全校児童10人未満……群馬の田舎で育った25歳女性が「東京も地元も変わらない」と悟った理由【連載】上京女子物語(1)
東京で暮らす人の、約半数は地方の出身。皆、どのような夢を描いて上京し、どんな毎日を過ごしているのでしょうか。あなたの隣にいるかもしれない「上京女子」たちの物語をたどります。東京都民の約半数は地方出身者 在住する人のうち約半数が地方の出身者だという街、東京。住み慣れた土地を離れて東京へ。そのとき、どんな想いが胸に去来し、そして東京にどのようにして居場所を作っていくのでしょうか。 上京してきた独身の女性に東京での物語についてお聞きします。 子どもの頃、東京は「夢の都」だった 今回、お話を聞いたのは板橋区に暮らすミホさん(仮名)25歳。渋谷にある大学への進学を機に群馬県から上京してきました。 地方から上京し、東京で暮らす女性は、どんなことを感じながら日々を過ごしているのか(画像:写真AC) 最初に暮らした街は東京ではなく、横浜市。ひとりっ子で両親ととても仲が良かったこともあり、最初はホームシックになっていたのだそう。 「帰りたい、帰りたいばかり言っていましたね」とほほ笑みます。 それでも、大学での授業はもちろんのこと、バイトもふたつ掛け持ちして日々奮闘していました。 「出版社でバイトしていて、あとはディズニー(リゾートの)キャストとして4年間働いていました。実は両親がふたりとも元キャスト。ディズニーは小さい頃から通う、身近な場所だったんです。群馬住まいなのに年間パスポートを持っていました」 思っていたより人々は優しかった思っていたより人々は優しかった 横浜からディズニーへ通うのは遠かったこともあり、途中で千葉県浦安市にお引っ越し。 大学卒業後は群馬に戻り、一旦はコピーライターとして就職しましたが、なんと会社が入社して2か月で倒産。 「出版系の仕事をしたかったので、東京に戻るか、と。ありがたいことに1~2週間で内定をいただけて、今もその会社で働いています」 東京にある大学に通っていたものの、都内に暮らすのはこのときが初めて。実際に住んでみてどうだったのでしょうか。 「やっぱり都民って私の中では特別感がありました。『東京都』っていう住所が書けることも、『どこに住んでるの?』って聞かれたときに23区を言えるのもうれしかったです」 群馬の中でも人が少ない地域の出身で、通っていた小学校の全校児童は1ケタ台。当時、東京に対してはどのようなイメージを持っていたのでしょうか。 小学校の全校児童が1ケタ台の町で育った女性にとっては、東京はどのようなイメージの街だったのか(画像:写真AC)「はるか夢の都、みたいな。高校生になってからは群馬の比較的都市部に引っ越したんですけど、それでも東京は遠くて人の多い場所、というイメージでしたね。ただ、大学に入ってからは少し変わりました。思っていたよりも人があったかくて、群馬と変わらないんじゃないかな、って」 選んだのは地元を感じさせる温かい街選んだのは地元を感じさせる温かい街 そんなミホさんが再度上京したときに選んだ場所は板橋区でした。 「会社へのアクセスも良いということもあるんですが、大学生の頃から板橋にある社会人サークルに所属していたこともあって、知り合いも多かったんです。あと、車を持っていたので駐車場があるところがいいな、と思って探していたら、板橋なら私にも家賃が払えそうだ、ということで選びました」 2回目の上京ということもあり、最初の頃よりは寂しさも少なかったといいます。 「すぐに(地元の群馬へ)帰ることができるというのもありますし、車だと1時間半ぐらいの距離なので、今は寂しいとかあんまりないですね。それでも週に1~2回は必ず両親と長電話はしています」 現在は、平日は出版社に正社員として勤務しながら、土日もフリーの編集者としても働き、社会人サークルにも参加する多忙な日々を送っているミホさん。仕事にもやりがいを感じており、毎日が楽しいといいます。 そんなミホさんが「東京」を感じるのは東武東上線・大山駅から続く、大山ハッピーロード商店街から遊座大山商店街。 「昔ながらの長い商店街があって、飲み屋街や八百屋さん、お肉屋さんや魚屋さんがあって。そこに行くたびに東京の下町の温かい雰囲気が感じられて私はすごく好きです」 「それに、人と人とのつながりが強い気がして。商店街でもお肉をおまけしてくれるおばちゃんがいたり、飲み屋に行けば常連さんが声をかけてくれたり。ホッとできます」 だからこそ、2020年のコロナ禍で仕事が完全在宅になっても寂しいということはありませんでした。 いつの間にか大事な場所になっていたいつの間にか大事な場所になっていた もう地元のように大好きになってしまった板橋。しかし、結婚を控えていることもあり、2021年夏には品川区へ引っ越す予定です。 「本当はこの場所から離れたくないんですけどね」とミホさんは少し寂しそうにほほ笑みますが、これからも東京での生活は続きます。 「でも、引っ越し先として考えている武蔵小山のほうにも商店街があって、またあったかい場所だといいなあ、と思っています」 きらびやかな街もあり、“地元”のような温かさを感じる町もある。多面的な魅力があるのも東京の特徴(画像:写真AC) 最後に、ミホさんにとって東京はどういう場所なのか聞いてみました。 「いつも言っているんですけど、千葉県が私にとってのの“アナザースカイ”なんですよ(笑)。ディズニーがあって、大好きな友人たちと過ごした大学時代が全て浦安に詰まっているので」 「東京は、夢見ていたところ。でも夢がかなったらすごく近くなったな、というのは感じています。東京でキラキラした生活を送るぞ、って群馬でずっと考えながら暮らしていたのに、出てきたら、華やかというよりは思っていたよりあったかくて。今のところ東京から出る気は全くないですね」 ひとりっ子ということもあって、今後、両親のことを考えるとどうするのかがわからない、と悩むところはあるというミホさん。でも、彼女にとって東京はすでに大好きな場所。どんな未来が待っているとしても、大事な街であり続けることには変わりありません。
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