「にわかファン」に贈るラグビーW杯超入門ガイド やっぱり楽しんだもん勝ちでしょ?
2019年9月20日に開幕する「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」は、国内外の多くのラグビーファンで盛り上がること間違いありません。その魅力をライターで編集者の冨田格さんが解説します。特に「にわかファン」におすすめです。盛り上がる下地を作った「ノーサイド・ゲーム」「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」が2019年9月20日(金)、開幕します。ラグビー関係者やファンはものすごく盛り上がっていますが、世間的には今ひとつピンときていない雰囲気を感じます。しかし、開幕後には熱く盛り上がるに違いありません。その理由から、まずご説明していきましょう。 開幕戦が行われる調布市の東京スタジアム(画像:冨田格) ラグビーといえば、9月15日(日)に最終回を迎えた日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」(TBS系)が話題になりました。「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」という、「池井戸潤原作 × 日曜劇場」という安定感のあるタッグならではの盛り上がりを見せ、最終回は人気グループ・嵐の櫻井翔さんが登場するというサプライズも話題になりました。 登場した理由は、櫻井さんが日本テレビ「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」のスペシャルサポーターを務めているから。大会は日本テレビとNHKが地上波で放送しますが、NHKはBS(放送衛星を使った放送)での放送が多く、地上波のメインは日本テレビです。「ノーサイド・ゲーム」はラグビーを題材にしているということで、TBSのドラマに櫻井さんが登場するという粋なサプライズとなったというわけです。 「ノーサイド・ゲーム」が話題となり、その熱が冷めないうちに大会が開幕する――。これで盛り上がる下地は、出来上がったといえます。なぜなら、ラグビーはテレビドラマとの相性が良く、題材にしたドラマが話題になるとラグビーが盛り上がるという現象が1980年代に起きているからです。 1980年代に起こったラグビー人気1980年代に起こったラグビー人気 まずは、1980年代前半に経験したことをお話ししましょう。 今から38年前のこと、僕は九州の温泉街で暮らす高校生でした。ラグビー部に所属していましたが、4月の新人勧誘はとても苦労するものでした。住んでいた市の中学校にラグビー部はなく、新入生のほぼすべては未経験。知らない人から見れば、ラグビーはハードでキツくて大変そうなスポーツにしか思えないため、運動能力の高そうな新入生に声をかけても逃げられてしまうことの連続でした。 ワールドカップグッズが揃う新宿西口のメガストア(画像:冨田格) ところが、僕らの代が卒業する年はなぜか事情が異なりました。声をかけると反応が良く、自分から入部を志願してくる人もいて、前年の倍以上の新人が入部したのです。その理由を聞いてみると、春休み期間中に再放送されていた中村雅俊主演の1974(昭和49)年のドラマ、「われら青春」(日本テレビ系)と関係がありました。太陽学園ラグビー部を舞台にした学園青春ドラマで、これに感情移入して見ていた新入生たちが「俺もやってみたい」と続々入部してくれた、ということだったのです。 僕らが卒業した2年後には、それをさらに上回る人数が入部したとのちに聞きました。その前年にあたる1984(昭和59)年秋から1985年春にかけての2クールで、ドラマ「スクール☆ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~」(TBS系)が放送され大きな評判となっていたのです。不良や落ちこぼればかりの高校の弱小ラグビーチームが、新任の教師の熱血によって全国優勝を果たすまでになる物語は、大ヒットして伝説のドラマとなりました。当時のゴールデンタイムのドラマが持つ威力は、絶大だったのです。 1980年代前半、全国大学ラグビーフットボール選手権大会は熱く盛り上がっていました。特に人気の早稲田大学と明治大学による「早明戦」は、旧国立競技場に6万人超の観客が詰めかけて満席になるほど。そこに「スクール☆ウォーズ」の大ヒットが重なり、従来のラグビーファンに加え、「にわかファン」も急増。チケット入手は、どんどん困難になっていきます。 1980年代後半~1990年代前半にかけて、毎年12月の早明戦と正月の大学選手権の決勝戦は旧国立競技場が満席になることも珍しくありませんでした。ラグビーファンだけでなく、大学生のカップルや女性同士のグループの姿も目立っていました。早明戦や決勝戦に行くことがイベント化していったのです。 ところが盛り上がっていたラグビー人気も、1993(平成5)年にJリーグ(日本プロサッカーリーグ)が始まったことで、その座をサッカーに奪われました。にわかファンの選択肢が、ラグビーからサッカーへと移り変わったためです。 にわかファンは急増間違いなしにわかファンは急増間違いなし 日頃はJリーグを見ないのに、4年に1度の「ワールドカップ」になるとにわかサッカーファンが急増するように、オリンピックでメダル候補が登場すると、急にカーリングや水泳、陸上、柔道、体操ファンが急増するように、「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」で日本代表が活躍すれば、にわかラグビーファンは確実に急増します。 東京スタジアムがある京王線飛田給駅もワールドカップ仕様(画像:冨田格) 2015年に行われた「ラグビーワールドカップ2015 イングランド大会」を思い出してください。当時、ワールドカップで16連敗して世界ランキング13位だった日本代表が、過去2回優勝経験があり、ランキング3位だった南アフリカ共和国を「34対32」で破った「ブライトンの奇跡」の後、どれだけにわかラグビーファンが増えたことでしょうか。 特に五郎丸歩選手は一躍人気者となり、テレビやCF(テレビ用の広告)にも引っ張りだこで社会現象化しました。このときに、ラグビー日本代表の名前を初めて知った人も多かったはず。