食べたいけど食べられない! 東京に絶対進出してほしい「ローカルフード店」6選
輸送技術が発達し、東京ではほぼ何でも食べられるようになりました。しかし一部のローカルフードは例外です。今回はそんなメニューについて、1年の半分近く全国各地を取材で巡る地方系ライターの碓井益男さんが紹介します。コロナ禍は一段落したけど…… コロナ禍はようやく一段落し、第6波の懸念はあるものの、今のうちに……と旅行をする人が増えています。 ただ今は11月。多くの人はまとまった休暇を取りづらく、あちこちに出掛けるのは難しい状況です。行き先も限られ、1泊2日~2泊3日が関の山。限られた日程と胃袋では、どうしても「あれもしたかった、これも食べたかった」という気分になりがちです。 というわけで、今回はそんな人たちの気を紛らわすため、1年の半分近く全国各地を取材で巡る地方系ライターの筆者が魅力的なローカルフード店を紹介します。ローカルフード店再考&最高! 1.どんぐり(北海道) 輸送技術が発達し、都内あちこちの施設で「北海道物産展」が開催されている現在でも、東京では食べられないものが多い北海道。そんな食べ物のなかで、ガチなのが「ちくわパン」です。 どんぐりのちくわパン(画像:碓井益男) ちくわパンは札幌市周辺の人たちになじみ深いローカルフードですが、どの店のちくわパンでもいいわけではありません。人気があるのは「どんぐり」のちくわパンです。どんぐりとは、市内に店舗を構えるローカルチェーンで、ちくわパン発祥の店です。 ちくわパンはその名の通り、パンのなかにちくわが入ったもの。正確はパンの内側から ツナマヨ ↓ ちくわ ↓ パン の順に包まれています。 一見、非常に単純なつくりですが、ツナマヨの濃厚さが口のなかで広がり、ちくわとの相性に驚きます。一度食べ始めたらひとつでは我慢できずに、三つ、四つは食べきってしまうほど。札幌市内のどんぐりに行けば、メインの商品だけあっていつでも山盛りで販売されています。 どんぐりではほかにも魅力的なパンがてんこ盛り。パン屋にもかかわらず、なぜか「串ザンギ」も売ってます。ちなみにザンギとは北海道の郷土料理で、しょうが醤油などで下味をつけた鶏肉の唐揚げです。 さらに札幌市中心部にある大通店の隣には、おむすび専門店「てづくりおむすびの店 どんぐり」が営業しています。大通店でちくわパンを買ったついでに、おむすびをつい買ってしまいます。 とりわけ、 ・秋田名産いぶりがっこのクリームチーズ ・明太フランスの明太クリームチーズ は採算が合うのか心配になるくらい、濃厚な具材がたっぷり使われています。ちくわパン含め、この唯一無二の味を多くの人に味わってほしいです。 2.やきそば屋(北海道)2.やきそば屋(北海道) もう一店、北海道からご紹介します。 北海道ではおいしい焼きそばが全土で食べられます。そんななか、筆者の知る限りで最も人気なのが、札幌市の新大通りビルの地下にある「やきそば屋」です。札幌駅から地下道がお店まで続いているので、季節や天気に関係なく気軽に立ち寄れます。 やきそば屋は、焼きそばの量とトッピングを自由に選べます。量は ・並(1玉) ・大盛り(1.5玉) ・ジャンボ(2玉) ・スーパー(2.5玉) ・ミラクル(3玉) ・ウルトラ(4玉) ・これでもくらえ(7玉) ・死んでも知らねえ(9玉) ・信じられねえ(12玉) の9段階です。ひとりで12玉なんて食べられる人、いるのでしょうか……。 やきそば屋の焼きそば(画像:碓井益男) 席について食券を渡すと、すぐに焼きそばが出てきます。ただし、麺の味はまったくありません。やきそば屋が全国的に評価されていいポイントはココなのです。 焼きそばはただ炒められただけで、味付けは、席の前に置かれた ・ソース ・ラー油 ・ゴマ酢醤油 ・キムチ などを選んでかけるスタイルで、もはや食べ盛りの高校生や大学生のためにあるようなお店です。店は繁華街とオフィス街が入り交じったようなエリアにあるので、若者だけでなく、サラリーマンも一心不乱に焼きそばを食べています。 味付けは勝手にやらせるストイックさ――誰でも思いつきそうなスタイルですが、なぜかここにしかないのが不思議です。このB級グルメ感を東京でも味わいたい! 3.刀屋(長野県) そばどころである長野県の人とそば談義をすると、東京のそばは必ず「量が少ない」と言われます。 長野県はそばが日常食として定着しているため、長野県人は量の少なさはもちろんのこと、つゆを少しだけ付けて食べるスタイルにも批判的です。 とにかくてんこ盛りのそばをジャブジャブとつゆに付けて、おなかいっぱいになるまで食べる――それが長野県のスタイルなのです。一口に長野県といっても、長野と信州では文化が違うといわれますが、そばは「量を食べる」ことだけは共通しています。 長野県では、自分でそばを打つ人も少なくありません。言うまでもなく、おしゃれ生活のためではなく、単に量を食べたいからです。 そんな長野県で屈指の量を誇るのが、県東部の上田市にある刀屋です。ここは、文豪・池波正太郎が『真田太平記』を執筆中に足しげく通ったお店。とはいえ敷居が高いわけではなく、近隣の人が普段の食事に使う普通のそば屋です。 この店の「本気度」を知りたいなら、迷うことなく「ざるそばの大盛りをください」といってみましょう。