キャッシュレス生活「PASMO最強説」を検証 生粋の50代現金派が、PASMOに乗り換えてみた結果……
昭和男子、キャッシュレス生活はじめます。 2019年10月1日(火)に消費税が10%に引き上げられ、同時にキャッシュレスポイント還元も始まりました。テレビでもネットでもキャッシュレス支払いの話題が盛んに取り上げられていて、「いつもニコニコ現金払い」派な昭和親父の僕も、ポイント還元してもらうためにはキャッシュレス生活を始めた方がいいのではないだろうか? とさすがに考え始めたのです。 コンビニ店頭に貼られているステッカー(画像:富田格) とはいえ、「おサイフケータイ」すら使ったことがない現金払い派にとって、いきなりキャッシュレスに対応するのは至難の業。クレジットカードは使っているものの、細かい支払いすべてをクレジット払いにするのは面倒そうだし、TVでCMがよく流れている「○○ペイ」も種類が多過ぎて何を選べばいいのか分かりません。周囲の同世代に尋ねてみても、「よくわからないから使ってない」という答えばかりでまったく参考になりませんでした。 そんなとき、財布の中にずっと入っているPASMOの存在を思い出しました。QRコードで支払う「○○ペイ」よりもはるかに以前からキャッシュレスを推し進めていた交通系ICカードです。 にも関わらず、僕は「電車・バスの定期」+「定期外区間に行くときのための余分の交通費支払い」という用途でしか使っていませんでした。たまに駅のホームの自販機で飲み物を買うときにPASMOで支払うことはあるものの、あくまで交通費を支払うためのものとしか認識していませんでした。 「そういえばコンビニとか、いろいろなところで鉄道系ICカード支払いができるようになっていたなあ」。利用したことはないのですが、レジのところにPASMOを始めたとした鉄道系ICカードのマークが表示されているのは見たことを思い出してきました。しかも何回も、それも全国各地で。 鉄道系ICカードは通勤・通学する人ならほぼ全員使っているし、何年も前から使われているから支払いに対応している店も多いだろうし、もしかしたらキャッシュレス生活を始めるならこれが一番の選択肢なのでは? と思い始めたのです。 PASMOとQRコード支払い、どっちにしよう?PASMOとQRコード支払い、どっちにしよう? そこで、まずは実際にポイント還元対応店がどれくらいあるのか調べてみることにしました。 「キャッシュレス・消費者還元事業」というサイトで登録加盟店を検索することができます。鉄道系ICカードと、QRコード決済「○○ペイ」を比較してみることにしました。 鉄道系ICカードはPASMOを選択、QRコード決済はよく耳にする有名な「A社」と、僕はあまり聞いたことがなかった「B社」を選択しました。まずは新宿3丁目近辺で検索してみました。 新宿三丁目駅周辺のポイント還元対象店舗(画像:富田格、2019年10月1日現在) 明らかに鉄道系ICカードに対応している店舗が多いのが分かります。では都心部を離れてみたらどうなるのか、僕が住んでいる三鷹駅周辺で検索してみると、QRコード「A社」も健闘しているものの、やはり鉄道系ICカード対応の店舗が圧倒的に多いようです。 JR東日本のSUICAは2001(平成13)年、地下鉄・私鉄系のPASMOは2007年からサービスを開始しているわけで、10数年の間に対応店舗を時間をかけて増やしてきたわけだから、ここ数年でサービスが始まったQRコード支払いよりも遥かに多くの店舗で使えるのは当然といえば当然のこと。少なくとも僕の生活圏においてはPASMO(鉄道系ICカード)が最強だと分かったので、キャッシュレス生活はPASMOを使って始めようと決意しました。 キャッシュレス還元の仕組みを入念にチェックキャッシュレス還元の仕組みを入念にチェック いざ、PASMOでキャッシュレス生活スタートだ! と意気込んだのですが、ここでひとつ疑問が。 「PASMOでポイント還元って、どういう方法で還元してくれるの?」 PASMOのサイトを開いてみると「PASMOキャッシュレスポイント還元サービス」という画像が表示されます。どうも会員登録する必要があるようです。