最近のゲームセンターに「クレーンゲーム」ばかり置かれている理由
昭和のゲームセンターにはビデオゲームやメダルゲームなどが多かったものの、最近はクレーンゲームばかり。いったいなぜでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。クレーンゲームは業界の稼ぎ頭 ゲームセンターはコロナの打撃を受け、都心部でも閉店する老舗店舗が出てきています。その一方で、「クレーンゲームはむしろ増えているのでは?」と感じる人も多いのではないでしょうか。アーケードゲーム機のはやり廃りは激しく、一大ブームとなるような機種でも数年で姿を消しています。しかし、クレーンゲームはそれに含まれません。近年は主力機種であるビデオゲームやメダルゲームの業績が精彩を欠いていますが、クレーンゲームを含むプライズ(景品)ゲームの売り上げは安定しており、現在のゲームセンターの稼ぎ頭と言っても過言ではありません。 クレーンゲームのイメージ(画像:写真AC) 日本アミューズメント産業協会(千代田区九段南)の「アミューズメント産業界の実態調査」によれば、2019年同協会員のプライズゲームの売上高は2988億円。これは同協会員のゲームセンターの売り上げ全体の55.3%のシェアを占めています。対前年比6.2% の増加で、2015年度からはずっと増加傾向にあることがわかります。 クレーンゲームは1990年代のゲームセンター黄金期をけん引した機種のひとつ。1990(平成2)年にセガから登場した「UFOキャッチャー」はクレーンゲームの代名詞ともなりました。 UFOキャッチャーが注目を浴びたワケ UFOキャッチャーが注目を浴びたのは、プライズに人気アニメや人気ゲームのキャラクターの小型ぬいぐるみシリーズを投入した点です。デフォルメされたかわいさとUFOキャッチャーにしかないオリジナル商品の希少性から、プライズ目的で遊ぶ女性が増加しました。 江東区有明にある有明ガーデン内の「セガ 有明ガーデン」(画像:GENDA SEGA Entertainment) 当時、ゲームセンターはカップルのデート場所となっており、女性にねだられてUFOキャッチャーに興じる男性も。また、シリーズ化されているとコンプリートしたくなるのが人の常で、次々にコインを投入してしまいます。かばんに戦利品を全種類ぶら下げている女子高生や、後部座席に誇らしげに全種類並べている車をよく見かけました。 クレーンゲームはインカム(収入)を稼げる機種と言えるでしょう。プライズを中国で生産して低コスト化したことも、コストや風営法の観点から導入を拡大させた一因です。 プライズは本来、風営法の規制対象ですが、射幸性(偶然の利益を得ること)をあおらない程度の金額の物品であれば例外とされており、業界では一定の小売価格以下の物品にするように自主規制を行っています。 ユニークな景品も増加ユニークな景品も増加 クレーンゲームはプライズを入れ替えていくことで稼働を維持することがある程度は可能と言えます。プライズは小型ぬいぐるみからさまざまな物品に発展していきました。過去にはアイスや生きた伊勢エビなども登場。さすがにペットなど生物を入れた時は問題になりました。 2000年ごろからは規制金額が800円に上がったこともあり、プライズの大型化が進展しています。 大型ぬいぐるみや巨大菓子などで、遠くからでも目を引く効果があります。巨大菓子はパッケージだけが大きくて、なかには通常サイズのお菓子が何個か入っているものですが、大型の戦利品は抱えていても気分が高揚しますし、子どもにあげてもびっくりして喜ばれるものなので、幅広い層の利用が見られます。 クレーンゲームをプレイする女性(画像:写真AC) また、独特な製品も開発されました。 スクイーズ系と呼ばれるプライズはふにゃふにゃの感触を楽しむもので、カラフルなゼリーのようなものや、透明な卵や目玉焼きのようなもの、香りの付いた焼きたてパンやケーキのようなものなど。 2010年ごろには人気アニメのフィギュアがゲームセンターのクレーンゲームを席巻したことがあり、幅広い層に大きな反響を呼びました。 それ以降フィギュアが置かれることが増加。近年は定期的に爆発的な人気となる国民的ヒット作が出てきているため、その時々の人気アニメフィギュアや多彩なキャラクターグッズを投入して、そのファンを取り込んでいきます。 景品の高額化が生んだもの 近年、プライズが取れなくなったとのうわさをよく聞きます、アームの力が弱かったり、何回も動かさないと落ちない場所に置かれていたり、確かに1回で取るのが難しくなった感は否めません。 クレーンゲームのアーム(画像:写真AC) クレーンゲームは1回の料金はおおむね100円~200円なので、以前より高額になったプライズの価格を考えれば、店舗とすれば当然のことでしょう。店舗によって取れやすいサービス台を設置したり、スタッフに声をかけると取りやすい位置にしてくれたりして、取れない人の「救済措置」もあります。 しかし、最近は全く取らせる気がないのでは? と疑いたくなるほどアームの弱い店舗も見られ、ユーザーの取れないストレスが高まっているのも事実です。 オンラインクレーンゲームの登場オンラインクレーンゲームの登場 2020年からのコロナ禍では、オンラインクレーンゲームが注目されました。オンラインクレーンゲームはネットで離れたところにあるクレーンゲームを操作して、獲得したプライズは後日配送されてくるといったものです。 2012年にサイバーステップ(杉並区和泉)の「トレバ」がサービスを開始。24時間利用が可能で、仕事から帰って深夜に遊んだり、家事の合間に遊んだりできることから、当時も斬新なサービスとして話題になりました。出無精の人やひとりでゲームセンターに入りづらい女性などにも適しているでしょう。機種本体は倉庫に大量に並べられており、深夜にひとりでに稼働していると思うと不思議な感じです。 オンラインクレーンゲーム「トレバ」のウェブサイト(画像:サイバーステップ) 利用時間のほかにも、 ・プライズの豊富さ ・新商品の早さ など、オンラインクレーンゲームならではのメリットもあります。 コロナによる外出自粛の際には、家にいながらにして楽しめるゲームとして改めて人気が拡大。大手ゲームメーカーも参入し、GENDA SEGA Entertainment(大田区大森本町)は「GOTON!」「LEFTる。」、バンダイナムコアミューズメント(港区芝浦)は「とるモ」、タイトー(新宿区新宿)は「タイトーオンラインクレーン」、ラウンドワン(大阪市)は「クレッチャ」、カプコン(大阪市)は「カプコンネットキャッチャー」、イオンファンタジー(千葉市)は「モーリーオンライン」を運営しています。 近年、クレーンゲームの台数はずっと増加傾向にありますが、コロナ禍でその傾向がさらに加速しています。やはりインカムの稼げるクレーンゲームへの依存が高くなっていると言えます。 東京レジャーランド池袋店(豊島区東池袋、設置台数330台)のように一般のゲームセンターからクレーンゲーム専門店にリニューアルした店舗も。 最近はこのような専門店が増えており、エブリデイとってき屋東京本店(埼玉県八潮市、448台)、タイトーステーション府中くるる店(府中市宮町、454台)といった400台規模で設置している超大型店舗も見られます。これらの店舗ではYouTuberがよく動画撮影を行っており、それで知っている人もいるでしょう。 専門店が増えることによって、選べる機種が増えて、取りやすいサービス台が増えればうれしいことです。昔遊んだことのある方も、改めてクレーンゲームで遊んでみてはいかがでしょうか。
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