お店の人から確実にこういわれます。 「うちの大盛りを食べたことはありますか?」 筆者はこれまで3度挑戦していますが、毎回同じように聞かれます。そしてお店の人からこう提案されます。 「まず中盛りをお出しするので、まだ食べられるようだったら大盛り分を追加で出しますね」 刀屋の盛りそば(画像:碓井益男) 注文後、運ばれてきたのは天を衝くような山盛りのそば。それも乱切りなのか、細いそばと太いそばが混じっていてワイルドな趣です。 後は一心不乱にジャブジャブとつゆに麺を付けながら食べるだけ。なお、大盛りを食べきってお店の人に量を尋ねたところ、なんと1kgとのこと。普通盛りでも東京の3倍はあるため、本当の意味でそばを堪能できます。東京にもこんな攻めのお店ができてほしい……。 4.だてそば(岡山県)4.だてそば(岡山県) グルメレビューサイトのランキング上位店があるわけでもないのに、なぜかラーメン好きに人気の岡山県。なかでも岡山市には名店が多くあります。そんな岡山市で特に人気なの、「だてそば」です。 だてそばのメニューで筆者がおすすめしたいのは、岡山名物のソースカツ丼とラーメンが半量ずつ食べられるセットです。「半分ずつだし腹八分目ぐらいだ」と思ったそこのあなた、大間違いです。 運ばれてくるのは、フルサイズに近いソースカツ丼とラーメン。とりわけ、ラーメンは通常の1玉と変わらず、いったいどこが半量なのか謎です。 だてそばのソースカツ丼(画像:碓井益男) 見るからにカロリーオーバーなこの組み合わせ。ソースカツ丼はソースがたっぷりかかったカツの上に生卵がデフォルト。この生卵とソースが絶妙に絡み合い、箸が止まりません。 そんなソースカツ丼の箸休めがラーメンなのです。このふたつがこんなにも相性がよかったなんて、筆者は知りませんでした。大抵の岡山人は昼食にこのセットを食べた後、夕食もきっちり食べています。「慣れ」というのは恐ろしいものです。 ソースカツ丼、ラーメン単体でおいしい店は東京でも多いですが、極上の味をしかも一度に楽しめる店を筆者は知りません。そんな店が東京にできた日には、足しげく通うこと間違いありません。 5.福住(広島県) 広島県の名物といえばお好み焼き、次いで最近は辛つけ麺ですが、どちらもアンテナショップ「ひろしまブランドショップTAU」(中央区銀座)で食べられます。でも、筆者が本当におすすめしたい広島のローカルフードではありません。 広島のローカルフードの最高峰は広島市ではなく、県南西部の呉市にあります。もともと「海軍の街」として発展した呉市は、全国各地から人が集まっていました。ゆえに独特の食文化が根付いています。しかもどの店も「おいしくて当然」なのです。 そんな呉市で「ここでしか食べられないもの」といえば、フライケーキ。それも元祖である「福住」のフライケーキです。 福住のフライケーキ(画像:碓井益男) フライケーキとはあんドーナツの一種。一般的に、あんドーナツは外側にも砂糖をまぶしますが、フライケーキはふわっとした生地でこしあんを包んであげたものです。ケーキというより、揚げ饅頭に近い食べ物です。 今ではいくつかの店がつくっていますが、呉市の人は福住1択。呉の繁華街であるれんが通りの近くにお店はあり、常に人でにぎわっています。小腹を満たそうと1~2個買う人がいる一方、わりと多くの人が10個くらいまとめて買っています。 全国区のもみじ饅頭に比べると、フライケーキは全くもってローカルフードに過ぎませんが、そのおいしさはピカイチです。味にうるさい呉の人は 「10年前はもっとおいしかった」 「いや30年前が一番おいしかった」 などといいますが、こんな会話ができるのも、地元にとてもなじんでいる証しです。銀座のアンテナショップにぜひとも置いてほしい! 6.亀八屋(和歌山県)6.亀八屋(和歌山県) 東京から新幹線と特急列車を乗り継いで約4時間かかる、紀勢本線の太地(たいじ)駅。そこからバスに乗ってようやく到着するのが「鯨の街」として知られる太地町です。スーパーマーケットを除いて、この太地町では鯨のさまざまな部位が当たり前に売られています。 そんな町の住宅街の奥にあるのが「亀八屋」です。ここで売られているてつめん餅は、東京で食べることが困難な究極のローカルフードです。 亀八屋のてつめん餅(画像:碓井益男) てつめん餅とは柔らかい餅であんを包んだもので、ラインアップはよもぎの入っていない「白」と、入った「よもぎ」の2種類だけとストイック。いわゆるあんころ餅の類いですが、驚くのは餅の食感です。その日売る分だけをつくっているため、絶妙な柔らかさ加減なのです。 この柔らかさが保たれるのは、販売したその日だけ。翌日にはもう硬くなってしまいます。そのためお土産に買って帰るのが困難で、現地でしか味わえないのです。 南紀地方の食材は交通の便が悪いものの、近年では日持ちするものに限って、東京交通会館(千代田区有楽町)のアンテナショップ「わかやま紀州館」で販売されるようになりました。塩で漬けた高菜でくるんだめはりずしは、前日に製造されたものが売られています。 しかしてつめん餅は前述の理由から、東京で食べられません。ああ、何とかならないものでしょうか……。
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