表示に従ってメールアドレスを記入して送信すると、本登録用のURLが送られてきました。 本登録用のページでも、指示に従って必要事項を記入していきます。名前、生年月日、住所、電話番号に加えてPASMOの裏面右下に記載されている「PB」で始まる17桁の番号も記入します。PASMOにこんな番号が振られているとは、今まで意識したこともありませんでした。 最後に「利用規約に同意する」という、この種の会員登録の際に必ずあるチェックボックスが表示されます。本当は良くないことなのですが、時間がないときはついつい利用規約を読まずにチェックしてしまうこともあったりしました。ところが、PASMOの登録サイトではそれはできません。利用規約のPDFを開かないとチェックできない仕組みになっているからです。 せっかくPDFを開いたなら読んでみるかと、ざっと目を通してみました。いかにも利用規約らしい文言が並んでいますが、最後の方にポイント還元に関しての説明事項がありました。そこで、PASMOでポイント還元を受けるために知っておくべき重要事項だけを抜粋して紹介します。 PASMO公式サイトに表示されているバナー(画像:富田格)「第11条 ポイントの集計は、次の3つの期間(以下「集計期間」という。)に分けて行う。第一期:2019年10月1日(火)~2019年12月31日(火)、第二期:2020年1月1日(水)~2020年3月31日(火)、第三期:2020年4月1日(水)~2020年6月30日(火)」 どうやら3か月ごとにポイントを集計するそうです。 「第13条会員は、月毎に付与されたポイント、集計期間毎に付与されたポイント及び集計期間毎の確定ポイントを会員サイト及びコールセンターで確認することができる。2.ポイントは月末締めで集計し、翌月に前月分が反映される。そのため、会員サイトやコールセンターでポイントが確認できるまで最長1か月程度を要する」 毎月どれくらいポイントをゲットできたのかを知りたい場合は、翌々月(10月分なら12月)にサイトやコールセンターで確認できるようですね。 「第14条 集計期間毎に確定したポイントについては、各集計期間終了の翌月上旬にアドレス宛に通知する」 なるほど、一定期間ごとに確定ポイントを記載したEメールを登録したメールアドレスに送ってくれるということですか。 「第16条 ポイントの還元方法は、確定ポイント1ポイント=1円として計算した額を登録PASMOにチャージする方法による還元とし、当該還元の場所・時間等の還元方法の詳細については、第14条に定める通知に記載するほか、当社の WEBサイト等に定める」 取得できるポイントは1ポイント=1円で、PASMOにチャージすることで還元されます。ポイント還元できる場所・時間は送られてくるEメールに記載されているのですね。 「2.還元の際は、第14条に定める当社からの通知が記録された端末若しくは通知に記載されている還元に必要な情報が印刷された紙と、登録PASMOを、会員本人が持参しなければならない」 ポイント還元する時は、送られてきたEメールをスマホかタブレットで表示するか、そのメールをプリントアウトしてPASMOと一緒に持参する必要があるということです。 「4.登録PASMOの残額と確定ポイントを合算して20,000円を超える場合、当該ポイントは還元することができない」 「5.確定ポイントは、各還元期間に 1回のみ一括して還元するものとする。確定ポイントを分割して還元することはできない」 PASMOなど鉄道系ICカードのチャージできる上限は2万円なので、ポイント還元額が大きい場合はPASMOのチャージ残額を確認してからポイント還元しないといけません。 「第17条 無記名PASMOである登録PASMOを紛失した場合、ポイントは還元することができない」 これも重要。PASMOを紛失したら還元してもらえなくなります。 利用規約をきちんと読んだおかげで、PASMOのポイント還元の仕組みも理解できました。ということで会員登録も完了。いざ、PASMOでキャッシュレス生活を始めます。 街の店で片っ端から買い物をして、PASMO支払いしてみた街の店で片っ端から買い物をして、PASMO支払いしてみた PASMOに上限の2万円をチャージ、続いてスマホに「ポイント還元対象店検索アプリ」をインストールして準備完了です。