JR大久保駅の「ほのぼのポスター」が地域住民に話題 人呼んで「月刊 大久保駅」、いったいどんな内容?
2019年の3月からJR大久保駅構内に貼られている「月刊 大久保駅」が地域住民の間で話題になっています。駅周辺を日々取材しているアジア専門ライターの室橋裕和さんからの報告です。直筆のメッセージとイラストが街の話題に JR大久保駅、北口の改札のそば。今日もその大きなポスターの前で、足を止めている人たちがいます。そこには「大久保駅をご利用の方へ」と題された、駅員さんによる手書きメッセージが貼り出されているのです。 例えば2020年8月のメッセージは、 「海やプールといった夏定番の遊びが(コロナ禍のため)制限されていますが、ぜひこの機会に夏ならではの遊びを見つけてみませんか?」 「学生の皆さまはまだまだリモート授業でたいへんかと思います。また生活リズムが壊れがちになるので、ご飯を食べて、睡眠を取り、夏バテや熱中症を防止しましょう」 なんて書かれています。 毎回、味のあるイラストも添えられていて、その手作り感が「妙にほんわかしていて和む」と、地域住民の間で話題になっているのです。 このメッセージは毎月更新されることから、人呼んで「月刊 大久保駅」。書いているのはまだ若い駅員さんです。JR東日本を通して、話を聞きました。 制作している駅員さんに直撃制作している駅員さんに直撃――このメッセージをはじめたのはいつでしょうか。 「2019年の3月からです。駅をご利用いただく方には学生さんも多いのですが、この時期に学校を卒業する皆さんに、なにかひとつでも思い出を増やしていただければという思いから始めました」 「月刊 大久保駅」2020年8月号。イラストがいい味を出している(画像:JR東日本) なるほど! 確かに2020年3月のメッセージは、卒業生に向けて書かれていました。筆者(室橋裕和。アジア専門ライター)はそこにあった、 「本来きっぷには有効期限がありますが、いま皆さまが手にしている“それぞれの未来”というきっぷに有効期限はありません。そのきっぷを終着駅の改札に通すのはまだまだ先になると思います。辛くなることもあるでしょう。そのときは始発駅に戻り、家族や友達に打ち明けるのもいいと思います! きっぷが古くなったり、文字が薄くなったら駅員が再発行します!」 というメッセージには、ジーンときました。 意外な内容で楽しい“余談コーナー”――毎月、どんなことを書こうと考えているのでしょうか。 「上段部分は“大久保駅をご利用の方へ”と、季節に応じた文章を書いています」 たしかに、冬の寒さや年末年始、梅雨についてなど、四季折々のお話が必ず書かれています。最近は、コロナ禍をみんなで乗り越えようという話題も。 「それと、“余談コーナー”という下段部分には、ポスターをご覧になった方が笑顔になっていただけるような文章を書こうと心がけています」 2020年6月の“余談コーナー”は、意外な内容で利用者を楽しませてくれました。大久保駅は、改札天井にカラフルなステンドグラスがある珍しい構造だということを紹介していたのです。 2020年6月号の“余談コーナー”ーのテーマはステンドグラス。見上げると確かに色鮮やかな天井が(画像:室橋裕和) このときは実際に、改札のところで天井を見上げる人が続出したとかなんとか……? いつしか駅員さんと利用者との交流の場にいつしか駅員さんと利用者との交流の場に――駅の利用者から、意見が寄せられることはあるのでしょうか。 「お客さまからご感想を直接伺ったり、ポスターを掲示しているホワイトボードに書き込んでいただいたりしています。ありがとうと声をおかけいただくことが多いですね」 そう、駅員さんのメッセージを受けるように、いつの間にか駅の利用者もポスターに書き込みをするようになったのです。 2020年7月の七夕のときが特に印象的でした。 “余談コーナー”に笹(ささ)飾りのイラストが描かれたのですが、そこに短冊に見立てて願いを書いた付箋が貼られていき、これが日を追うごとにどんどん増えていったのです。 「受験に合格できますように」 「子供たちが笑顔でいられるように」 「コロナが早く収束しますように」 それぞれの願いに加えて、大久保という街に対する愛着や、駅員さんへのねぎらいの言葉も寄せられ、見事な笹飾りは完成。とても感動的でした。 2020年7月号は、駅員さんと利用者たちによって見事な七夕の笹飾りが完成した(画像:室橋裕和) また、大久保は多国籍な外国人が住む街でもありますが、彼らから励ましの声がかけられることもあるそうです。 ――メッセージを続けてきて、もっとも印象的だったことはなんでしょうか。 「やはり、“大久保駅が好き”と言っていただけることですね」 コロナ禍のいま、駅員の皆さんも、電車で通勤通学する人たちも本当に大変です。そのなかで、大久保駅のメッセージは、一服の清涼剤のような存在として愛されています。 きっとこれからも、利用者たちを癒やしてくれるに違いありません。
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