世田谷の高級住宅地に突如現れる謎の筋肉ムキムキ野郎――等々力渓谷商店街「とどロッキー」【連載】都内 地味キャラこれくしょん(2)
有名なばかりがキャラクターの価値じゃない! 深く長く愛してくれるファンがいる“地味にスゴイ”キャラたちを訪ねる連載企画「地味キャラこれくしょん」。第2回は、等々力渓谷商店街振興組合の「とどロッキー」です。都内屈指の閑静な住宅地になぜ? 東京都世田谷区。 91万7000人超という東京都最多の人口を誇り(2020年1月1日時点)、下北沢や三軒茶屋、成城学園など多彩な表情を併せ持つ都内屈指の人気エリア。 中でも区の南部に位置する等々力(とどろき)地区は、自由が丘と二子玉川という区内有名スポットに挟まれながらも多くの樹木や畑が残り、東京23区内唯一の渓谷「等々力渓谷」を擁する昔ながらの高級住宅地。 都心への交通利便性と原風景的な自然を両立する希少な土地柄は、子育て世代などからも人気が高まる注目のエリアです。 忘れられないインパクトの見た目 そんな等々力の街にはしばしば、謎の巨体キャラクターが姿を現します。 薄いオレンジ色の体につぶらな瞳、愛嬌(あいきょう)のある口元、ボクサーパンツと赤いグローブ姿。そして何より約180cmの身長と筋骨隆々のいでたちは、一度見たら忘れられない独特のインパクト。 彼の名は「とどロッキー」。地元の商店主らでつくる等々力渓谷商店街振興組合のマスコットキャラクターで、もちつき大会や街飲みイベントに参加しては地域住民たちの注目を集めています。 ボクシングと甘食が大好きな、生粋の等々力男子。「体はごついけど、おちゃめで楽しいスマイルファイター」という細かなプロフィルもあるそうなのですが、それよりも、なぜこのデザインになったのかが気になります。 世田谷の人気高級住宅地に、筋肉ムキムキの謎キャラ。ちょっとミスマッチ感があるようにも思えるのですが……。 「トド」と有名映画の語呂合わせ「トド」と有名映画の語呂合わせ 同組合の事務局長、豊田浩さんによると、このキャラのモチーフはアシカ科の生き物トド。「トドと、1977(昭和52)年に公開されたアメリカのボクシング映画『ロッキー』を合わせた語呂合わせですよ。等々力ですからね」。 身長は約180cm。横幅も相当でかい、世田谷区等々力の商店街キャラクター「とどロッキー」(画像:等々力渓谷商店街振興組合) 発案したのは同組合青年部のメンバーたち。 「いいアイデアがあるんですよ」。そう言って持ち込まれたのが、くだんのとどロッキーの案でした。 「着ぐるみを作ってイベントなどに登場したら盛り上がるんじゃないですか?」。折からのゆるキャラブーム(当時)にあやかって、2013年10月27日にデビューを果たしました。 決して順風満帆ではなかった歴史「とはいえ今の若い人たちは映画の『ロッキー』を知らないんですよね。大人たち、特に男性たちには最初からウケたんですけど、小さな子どもの中には見た目にビックリして泣きさけんじゃう子もいて……」(豊田さん)。 当初、寄せられる住民の感想は「でかい」「ごつい」。なぜトドがモチーフなのかが伝わらず「等々力渓谷にはトドがいるんですか?」と質問されることもあったそう。 東京23区内唯一の渓谷「等々力渓谷」。残念ながら本物のトドは住んでいない(画像:写真AC) 全国の猛者(キャラ)たちが人気を競うイベント「ゆるキャラグランプリ」などにもエントリーするも、順位はいまいち振るわず。 「やっぱりカワイイ系のキャラにした方が良かったのかなあ……」と思い悩んだ時期もあったけど、地道に地元イベントに登場させ続けたことで、少しずつ知名度と人気を高めていったそうです。 初登場から7年弱。最近では近くの東京都市大学(世田谷区等々力)や駒澤大学(同区駒沢)の学園祭や、玉川高島屋(同区玉川)の開店50周年記念に登場したりと、すっかり地域の愛されキャラに定着しました。 ゆるキャラが地域と住民をつなぐゆるキャラが地域と住民をつなぐ「着ぐるみを作った当初は、区外から(商店街へ)のお客さんの呼び込みにつなげればと思って『世界キャラクターさみっと』や『ご当地キャラクターフェスティバル』というような大型イベントにも参加してみましたが、なかなかそう簡単にはいきませんね」(豊田さん) ただ一方、地元での堅実な人気を年々高めていっているのは先述した通り。 毎年7月の地域のお祭りでは、とどロッキー会いたさに必ず参加するようになった若い世代もいるそうです。 「東京23区内の住宅街」と聞くと、新住民も多く住民同士のつながりが希薄といったイメージを抱きがち。ですが、とどロッキーはその持ち前のインパクトを生かして、地域と住民とを結びつける役割を大いに果たしているようです。 商店街と一緒に成長していくキャラ ところで、地域の祭りは「おどろきとどろき祭り」というそうです。小気味のいい韻を踏むその名称といい、今回の主役とどロッキーといい、等々力の商店街は何かとダジャレがお好きなのかもしれません。 世田谷区等々力の位置。区の南部に位置する(画像:(C)Google) とどロッキーの誕生日は2011年10月6日(木)。木曜日の「木(き)」まで含めて、きっちり「とどろき」の語呂をそろえています。 おかげで毎年1歳ずつ年を重ねていく設定となったとどロッキーは2020年8月現在、9歳の男の子。人間でいえばヤンチャに渓谷を駆け回っている年頃でしょうか。 「新型コロナの影響でイベントが軒並み中止になって、今は登場の機会がありませんが。収束したら、また皆さんにとどロッキーをたくさんお披露目したいですね」(豊田さん) さまざまな苦難に見舞われつつも、自慢の筋肉とつぶらな瞳で商店街とともに1歳ずつ成長を重ねていくとどロッキー。再び活躍する日を心待ちにしている住民も、きっと少なくないはずです。 ●団体情報 ・団体名:等々力渓谷商店街振興組合 ・キャラ名:とどロッキー ・事務所住所:世田谷区等々力2-32-11 森田ビル3階 ・事業内容:商店街
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