有名画家・モネが愛した庭園の「そっくりさん」が世界で唯一、高知の山村にある理由
印象派絵画とゆずの味わいを楽しむカフェ 印象派の代表的画家、フランスのオスカー・クロード・モネ(1840年~1926年)。彼が晩年を過ごしたフランス北部の村ジヴェルニーの庭をモデルに造られた高知県北川村の庭園「モネの庭」が、2020年4月に開館20周年を迎えます。これを記念したコラボレーションカフェが、14日まで千代田区丸の内の丸の内ビルディング1階「Marunouchi Cafe」で開かれています。 丸の内ビルディング1階「Marunouchi Cafe」の坂下店長と、ホットゆずティー(2020年2月10日、遠藤綾乃撮影) 期間中のカフェでは、北川村産のゆず茶を使った「ホットゆずティー」(650円)や「ゆずシャーベット」(500円)」、ゆず果汁たっぷりの「ゆず炭酸水」(730円)といった特別メニューが味わえるほか、北川村の「モネの庭」を紹介する映像がスクリーンに映し出されたり、モネの絵のレプリカが飾られたりしています。 店内の各テーブルには、北川村産のゆずがひとつずつコロンと置かれていて、来店客たちは不思議そうにゆずを手に取って眺めたり、特別メニューを注文したりしていました。 店長の坂下洋介さんによると、ゆずメニューは丸ビル周辺で平日働く女性会社員たちに、週末は親子連れに人気だそう。「さわやかな香りが立って、酸味も甘みもちょうどよい。飲みやすい味なのでけっこう注文をいただいています」とのことでした。 それにしても、モネが晩年を過ごし数々の作品にも描いたジヴェルニーの庭の再現庭園があるのは、世界で唯一、高知県北川村だけ。世界中で愛される「モネの庭」がなぜ、人口約1300人の北川村にあるのでしょうか。 小さな村の熱意が実現させた「世界唯一の庭」小さな村の熱意が実現させた「世界唯一の庭」 高知県の東部に位置する北川村は、内陸の山々に囲まれた小さな山村です。高齢化と人口減少の課題に直面した村は、1990(平成2)年頃から村おこし事業を模索し始めました。 始めに検討された案は、村自慢の特産品ゆずを使ったワイナリー。しかしこれがなかなかうまく進みません。計画の練り直しを迫られた村が次に思いついたのが、ワインというキーワードをから連想した「ワイン王国・フランス」、中でも日本の浮世絵に影響を受けたとされる印象派画家クロード・モネでした。 親日家でもあったモネが愛した庭園を北川村にも造るフラワーガーデン構想が、1996(平成8)年にスタートしました。 同年秋、村役場の職員は何のツテもないままにフランスのジヴェルニーを目指します。関係者を探し、何度も現地を訪ねるなかで、1997年、クロードモネ財団のヴァン・デル・ケンプ理事長(当時)との出会いを果たします。 それまで世界でどこにも許されなかったモネの庭の再現庭園は、村の熱意にほだされたケンプ理事長の「日本の小さな村の頑張りに協力しましょう」という約束により、実現に向けて動き出します。 2000年4月、北川村の「モネの庭」は、世界で唯一モネ財団から認められた庭園としてオープンしました。 まん丸の北川村産ゆずと、ホットゆずティー(2020年2月10日、遠藤綾乃撮影)「おそらく世界のさまざまな市町村から同じような希望が寄せられていると思うのですが、モネ財団が許可した再現庭園は20年前も、今も、北川村だけです。なぜ北川村が? とよく聞かれるのですが、小さな村の商売っ気の無さや、地元を何とかしたいという切実な願いに応えてくれたのだと思っています」 高知県地産外商公社(中央区銀座)の総務企画課長補佐、野戸昌希さんはモネ財団の考えをそう分析します。 モネが夢見た「青いスイレン」が咲き誇る庭モネが夢見た「青いスイレン」が咲き誇る庭 北川村の庭園に咲く花のうち、特に来場者の目を引くのは青い色のスイレンだそう。モネの絵にたびたび登場し、しかしシヴェルニーの庭では気候が合わず実際には咲いていなかった青いスイレンが、北川村の庭には咲き誇っています。 花々の配置はもちろん水面(みなも)に写り込む木々の植栽まで、モネの世界を繊細に華やかに再現した庭師・川上裕さんは2015年、その功績を認められてフランスの芸術文化勲章「シュバリエ」を受賞した腕前。モネの名に恥じぬようにと、季節ごとはもちろん日々の細かなメンテナンスを欠かしません。 現在、庭園の来場者数は毎年7万人ほど。20周年を迎える2020年は庭園の一部をリニューアルし、8万5000人を目指しているそうです。 「北川村 モネの庭 マルモッタン」は、高知龍馬空港から約1時間。12月~2月は冬期メンテナンスを行っていて、2020年は3月1日に開園を迎えます。開園時間は9~17時です。
- おでかけ