座って通勤できる「始発駅」 東京23区で探してみた
勤め人に人気の始発電車 近年、始発駅の人気が高まっています。始発駅であれば、朝の通勤時間帯も座ることができ、座れば仮眠をとったり、スマートフォンでゲームを楽しんだり、仕事のメールを打ったりできます。 私(櫻井幸雄、住宅評論家)は朝の6時台や7時台にメールを受け取ることがあり、「ずいぶん朝早くから出社しているんだな」と感心していました。しかしあのメールも通勤電車のなかで打っているのではないかと思い当たり、今度は「時間の使い方が上手だ」と感心するようになりました。 時間の使い方上手になるには、始発電車を利用しやすい駅に居を構えるのもひとつの手段。それも始発電車の本数が多く、無理なく利用できる駅が理想です。 始発電車に乗る勤め人のイメージ(画像:写真AC) 始発駅のひとつ手前(都心寄り)の駅からの定期にもかかわらず、始発駅まで下って始発電車を利用するために折り返し乗車をする――この行為は無賃乗車の区間が生じ、許されません。 しかしそうする人が増えたため、「折り返し乗車禁止」のポスターを出したり、盛んにアナウンスしたりする郊外駅もあります。それほど多くの人が始発電車に乗りたがっているということでしょう。 この始発駅を23区内で探すと、実はたくさんあります。東京駅や新宿駅、渋谷駅では、多くの路線で始発電車が出ますが、下りの始発電車。都心のオフィスに向かう勤め人は、朝の通勤時間帯に利用できません。 23区内で山手線ターミナル駅に向かう、つまり上りの始発電車を利用できる駅は、そんなに多くないのではと思えます。多くの上り始発電車は23区の外、東京市部や神奈川県、埼玉県、千葉県の駅から出ることになりがちだからです。 意外なほど多い上り始発電車の利用可能駅意外なほど多い上り始発電車の利用可能駅 ということは23区内に住めば、朝の通勤時間帯、満員電車がやってきて、ぎゅうぎゅうの車両に無理やり体を押し込むことが当たり前に……。そう思いながら、23区内の上り始発電車を利用できる駅を探してみると、これが意外なほど数が多かったのです。 東京のオフィス街(画像:写真AC) 例えば丸ノ内線では、荻窪駅、中野富士見町駅、方南町駅から上りの始発電車が出ます。 このほか、 ・中野駅(中央線、東西線) ・蒲田駅(京浜東北線) ・東十条駅(京浜東北線) ・王子神谷駅(南北線) ・雪が谷大塚駅(東急池上線) ・奥沢駅(東急目黒線) ・桜上水駅(京王線) ・成城学園前駅(小田急小田原線) ・上石神井駅(西武新宿線) ・豊島園駅(西武豊島園線・西武池袋線) ・富士見ヶ丘駅(京王井の頭線) ・高島平駅(都営三田線) ・光が丘駅(都営大江戸線) ・清澄白河駅(都営大江戸線) ・京成高砂駅(京成線) ・大島駅(都営新宿線) ・新木場駅(有楽町線) などがあり、東武東上線の成増駅も池袋行きの始発電車が利用できます。 上りの始発電車は車両基地がある駅から出ることが多くなりますが、車両基地がなくても電車が折り返すために、空の電車に乗り込むこともができる駅もあります。 中目黒駅で利用できる日比谷線の車両や、代々木上原で利用できる千代田線の車両が該当します。笹塚駅で利用できる京王新線の車両、押上駅で利用できる半蔵門線・都営浅草線の車両、綾瀬駅と北綾瀬駅で利用できる千代田線の車両も同様です。 さらに、北千住駅(日比谷線)、や竹ノ塚駅(東武伊勢崎線)など、朝の通勤で席を確保しやすい駅は、結構たくさん見つかります。 ただし問題は、総じて家賃相場や分譲価格が高い場所が多いということです。 始発電車で座れる駅周辺の穴場物件に注目始発電車で座れる駅周辺の穴場物件に注目 朝の通勤時間帯に始発電車が利用できて便利という事実は、地元の人なら誰でも知っています。さらに「列に並んで何人めまでなら間違いなく座れる」「ひとつやり過ごして次の始発電車であれば間違いなく座れる」というようなことも分かっています。 そのようなわけで、始発電車で座れることはその駅にとって、大きな付加価値になっているわけです。 その結果、その駅周辺を離れない人が多くなりますし、新築住宅が出れば高い人気で借り手や買い手が決まります。その人気ぶりから、家賃や分譲価格が高めに設定されやすいのも事実です。 したがって、今はまだ途中駅で乗り換えをしなければいけないが、この先、都心ターミナル駅まで直通の始発電車が利用できるようになる駅は、計画が本決まりになったときから人気が急上昇し始めます。 そのような例として記憶に残っているのが、丸ノ内線の方南町駅、そして千代田線の北綾瀬駅です。 丸ノ内線の方南町駅と千代田線の北綾瀬駅の位置関係(画像:(C)Google) 途中駅での乗り換えが必要なくなったのは、それぞれ2019年7月からと同年3月からでした。1、2年ほど前の話なので、このような駅であれば割安価格・割安家賃の住宅がまだ見つかるかもしれません。
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