都心のペットが行方不明になったとき「大声で名前を呼ぶ」が絶対NGなワケ

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都心のペットが行方不明になったとき「大声で名前を呼ぶ」が絶対NGなワケ

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夏野久万

フリーライター

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新型コロナ禍で増えた在宅時間、都心でもペットを飼育する家庭が増えています。でも、もしも、大切なペットが行方不明になってしまったら――? 「ペット探偵」として知られる藤原博史さんの著書『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ』『ペット探偵は見た!』を参考に、フリーライターの夏野久万さんが役立つ情報を紹介します。

コロナ禍背景、在宅で増えるペット

 都心の騒がしさにクタクタになっても、ペットのつぶらな瞳を見ているだけで癒やされる。ペットと暮らしたことのある人なら経験があるのではないでしょうか。

コロナ禍で在宅時間が増えたことにより、東京でもペットを飼育する人が増加している(画像:写真AC)



 東京都が数年おきに実施している「東京都における犬及び猫の飼育実態調査」(2017年)によると、犬を飼育している世帯は回答者全体の18.0%、猫は11.5%。

 新型コロナ禍での在宅時間の増加によってペット需要が伸びたと言われているため、2021年現在の飼育世帯の割合はさらに多くなっていると考えられます。

 また興味深いのは、猫の入手方法について「拾った」との回答が最も多く36.2%、「いつの間にか居ついた」(9.3%)と合わせると45.5%にも上り、もともと外猫だった子を飼い始めたというケースが半数近くを占めているという点です。

 屋外の自由さを知っている猫が、ふとしたすきに玄関ドアやベランダの窓から外へ飛び出してしまうこともあるでしょう。また犬の場合も、毎日の散歩の途中で不意にリードが外れて行方不明になってしまうこともあるかもしれません。

 大切なペットとずっと一緒にいるために「もしもペットがいなくなったら」について考えていきたいと思います。

もしもペットがいなくなったら

 家族のように大切にされているペットたち。ペットフード協会(千代田区神田須田町)によると、日本全体で飼育されている犬や猫の推計頭数は、全国合計1813万3000頭に上ると言われています。

 なかでも、1年以内にペットを飼い始めた飼育者による飼育頭数は、犬・猫ともに2018年から右肩上がりに上昇。2020年の前年比は、犬が114%、猫が116%と、前年の増加率を大きく上回っています。

 コロナ禍で新たにペットを飼い始めた人たちが増えたことがこのデータからも読み取れます。

2020年全国犬猫飼育実態調査(画像:ペットフード協会)



 そんな多くの人に愛されているペットですが、もしも何らかの拍子に姿が見えなくなってしまったら、皆さんはどうしますか?

 多くの人はペットの名前を呼びながら、周辺を捜し回るのではないでしょうか。実はその捜し方はペットにとって逆効果な場合もあるというのです。

 迷子になったペットを捜し出す「ペット探偵」として知られる、藤原博史さんの著書『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ』(新潮新書)、『ペット探偵は見た!』(扶桑社)によると、ペットの名前を呼びながら捜す場合は、普段と同じ口調で呼びかけることが大切なのだそうです。

 ペットは家族の変化に敏感なので、普段とは違うトーンで呼ばれると、逃げてしまうこともあるそうです。

 同著は、行方不明になったペットの捜し方をはじめ、藤原さんがペット探偵として接したさまざまな生き物や人とのエピソードなどがつづられた本です。この2冊の本をもとに、ペットと末永く一緒にいられる方法を探っていこうと思います。

『ペット探偵は見た!』あるエピソード

『ペット探偵は見た!』の数あるエピソードのなかから、印象に残った話を紹介します。

 ペット探偵の藤原さんのもとに相談してきた依頼主は、ベージュ色の犬(以下、ワンちゃん)と、白い猫(以下、白猫)を飼っていました。そのうちの白猫が行方不明になってしまい、藤原さんのもとに相談が入ったのです。

大切なペットがいなくなってしまったら……。飼い主は気が気ではない(画像:写真AC)



 もともとその飼い主は、ワンちゃんのほうを先に飼っていました。散歩の途中でワンちゃんが、生まれて間もない、弱りきった白猫を見つけ、飼うことにしたそうです。

 元気になった白猫。ワンちゃんは白猫をとてもかわいがり、引っかき傷ができるほどジャレつかれても、怒ることはなかったそうです。2匹は、まるで親子のように、仲良しでした。

 しかしひょんなことから白猫が行方不明になってしまいます。心配した飼い主は、ペット探偵である藤原さんに助けを求めたというわけです。

行方不明の悲しみ、再会の喜び

 藤原さんも懸命に捜します。仲良しだった白猫の姿が見えなくなって、ワンちゃんは食事もロクに食べなくなってしまいます。どんどん弱っていく愛犬の姿に、飼い主は心を痛めます。

 藤原さんが見つけだした白猫は、依頼主の家から100mほどしか離れていない駐車場の車上にいたそうです。どこかのお家でエサをもらっていたようで、元気な姿で見つかりました。

 依頼主のもとに白猫を連れて行くと、体力も残っていないように見えたワンちゃんが飛びはねるようにはしゃぎ、ちぎれんばかりに尻尾を振って、大きな笑みを浮かべたそうです。

 ワンちゃんにとって白猫は、かけがえのない存在になっていたのでしょう。読んでいてとてもあたたかい気持ちになりました。本当に見つかってよかったです。

 本書には、このようなエピソードが多数記載されています(なかには悲しい結末に終わるケースもありましたが)。

 ではペット探偵の藤原さんは、どのようにしてペットの捜索をしているのでしょうか。多くのペットを発見してきた藤原さんには、経験に裏付けられた捜索方法がありました。

ペットの適切な捜索方法とは?

