新宿に「熊手のトンネル」が出現? 秋の風物詩「酉の市」、その楽しみ方を徹底解説
毎年11月の「酉の日」におこなわれる秋祭り「酉の市」。そんな都内の酉の市について、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。「一の酉」が11月8日、「二の酉」が11月20日 みなさんは各地の神社でおこなわれている秋祭り「酉(とり)の市」に行かれたことはあるでしょうか。首都圏では比較的お馴染みの「秋の風物詩」となっている酉の市ですが、とくに就職・進学などで上京した人にとってはまったく馴染みのない行事かもしれません。 酉の市は毎年11月の「酉の日」におこなわれる秋祭りのことで、おもに首都圏の寺社を中心に開催されており、商売繁盛と新年の幸運を願う祭りとして親しまれています。開催日・開催数は毎年11月の酉の日の数によっても変化しますが、2019年の酉の市は2回。「一の酉」が11月8日、「二の酉」が11月20日となります。 酉の市で並ぶ「熊手」の屋台。種類の多さに圧倒される(画像:若杉優貴) 酉の市の楽しみといえば、何といっても出店で販売されている「熊手」たちを見て回ること。商売繁盛の縁起物として売られている熊手は、神社で売られていた農機具を「宝をかき集めるもの」に見立てたことが始まりだといわれています。 今回は、2018年の「酉の市」のようすを交えつつ、「酉の市の楽しみ方」、そして「熊手の買い方」について紹介していきます。 新宿・花園神社で「熊手」を買ってみた「酉の市」といえば思い出されるのが、花園神社(新宿区新宿)です。花園神社の酉の市が始まったのは明治時代に入ってからですが、新宿の発展とともに祭りの規模は年々大きくなり、現在は毎年約60万人前後の人が訪れる都内有数の祭りへと発展しました。 靖國通り・伊勢丹メンズ館前に並ぶ屋台。境内に入る前から心が躍る(画像:若杉優貴) 境内に一歩入ると、そこはまさに異世界。いつもの花園神社とは打って変わって数多くの「熊手店」がそれぞれの自慢の逸品をオススメする声が響きます。 拝殿で参拝を終え、いよいよ「熊手選び」です。それぞれの熊手は店が趣向を凝らして手作りしたものばかり。とくに大きな熊手には、大手企業はもちろんのこと、場所柄ゆえにホストクラブやバー、そして芸能人による「売約済み」の札を見かけることもあります。 実は、花園神社の境内には富士塚(富士山を模した築山)があり、そこには芸能の神様である「芸能浅間神社」が設けられています。そのため「芸能」に関わりのある人にとって花園神社は特別な存在であり、わざわざここで熊手を買うという人も少なくないのだとか。 人気キャラとのコラボ商品も 熊手の値段は1000円から100万円ほどするものまでさまざまです。ひとことで「熊手」といっても、現在ではいわゆる「手のようなかたち」のみならず、色々な形態のものが売られており、部屋のインテリアとしても楽しめる和洋折衷風のものやキティちゃんなどの人気キャラクターとコラボしたものも少なくありません。 さまざまなキャラクターがあしらわれたものも。「小判」「狛犬」「鶴」「亀」などの縁起物にも注目して選ぼう(画像:若杉優貴) 東京オリンピック・パラリンピックのマスコットをあしらったものは「いまならでは」でしょう。また、熊手にあしらわれているもの(小判、招き猫、おかめ、七福神など)によっても入ってくる運気が変わると言われています。「自分好みの熊手」に出会えるまでじっくりと店めぐりできるのが、この酉の市の醍醐味でもあります。 ちなみにこの熊手は「買い方」もポイントで、言い値ではなくあえて「値切りながら買う」のもコツ。店員のほうから値札より安い値段を提案してくれる店もあるほか、最終日の夜になると驚くような値段で買えることもあります。 慣れてきたら店員との値段交渉を楽しんだり、また大幅に値下げして貰った場合にはおつりの一部をご祝儀として渡す、という人も見かけます。お気に入りの商品を予想外の値段で買えた際には、店員にお礼を言うこともお忘れなく。大型の熊手を買った場合は、店員が手締め(手ばらい)を行うこともあります。 なお、熊手は去年よりも小さいものを買うと、去年よりもかき集めることができる運気が少なくなると言われています。初めて買う時は欲張らずに「小さいもの」から買いましょう。 花園神社の酉の市では毎年多くの出店に加えて「見世物小屋」が設置されるのも特徴です。現在こうした見世物小屋をおこなっている祭りは全国でも数えるほどしかないため、気になる人はぜひ勇気を出して入ってみましょう。 「元祖・酉の市」に行くなら「鷲神社」へ!「元祖・酉の市」に行くなら「鷲神社」へ! さて、酉の市で忘れてはならないのが、東京メトロ入谷駅から歩いて10分ほどの場所にある鷲(おおとり)神社(台東区千束)と長國寺(同)です。 鷲神社前。静かな千束の街がこの人手(画像:若杉優貴) ここは足立区の大鷲神社とともに「江戸酉の市発祥の地」のひとつとして知られています。ちなみに、鷲神社はもともと長國寺の境内神社でしたが、明治時代の神仏分離令により別々の寺社となった経緯があります。 こちらの酉の市の人出は、花園神社よりも多い約70~80万人。熊手店約150店、露店約750店が軒を連ね、いつもは静かな千束の街もこの日ばかりは歩道が歩けないほどの人でごった返し、大型の熊手が売れたときの手締めの音が境内のあちこちから響きます。 鷲神社では、酉の市のあいだは限定の御朱印を戴くことができるほか、酉の市限定の特別御祈願(要予約)も行われています。 なお、この鷲神社においてシンボル的存在となっており、酉の市でも大きな人気を集めていた「なでおかめ」は、祭りの人手の多さにより現在は設置が中止されています。お守り授与所では、この「なでおかめ」を模した根付型のお守りを戴くこともできるので、ぜひチェックしてみましょう。 このほか、酉の市はもうひとつの関東三大酉の市のひとつに数えられる「大國魂神社」(府中市)など、都内各地でおこなわれています。 都心エリアならば、それほど規模が大きくない神社であっても熊手の販売がおこなわれていたり出店の屋台が出ていることもあるので、11月になったら最寄りの神社を覗いてみてはいかがでしょうか。
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