本当にスマホが悪いのか? 大学生の約半数が「読書時間0分」の衝撃
1週間のスマホ平均利用は13時間 現在はスマートフォンでいつでもどこでもインターネットやゲームができ、本を読まずとも余暇を楽しめます。そのため、「最近の若者は本を読まない」は現実味を帯びています。 文部科学省が全国11万人の大学生を対象に実施した令和元年度「全国学生調査(試行実施)」(2020年6月発表)によると、大学生が1週間に利用する平均的なスマートフォン利用時間は13時間でした。 これは授業やサークル、アルバイト以外にスマートフォンを使用する時間が「1日平均1時間30分以上」という計算になります。数字だけを見ると、大学生の読書時間は少ない印象を受けます。 スマホを見る学生のイメージ(画像:写真AC) 実際、全国大学生活協同組合連合会(杉並区和田)が実施した「第53回学生生活実態調査」(2017年、調査対象:30大学1万21人)では、「1日の読書時間が0分」の大学生が53.1%となったことが話題となりました。 スマートフォンが普及した2000年代から2010年代初頭までは30%台で推移していたことを踏まえると、2010年代半ばから本を読まない大学生が加速度的に増えたのは、スマートフォンが原因のひとつだと考えられます。 一方、スマホの影響を受けない学生も一方、スマホの影響を受けない学生も 一方、変化の見られない層もあります。 それは、「1日1時間以上本を読む」大学生の割合です。この15年近く一貫して20%から25%までで推移しており、大きな変化がありません。 つまり、読書習慣が元々ある大学生はスマートフォンの浸透率と関係なく本を読み続けているのです。そのことからも、1番スマートフォンの影響を受けているのは日頃からあまり本を読んでいない大学生ということになります。 このことはメディアで大きく取り上げられることも珍しくありません。しかし、読書習慣のある大学生はその風潮と距離を置くように、今も読書量を維持しているのです。 読書をする学生のイメージ(画像:写真AC) 本を読まないことの弊害は、リポート提出時に参考文献を読み込む力、語彙(ごい)力や本を読むスピードなどさまざまなところで出ます。また、就職活動時の面接で愛読書を質問された際に付け焼き刃の知識を披露し、メッキが剥がれることも。 文明の利器であるスマートフォンが、学生の成長の機会を奪っているのは実に皮肉なことです。 読書時間が増えた小中学生毎年6月に 全国学校図書館協議会(文京区春日)が毎日新聞社(千代田区一ツ橋)と共同で全国の小中高校の児童生徒を対象に実施している「学校読書調査」(2020年度は中止)によると、2000年代以降、小学生(4~6年生)と中学生が1か月間に読む本の冊数が増えていることが分かっています。 現在、小学校や中学校では朝の10分から15分に読書タイムを設けている学校が増えています。その結果、10分程度で読み切れるショートストーリーが集まった小説が人気を集め、新たな市場開拓に各出版社も力を入れています。 こうした学校側の地道な取り組みが功を奏し、小中学校では全体的に読書量増加につながっています。 スマホを見る学生のイメージ(画像:写真AC) しかし高校生になると一転。1989(平成元)年から2019年までの長きに渡り、平均冊数は1冊台のまま。原因は、高校での「朝読」の実施率によるものと考えられます。 「朝の読書推進協議会」が2020年3月に発表したデータによると、全国の小中学校(国公私立)の朝の読書時間の実施率は全国平均80%を超えていますが、高校では45%に減少。 高校では部活動や通学に時間がとられるとはいえ、学校の取り組みの有無が直接生徒の読書量に影響を与えていることは間違いありません。 普段から本を読んでいない児童生徒でも小学校と中学校の朝の読書時間を設定することで全体的に読書量が増えたものの、高校進学後にその枠がなくなれば一気に減っているのが実情なのです。 学校以外での読書習慣の差が出る学校以外での読書習慣の差が出る 結局のところ、「大学生の読書0分が過半数を超える」という衝撃的なデータもスマートフォンが100%原因とは言えず、それぞれの長年の読書習慣に寄るところが大きいと言えます。 読書をする学生のイメージ(画像:写真AC) 繰り返しになりますが、本を読む学生は変わらず本を読み、本をあまり読まない学生は全く読まなくなったのです。 習慣はすぐに変えられません。子どもの未来を考え、自治体の図書館の活用や親への啓発活動を行い、学校だけでなく家でも本を読ませるという地道な活動が今まで以上に求められています。
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