太め・細め……「眉毛トレンド」40年間の変化、行きついた令和の新スタイルとは?
東京では「眉毛サロン」も定番化 2020年12月、太眉がトレンドマークだったタレントの井上咲楽さんが太眉をカットした画像をアップしたところ、そのあまりの変貌ぶりが大きな話題になりました。 東京では、眉毛をおしゃれに整えてくれる眉毛サロンが新宿や渋谷、表参道などにいくつも出店しているほか、日本アイブロウ協会(港区西新橋)や日本眉毛エクステンション協会(世田谷区池尻)といった団体まで存在します。 かのモノマネメイクの達人ざわちんさんも「モノマネメイクで似せるのに一番気をつけるのは眉」と言うぐらい、「眉」は顔の中で想像以上に重要なポジションを占めるパーツなのかもしれません。 今回は地味ながらも平成のなかでさまざまな変貌を遂げた「アイブロウ文化」について考えたいと思います。 ナチュラルとパワフルが共存した80年代 アイブロウ文化は時代の雰囲気と深い関わりがあると言えます。 80年代の眉毛というと、何となく「太眉」をイメージする人もいるのではないでしょうか? 今では大御所となったアイドルがたくさん誕生したこの時代、ファンシーな衣装を身にまとい歌うアイドルたちの姿には「かわいい」イメージがある一方で、厚い肩パッドの入ったパワースーツを着たキャリアウーマンの時代の幕開けでもありました。 キャリアウーマンたちが掲げる「媚びない女」というキーワードから生まれた流行が「男性的な太い眉」でした。 どんなファッションも太眉が定番どんなファッションも太眉が定番 1982(昭和57)年にカネボウのCMでブルック・シールズが来日、また女優・石原真理子さんの人気も相まって、美人顔の条件の中に「意思的な太い眉」が入り全国的に広まります。 以後、眉を剃ったり抜いたりする習慣は廃れ、しばらく目立った変化は見られなくなりました。 いじったとしても「透明マスカラで立たせる」か「眉をペンシルでクッキリ描く」という程度。とにかく「眉は太い方が美しい」という美意識がそこにありました。 この80年代から平成初期にかけては、ピンクハウスのようなファッションでも今井美樹さんを筆頭にしたナチュラルなファッションでも、ボディコン姿のギャルでも、系統は違えど「太眉」が共通して美のスタンダードだったのは興味深いところです。 安室ちゃんが火をつけた細眉ブーム そんな太眉文化にいったん終止符が打たれたのが1993(平成5)年。ナオミ・キャンベルから一斉に火がついたスーパーモデルブームです。 ナオミ・キャンベルのトレードマークであるアーチ形の細眉とヌードベージュの口紅は90年代を通してトレンドとなります。 筆者所蔵の雑誌『Popteen』1996年7月号。人気の女優や女性歌手たちの眉毛特集などの企画がたびたび掲載されるようになった時期(画像:Tajimax、角川春樹事務所) 1995年からは、より近いあこがれの存在として安室奈美恵さんの細眉も大ブームになりました。 当時、安室さんの直線的な細眉は彼女のくりっと大きな瞳をより際立たせ、女性たちの支持を集めます。 「眉を整える」はスタンダードに「眉を整える」はスタンダードに 1993年以降、雑誌の美容ページには眉メイクを指導する特集が相次ぎ、1996年には「眉毛テンプレート」という眉の型紙が大ヒット商品に。茶髪ブームの流れから、眉のカラーリングも一般的になります。 筆者所蔵の雑誌『ViVi』1996年10月号。多くの女性が眉の形をまねした安室奈美恵さんが表紙(画像:Tajimax、講談社) この頃から芸能人やモデルの眉毛に対する注目度もより高まっていきました。 当時の漫画作品で言えば、矢沢あいさんの『ご近所物語』(1995~1997年連載)に登場する美果子ちゃんのキュッとした釣り眉と、『天使なんかじゃない』(1991~1994年)の翠ちゃんのナチュラルな眉はずいぶんと違う印象。 同じ作者の作品でも、そのときどきの流行に合わせた変化や違いを見つけることができます。 2000年代に入ると、90年代のような極端な細眉ブームは去りつつも「眉をキレイに整える」というのはもはやメイクにおいてスタンダードになっていきます。 00年代は浜崎あゆみさんのような髪色に合わせたより明るいカラーの眉が好まれ、への字にキュッと角度をつける形が支持されるようになりました。 平行・太めトレンドの登場 平成の間に太眉から細眉までさまざまな変貌を遂げましたが、2013年頃から新たなトレンドの兆しが芽生えます。現在でも人気の「オルチャンメイク」です。 白くて透明感のある肌と自眉を生かした平行の太めのナチュラルな眉毛が特徴的なこのメイクは、第2次韓流ブームがピークを迎えたこの頃から、美容系のウェブメディアや若年層向けファッション雑誌などで定期的に取り上げられるようになりました。 一方で2007年(平成19)頃の原宿系では色素の薄いカラーリングや薄眉も支持され、オシャレな「垢抜け眉」として定番化していきました。 自然なスタイルへ回帰する令和の眉自然なスタイルへ回帰する令和の眉 2010年代はさまざまな分野において「次の時代への進化」を感じさせられた時期ですが、それはメイクやアイブロウにも反映されていると筆者は感じます。 また眉サロンや「美眉」という言葉が認知されたのも2010(平成22)年頃の特徴だと言えます。 筆者所蔵の書籍『ざわちん Make Magic』。令和にも通じる平行・太めの眉(画像:Tajimax、宝島社) 最近のYoutubeや雑誌を見ていると「モテメイク」は変わらず人気で関心を集めるジャンルですが、平成から令和にかけては、より「柔らかさ」や「ナチュラル感」「ヌケ感」が見直され、それが眉にも反映されているのが特徴的。 特に眉に関しては近年、パウダーをふわっとのせたり、自分の骨格に合わせて形を決めたりといった手法が定番となりました。 今までのように、流行に左右され過剰に自分の顔を演出するのではなく、令和になりやっと“ちょうどいい”バランスになったのかもしれません。
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