『ペット探偵は見た!』には、猫や犬の捜索をする場合の、捜索のヒントも記されています。

1. 周辺を捜す
 猫はテリトリーから捜し、犬の場合は散歩ルートから捜索。

2. 行政に連絡
 それでも見つからない場合は、動物管理事務所や保健所、警察、役所、清掃局など、さまざまな行政に連絡します。

 警察に連絡をするとペットの場合は「遺失物」扱いされますが、誰かに保護されている場合もあるので確認しておくと、ペットとの再会の可能性は高まります。

3. ポスターやチラシ
 ポスターやチラシを作成し、配布します。

 もちろんペットの性格により違いますが、大まかにいうとこのような流れなのだそうです。

あなどれないチラシ・ポスターの効果

 ときどき「インコを捜しています」などと書かれたポスターが町の掲示板や電柱に貼られているのを見たことがあるのではないでしょうか。あのようなポスターやチラシは、とても効果があるようで、本書のエピソードにも、たびたび出てきます。

 しかし本書によると、ポスターやチラシの作成方法にもコツがあるそうです。

迷子になった犬・猫を捜すとき、チラシに掲載すべき情報とは?(画像:イラストAC)



 同書には捜索用ポスター・チラシ作成のコツも書かれていますが、なかでも驚いたのがペット写真は「顔よりも全身の体型や色柄がはっきり映ったもの」を使うといいという点です。

 筆者は以前、道ばたで、子犬の顔画像が中央に大きく配置されたポスターを見かけたことがありました。

「里親探しか、新しいペットショップができたのかな?」と思い近くで見たところ、行方不明犬を捜すポスターで驚いた経験があります。

 ある意味「捜索用ポスターを、ペットショップがオープンしたことを知らせるチラシのようにおしゃれに作って人の目を引こう作戦」は、見てくれる層を広げる可能性はあるのかもしれません。しかしペットを飼う予定のない層には、響かないものとなってしまいます。

 だからこそ、いとしのペットのかわいい顔ショットを掲載するのではなく、発見時に想定される姿、すなわち全身の立ち姿が必要なのだそうです。

災害時に向けて備えておくべきこと

 本書に出てくるどの飼い主も、本当にペットを大切にしている人たちばかり。そのエピソードを読むたびに、藤原さんのようにペットの捜索に関する知識を得ることは、ペットや飼い主の暮らしを守ることにもつながると気づかされます。

 特に災害時は「避難所に行ったらペットはダメと言われた」というケースがあると聞きます。アレルギーがある人に配慮するためなど、いろいろな理由があり、簡単には導入しにくい自治体側の理由もあるでしょう。

 しかしペットを含む家族の命に関わる問題です。在住自治体の対応について事前にチェックしておくのがよいでしょう。

避難ルートの確認、ケージに入る練習

『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ』では、災害時の情報をまとめておくことの大切さを訴えています。避難場所の住所や自宅からのルートを調べて分かりやすくしておくのです。

 さらにペットを含む家族全員での避難訓練を行います。その際、ケージやキャリーバッグなどにペットを入れつつ移動する必要があります。普段からケージに慣れさせておくと安心でしょう。

ペットと家族全員で避難訓練をしておくことが大切(画像:写真AC)



 また浸水したり、窓ガラスが割れたりしてからでは危険なので、少しでも危険を感じたらケージなどに、早めに入れたほうがいいそうです。

 加えて、首輪を普段からつけていると、行方不明になった際に圧倒的に見つけやすいのだとか。日頃からケージや首輪を嫌がらないように慣れさせておくことも大切です。

いつまでもペットと仲良く!

 藤原さんの本を読んで感じたことは、「ペットも家に帰りたがっている」ということ。

 本書のエピソードのなかには、数か月たってようやく見つかるペットのエピソードも載っています。その多くは、家に戻れなくなってやせ細り、疲れ果てている状態で発見されていました。

藤原博史さんの著書『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ』(左)と『ペット探偵は見た!』(画像:新潮新書、扶桑社)



 なかには別の人に保護され、不自由なく暮らしているペットもいますが、それはどのようなペットでも当てはまるケースではないようです。

 何かの拍子にペットと離れ離れにならないように、日頃から気をつけつつ、万が一いなくなってしまったときも、同書を参考にしつつ素早くペットを見つけられたらいいですね。

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