 受験では、学校の勉強だけで希望の高校に合格する生徒もいますが、多くは塾に通ったり、家庭教師を雇ったり、通信教材などを使ったりして入試に備えます。 そのため、保護者は「公立中学だからお金はかからない」と気楽に構えず、入学直後から高校入試までにかかりそうな教育費を計算してみることが大切です。中学1年生では教育費を極力抑え、後半に向けてためておくなど、大まかな計画性を持つことが求められます。 公立中学でもお金はかかる公立中学でもお金はかかる また受験前には、模試で自分の学力レベルを見る必要もあります。模試の受験料は4000~5000円程度かかり、また学年が上がると模試の回数も増えるため、家計への負担は無視できません。 公立中学は受験学年になると、高校入試に向けた教育費が一気に膨れ上がります。保護者はまず、この現実を受け止めなければなりません。 学費の「総額」では私立中学の方が圧倒的にお金はかかりますが、公立中学はその分、「学校外教育費」がかかるのです。 小学校時代と異なり、進路先は子どもの学力と意欲で決まってしまいます。そのため、中学時代に教育費を出す出さないという保護者の判断は、子どもの将来を大きく決めることになります。 学生生活と受験のイメージ(画像:写真AC) 特にさまざまな進学先の情報が飛び交う東京の場合、私立中学はお金に余裕のある家の子どもが通い、公立中学は断然安く済むというイメージを持たれがちです。 公立中学に通わせても「学校外教育費」は大きくかかります。まずはこれを理解することが大切です。
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