1990年代前半のJリーグ発足以来、ずっと長期の人気低迷状態だったラグビーが久しぶりに脚光を浴た瞬間でした。 そして今回のワールドカップは、日本開催です。過去のラグビーワールドカップとは比較にならないくらい、地上波での実況中継が増えます。日本テレビは、週末の日中やゴールデンタイムに19試合の中継と4本の特別番組を放送予定です。NHKはBSを中心に地上波、ラジオを駆使して34試合を中継。テレビをつければラグビーを目にする機会が増えるのですから、注目度が高まらないはずはないのです。 ラグビーワールドカップは、プール戦(1次リーグ)と決勝ラウンドに分かれています。プール戦は、5か国が4つのプールに分かれてプール内で総当たり戦を行い、上位2チームが決勝ラウンドに進出します。つまり決勝ラウンドに残った時点でベスト8になるということです。 最新の世界ランキング10位の日本はプールAに属しています。同じプールには1位のアイルランド、7位のスコットランド、16位のサモア、20位のロシアがいます。強豪国のいるプールAの上位2チームに日本が残り、宿願の決勝ラウンド進出を果たしたら、2015年とは比べようもない大騒ぎになることは想像に難くありません。 にわかファンは悪くないにわかファンは悪くない サッカーのワールドカップでも、オリンピックの各競技でも、にわかファンを揶揄する人たちは必ず存在します。ラグビーワールドカップでも、同じような人は出てくるでしょう。 ファンゾーンが開設される調布駅前広場(画像:冨田格) しかし、あえて僕は主張したいです。「にわかファンでもいいじゃない、大きなイベントは楽しんだものが勝ちだよ」と。にわかファンと思われるのが格好悪いからと敬遠してしまうのは、あまりにももったいないです。 1987(昭和62)年から4年に1度行われているラグビーワールドカップですが、これまですべてラグビー強豪国で開催されてきました。いまだベスト8に進出したことのない日本での開催は、まさにミラクルな出来事なのです。日本大会のキャッチコピーは、それを的確に表現しています。 「4年に一度じゃない。一生に一度だ。- ONCE IN A LIFETIME -」 2度と体験することができないかもしれない、エキサイティングなビッグイベントです。体裁など気にせず、積極的に参加し、興奮と感動を味わったほうが楽しいに決まっています。終わってから「せっかくなら、もっと楽しんでおけばよかった」と後悔しても、まさに後の祭り、後悔先に立たずというものです。 にわかファンがワールドカップを楽しむ方法 にわかファンでもいいから楽しみたい、という人に「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」を思いきりエンジョイする方法は、 1.試合を見に行く 2.テレビで応援する 3.パブリックビューイングで熱狂の渦に入る の3つです。 調布駅前広場ファンゾーンの準備中(画像:冨田格) それでは、ひとつずつご紹介していきましょう。 ●試合を見に行く 北は札幌から南は大分まで、全国12都市で48試合が開催されます。東京は東京スタジアム(調布市西町)で、開幕戦を含む8試合が開催されます。近郊では横浜国際競技場(横浜市港北区)で決勝戦を含む7試合が開催されます。 チケットは9割は完売しているとのことですが、もし入手できたら最高にエキサイティングな体験になるのは間違いありません。 にわかファンはテレビやパブリックビューイングで応援するにわかファンはテレビやパブリックビューイングで応援する●テレビで応援する 地上波は日本テレビ・NHK総合、BSはNHK BS1・BS4K・BS8K、CSはJスポーツで放送されます。試合展開の中心部や、選手の表情をアップで見られたり、詳しいルールや戦術の解説が聞けたりと、テレビならではの魅力が味わえます。また各局によって実況のスタイルや解説者も異なるため、見比べる楽しみもあります。 ●パブリックビューイングで熱狂の渦に入る チケットは入手できなかったものの、多くの人たちと熱狂したい人はパブリックビューイングへの参加をお勧めします。開催都市にはオフィシャルのファンゾーンが設けられ、入場無料でパブリック・ビューイングが楽しめます。 東京は、 1.東京スポーツスクエア(千代田区丸の内) 2.調布駅前広場(調布市小島町) の2か所です。有楽町の東京スポーツスクエアは全試合開催日に、調布駅前広場は金土日祝に開催されます。いずれも収容人数は4800人、国籍もさまざまな人たちとともに熱狂を肌で感じることできるでしょう。 また、MARUNOUCHI RUGBY PARK(千代田区丸の内。丸ビル1階マルキューブ内)では全48試合のパプリックビューインが開催。 開幕戦の舞台となる東京スタジアムに近い、 1.府中ケヤキ並木通り(府中市) 2.バルトホール(同市宮町。府中市市民活動センター「プラッツ」内) でも、週末を中心に全27試合のパブリックビューイングが開催されます。 にわかファンに覚えておいてほしいことにわかファンに覚えておいてほしいこと ラグビーでは、試合が終了することを「ノーサイド」と言います。試合中はどんなに熱くなろうとも、戦いが終わったら互いの健闘をたたえ合う――。これがラグビーの基本精神です。 東京スタジアム前のスポーツ店もラグビー仕様に(画像:冨田格) イングランドの名門ラグビー校が発祥となったラグビーフットボールは「紳士のスポーツ」と呼ばれています。野獣のような選手たちが激しくぶつかりあうスポーツですが、ノーサイドの後はとてもフレンドリーな空気に変わります。 そのノーサイドの精神は観客席も同じです。席はチームごとに分かれていないので、相手チームを応援している人と隣り合わせになることは当たり前。試合中はどんなに興奮したとしても、試合が終わればお互いラグビーファン同士。サッカーのフーリガンのように客席で暴動が起きるようなことはありません。 にわかファンの方もこの「ノーサイド」の精神だけはしっかり理解して、一生に一度のビッグなイベントに積極的に参加して楽しんでください。ラグビーの魅力を実感し、にわかファンから本当のファンになっていく人が、少しでも増えることを期待しています。
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