実際に使ってポイント還元を体験してみることにしました。 まずは近所のコンビニからスタート。コンビニの店頭には「キャッシュレスでお支払いのお客様には2%還元」というシールが貼られています。 試しにペットボトルの麦茶をPASMOで買ってみました。レシートを見ると「キャッシュレス還元2」と表示されています。つまりコンビニではポイントが後ほど還元されるのではなく、その場でポイント分が割引されるということです。 コンビニは支払い時に2%還元される(画像:富田格) 続いてアプリでポイント還元対象店を検索してみたところ、仙川駅近くの「フレッシュネスバーガー仙川店」が「還元率2%」対応店として表示されたので行ってみます。 「イートインは10%、持ち帰りは8%」の税率がややこしい、ということをテレビで盛んに流れていたので、『オニオンリング・フライドポテト・マッシュルームクリームスープ』をイートイン、『アイスコーヒー』を持ち帰りで注文しました。ところがレシートを見るとどちらも「内税10%」と表示されています。 まさか、まだレジが対応できていないのでは? と疑って尋ねてみたところ、「フレッシュネスバーガーでは消費税8%のときの税込価格を維持して、イートインでもテイクアウトでもお支払いいただく価格を統一する『税込同一価格』となっています」と教えてくれました。 調べてみると、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、松屋、すき屋なども同じ『税込同一価格』を採用しているそう。いっぽうモスバーガーや吉野家、スターバックスコーヒーなどは、「イートイン8%、持ち帰り10%」の『本体同一価格』を採用しているとのこと。店によって消費税の表示が異なるのは、慣れるまでちょっと混乱しそうです。 ポイント還元の対象店ではないですが、「猿田彦珈琲」でアイスコーヒーをイートイン、珈琲豆をテイクアウトで同時に購入してみたところ、レシートにはそれぞれ8%と10%の消費税が記載されました。 あるベーカーリーでは「店内の価格表示はテイクアウト用8%の表示になっています。イートインの場合税率が異なります」というお知らせが貼ってありました。ワインや食品を扱う店では、軽減税率対象8%のものと10%のものをシールの色で分けて表示していました。 店頭に「キャッシュレスでお支払いのお客様には5%還元」というポスターを貼ってある店の人にお話をうかがったところ、「申請はずいぶん前に出したのですが、ポスターが届いたのは9月末になってからでした」とのこと。「ポイント還元対象店検索アプリ」で同じ地区を検索すると、対象店の表示が日々増えていっています。全国一斉スタートの大規模事業ですから、システムが整うのにも消費者の側が慣れるのにも、しばらく時間がかかりそうですね。 まるで「ポケモンGO」のような街歩き感まるで「ポケモンGO」のような街歩き感 ややこしい部分が多いキャッシュレス還元ですが、アプリを使って還元対象店を探したり、ポイントを貯めたりしていくのは街歩きゲーム「ポケモンGO」のような面白さがあります。さらに、「8%なのか10%なのか?」、「ポイント還元されるのか、されないのか?」と、何かを購入する際に消費税のことを意識することが自然と身についていくだろうとも感じています。 お恥ずかしながら消費税については「決まったことだから支払わなきゃならない」と深く考えることがなかったのですが、何かを買うたびに消費税について考える生活は意識もおのずと変わっていくだろうと思います。 食料品店では、軽減税率対象商品とそれ以外をシールの色で区別(画像:富田格) この消費税はどういう経緯で導入されたのか、そして消費税はどう使われていくのか。僕たちが毎日の生活の中で支払い続けていく税に関して、関心を持つきっかけになるのは決して悪くないこと。僕もゲーム感覚で還元ポイントを貯めながら、税についてもっと調べていこうと思っています。
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