コロナで化粧品不況のなか ファンケルが銀座「旗艦店」をリニューアルした真の狙い
中でもメイク商品は大打撃 新型コロナウイルス感染拡大を背景に、2020年春ごろから化粧品業界の「コロナ不況」が盛んに言われるようになりました。 国内需要だけでなく中国など海外からの訪日外国人観光客もほぼゼロにまで落ち込んだことを受け、経済産業省が公表する「生産動態統計」によると、2020年1~6月の化粧品出荷額の合計は、前年1年間の4割程度にとどまっています。 コスメ・美容サイト「@cosme(アットコスメ)」などを運営するアイスタイル(港区赤坂)が8月に行った調査では、コロナ禍でメイクアップ化粧品の購入頻度が「減った」との回答が全体の50.6%に上りました。 外出自粛や飲食店の営業短縮が緩やかに解かれつつある東京でも、今やマスクは日々の常用品。またそもそも働き方が在宅(テレワーク)に変わった層も一定数おり、メイクやコスメが必須な場面は依然と比べて格段に少なくなっています。 こうした逆風ともいえる状況下の2020年8月、化粧品・健康食品大手のファンケル(横浜市)が、旗艦店である「ファンケル 銀座スクエア」(中央区銀座)を全館リニューアルオープンさせました。 「ファンケル 銀座スクエア」の馬見塚陽子館長(2020年8月、遠藤綾乃撮影) 同社の創業40周年を記念して創業月と同じ4月を目指していたものの、コロナの影響により約4か月の延期。満を持してのリスタートです。 このコロナ禍にあらためて考えたい、化粧品の担う役割やリニューアルに掛ける思いについて、同店館長の馬見塚陽子さんに聞きました。 リアル店舗ならではの体験リアル店舗ならではの体験 まず、リニューアルに際してのメッセージは「美も、健康も、新しい体験。」。 それを体現しているのは、例えば5階と6階にそれぞれオープンした美容と健康に関する「パーソナルカウンセリング」のフロアです。 美容フロアでは最新機器を使った肌状態チェックやメイクアップレッスン、健康のフロアでは食生活チェックや未来の体形が分かる分析など、自身の美容や健康に知り改善につなげるためのコースを体験できます(要予約・有料)。 ゲーム感覚で健康について学べる「元気ステーション」(2020年8月、遠藤綾乃撮影) また注目したいのは7階の「元気ステーション」。片足立ちでバランスを保ちながら銀座の街を歩くシミュレーションなど、実際に体を動かしゲーム感覚で健康について学べるデジタルコンテンツを導入していて、ひとりでも友人同士でも楽しめそう(無料)。 カフェや本格レストランも3フロアに構え、全館を通じて「体験」に重きを置いた、リアル店舗ならではの要素を充実させているのが特長です。 通販とリアル店舗の両輪で 馬見塚陽子(まみづか ようこ)館長によると、同店も営業規模の縮小を迫られるなど、少なからぬ新型コロナの影響を受けました。 コロナ禍で同社は、普段は店舗を利用しているユーザーに対して積極的に通販の利用を促すことで、直営店舗ユーザーで初めて通販を利用した「通販新規」の顧客数(2020年4~6月期)を前年同期の6.5倍に増加させました。 創業当初からの販路である通信販売にあらためて注力することで、根強いファンケル・ファンに応える施策を展開しています。 実際、コロナ禍での通販利用は増えているようです。 先述のアイスタイルが5月に行った別のアンケート調査では、「新型コロナウイルスの感染拡大によって化粧品を通販で買うことに変化はあったか」という問いに対し48%の人が「とても増えた」「増えた」と回答しました。 ただ一方、リアル店舗だからこそ味わえる楽しみもあると、馬見塚さんは考えます。 心がときめく体験を後押し心がときめく体験を後押し「通販はさまざまな条件に照らして商品を比較検討する、いわば『頭で買う』お買い物。対してリアル店舗は、そのときの自分の気持ちを大切にしながら商品を見つけ出す『心で買う』お買い物の場と言えるでしょう」 「そのどちらにも良さがありますが、人と人とのコミュニケーションから生み出されるリアル店舗ならではの役割も大切にしていきたい」と、馬見塚さんは話します。 美と健康、そして体験をテーマにリニューアルオープンした「ファンケル 銀座スクエア」(画像:ファンケル) 銀座には資生堂(中央区銀座)やコーセー(同区日本橋)、POLA(品川区西五反田)など名だたる化粧品ブランドの旗艦店も立地していますが、ファンケルにとっての強みは美容だけでなく健康との二枚看板を成す商品展開。 「多くの人のニーズは『キレイでありたい』だけでなく『健康でもありたい』という時代。美人薄命、という言葉は過去のものです。キレイであるために、そして健康でもあるために、ちょっとした気づきと行動変容のきっかけとして、当館の体験型コンテンツに触れていただけたらと思っています」 ※ ※ ※ コロナによって通勤や人に会う機会の減った自粛期間には「今まで義務的にこなしていたメイクの必要が無くなりラクになった」という女性たちのつぶやきも少なからず散見されました。 ただ、すでに半年にもおよぶ自粛ムード。メイクとの間に距離を置く“ダウンタイム”とも言える期間をへて、「またメイクを楽しみたい。今度は自分自身のために」と考える女性たちの声もまた聞かれるようになっています。 純粋に楽しむ、「心」がときめくメイクとの付き合いを探るうえで、リアル店舗はひとつの大切な後押しになるかもしれません。 そしてこの間、健康への関心がより高まったことは言うまでもありません。美容と健康、その両方が、ウィズコロナの時代にますます重要なキーワードとなりそうです。
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