声をあげても変わらない……ワーママ達に暗い影を落とす「職場内対話無力感」とは?
「無力感」を抱えるワーキングマザー達 産後も職場で働き続けたい。子どもが大きくなるまでは、時短勤務などでワークライフバランスを調整したい。いずれはキャリアを積みたい。そんな思いとは裏腹に、職場に意向を伝えられないまま、時に離職をも決意する女性は未だ少なくないようです。 パーソル総合研究所(港区南青山)は、ワーキングマザーが活躍できるようにするために企業が何をすべきか、データをもとに解決策を提示することを目的に、調査を実施。その結果見えてきたのは、彼女たちが抱える「無力感」でした。 ワーキングマザー達が職場で抱える「無力感」とは(画像:写真AC) 調査は2019年1月9日(水)から1月17日(木)までの期間、インターネット上で実施。子どものいる正社員女性と、子どものいる正社員を辞めた女性をはじめ、その配偶者や上司、同僚(合計2100人)を対象に行なっています。 「声をあげても、職場は変わらない」 無力感を抱える人は4割以上 調査では、「自分が声をあげても、職場は変わらないと思う」という設問に対し、「そう思う」「ややそう思う」と回答したワーキングマザーは約4割に上りました。また、既に退職している女性には、離職した会社でどう感じていたかを聴取したところ、「そう思う」「ややそう思う」と回答した割合が過半数を超えています。 結果から見えてくるのは、「職場内対話無力感」ともいえる感情を、少なくない人が抱えているということ。また、その原因は大きく分けてふたつ、「職場要因」と「本人の固定概念」によるといいます。詳細は以下のとおりです。 ●職場要因 ・社員の意見が経営に反映されない ・上司がスキル、能力を活かせるような仕事を与えてくれない ●本人の固定概念 ・職場で個人的な願望を伝えるのはよくない ・子どもがいたらやりたい仕事をするのは無理だと思う ・周囲の方に配慮して自身の主張を通すようなことはしない この状況を踏まえ、同社の調査員は、企業側が「受け入れる姿勢」をつくり、相談しやすい環境をつくることの重要性を示唆しています。「ワーキングマザーが思い込みで諦めてしまわないように、社員一人ひとりと対話しながら組織に貢献できる働き方や仕事内容を考えるという柔軟な姿勢を明確に示し、まず相談することを促していくことが重要である」とのこと。 一方雇用者側も、時に勇気を持つことが大切だと話します。 「課題が何なのかを認識できないままでは、対処することが困難です。まずは、何に問題を感じているのか、対話し、伝えることが重要です」 「上司に仕事量を調整して欲しいと伝えられない」は約5割「上司に仕事量を調整して欲しいと伝えられない」は約5割 同調査では、ワークライフバランスがとれていないと感じている、ワーキングマザーの約5割が、上司に仕事量を調整して欲しいとの希望を伝えていないことも判明しています。伝えていたとしても、回数は決して多いとはいえず、「年に1回以下」が22.7%、「半期に1回程度」が14.1%。「四半期に1回以上」と回答したのは、14.1%でした。 5割は希望を伝えていない(画像:パーソル総合研究所) その結果を踏まえ、調査員は「仕事を抱え込み、相談せずに辞めてしまう可能性がある」と指摘します。「上司が適切なコミュニケーションがとれるような関係性を築き、個々の状況にあわせて仕事量を調整していくことが望まれる」とのこと。 また、子ども起因の離職は、子どもが小学生になってからも起こることにも言及。「子どもがある程度成長してもケアのための時間がかかることを理解すべき」とし、そのうえで、セーフティネットとして、小学生以上でも短時間勤務できる選択肢を用意するなど、「ワーキングマザーそれぞれの事情に応じて対応することが望ましい」としています。 企業側は、雇用者側が押し黙っている可能性を想定し、雇用者側の意見を柔軟に聞く姿勢を持ち、雇用者側は、自分の意見を押し殺しすぎないようにする——。その上で、対話の機会を増やしていくことこそが、現状の問題を改善する一歩なのかもしれません。
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